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透と瑠奈 2


夏休みに入り、瑠奈は家に帰らず寮にいた。

瑠奈は、伶奈からの連絡をうけていた。

伶奈は勉強が得意ではないので、補習が忙しいとのことで、こられないらしい。

透は、瑠奈たちが通っていた中学の近隣の学校だったようで、家が瑠奈の実家に近いようだった。しかし、バスケ部は休みがないので帰っていない。だから、玲奈とは夏休みに入って全然あえてもいないらしい。瑠奈とは、クラシックのCDを楓経由で貸し借りする仲になり、玲奈のことも相談に乗っていた。




夏休みの8月に差し掛かる前の日、その日は1日なにもなかった。


「ねえ、夜さ、隣の高校忍び込もうよ」


梓にそういわれた。真面目そうに見えるが、聖和に幼なじみがいて、その人の弱味を見つけたいらしい。 


「えー、ばれたらやばいよ」


「大丈夫!!!あいつは、帰省中だし、侵入経路なら確保済みだから」


聖和は夏休みは寮しか警備をしないときいたらしい。二人で忍び込み、いろいろまわって音楽室まで来た。

瑠奈はピアノに触れた。イスに座って弾き始めた。


「瑠奈の好きな曲だ」


梓に言われて、瑠奈は弾きながら笑った。


「伶奈が太陽なら、あたしは月。自分では光れない。

でも、そんな月の光でも、慰められる人はいるんだよって、この曲は教えてくれたの」


「そうかー」


関心したような声でそう言われた。梓が外を見ながら瑠奈は演奏を続ける。すると廊下を歩く音がしてきた。


「やばっ、早く隠れよ!」


梓にそう言われて、急いで準備室に隠れる。


「誰かいるの?」


透の声だ。


「伶奈、、、?」


期待している声だ。全然会えていないと言っていたから、きっと通るも会いたいんだろう。嘘でも、いまは怜奈の代行をして彼に、会って安心させられないだろうか。伶奈ならどうする?恋人にあったときの態度は?


どんな仕草をする?瑠奈は頭を巡らせた。


「ちょっとだけ、伶奈のふりをしてもいいのかな?」


「…えっ?」


瑠奈は、準備室から出た。


「瑠奈?!」


梓によばれても、瑠奈は止まらなかった。透の前に来た。


「バレた?ちょっと会いたくなって、来ちゃった」


瑠奈は、笑ってみせた。伶奈のように人懐こく、可愛い仕草を心がける


「ピアノ弾いてたのは伶奈?」


「そうだよ」


微笑んだ。透は、愛しい人を見る顔をしていた。ばれてはいない。大丈夫だ。


「そっか、でも、怜奈はピアノ習ってないって瑠奈ちゃん」


大変だ、怜奈はそれは話していたのか。


「これだけは瑠奈に教えてもらったの。」


なんとかやり過ごす。透も信じている。


「…そう言えば、伶奈はなんでその曲が好きなの?」


瑠奈は返事に困った。本当のことは言ったらバレる?伶奈が月なんて考えられない。

太陽みたいに明るくて、可愛いのだ。明るい曲が好きなはずだ。


「だって綺麗な曲だから」


無理繰り過ぎてドキドキが止まらない。


「僕はね、太陽は人を照らすけど、月は傷ついた心を優しい光で包むって聴いたんだ。確かにそうだと思った。

それを、幻想的に表現してるこの曲が好きなんだ。なんか凄い深いかな?」


透は恥ずかしそうに笑った。


「ううん、なんか、、らしいね」


伶奈は透をなんと呼んでいるっけ?分からない。今日はもう退散しよう。


「明日また来るね」


瑠奈は笑った。自分に戻らないように気を使った。

出て行こうとすると、透に後ろから抱き寄せられた。真っ赤になる。

そのままキスされそうになったので、慌てて放れた。


「…っじゃあね」


瑠奈は走って音楽室から出て行った。透は唖然としたままだが、すぐに微笑んだ。

伶奈らしい反応だ。真っ赤になって、答えられない。

いつも明るいくせに、こういうときは、大人しくなる。


「…やっちゃった…」


瑠奈は準備し逃げて、しゃがみこんだ。大変なことをしてしまった。いつかはバレる嘘だ。

でも、透は"伶奈"に会いたがっていた。梓が透がいなくなるのを確認して、外に出ていった。


「…伶奈に言わなくちゃ…」


「なんで?」


「今日あったことを、隠してもバレるよ。秋月くんのなかでは、伶奈は出来ると思ってるんだもん」


「じゃあ、補習が終わるまで会えばいいじゃん。それくらいしたっていいんじゃない?あいつ、勘違いやろうだし」


「…でも」


「月は不思議な力があるっていうじゃん!ばれないってなんせロマンチストだからね」


梓は皮肉るようにいっていたが、その言葉に推されて、決意した。1ヶ月の間だけでも、一緒にいて、それで断ち切ろう。この気持ちとは完全にお別れしよう。



次の日から、瑠奈は伶奈になり、透と一緒に過ごした。それは楽しいがつらいことだった

透は伶奈に話しかける。自分じゃない。瑠奈という自分自身なんて彼の中には存在しない。

会うたびに、自分の心が痛み、思いはどんどん強くなる。自分で決めたことなのに、バカみたいだ。



二週間後に、弓道部練習中、突然瑠奈に透が会いに来た。一緒に来ていた。


「瑠奈ちゃん!ちょっといい?」


瑠奈は、バレたのかと思い、ひやひやした。しかし、要件は全く違うものだった。


「突然ごめんね。あのさ、誕生日って、8月26日だよね?」


「うん」


「プレゼント一緒に見に行ってくれない?」


セーフ、と心のなかで胸を撫で下ろす。皆が透をみるために、こちらを向いている。瑠奈は、ため息をついた。


「いいよ。練習午前中だけだから、お昼からね」


弓道部が終わってから、急いで着替えて2人で一緒に繁華街に出る。


「指輪とかアクセサリーがいいよね」


瑠奈は気を利かせてそういった。透は賛同していた。自分も買いたかったからちょうどよかった。

透とデパートのアクセサリー店にはいった。瑠奈は、月の形をしたペンダントを見つけた。

怜奈は、隣の太陽のほうがいいだろうか?1人で真剣に悩んでいた。透はそんな瑠奈のことを見ていて、ぷっと笑った。瑠奈は、はっとして、顔を赤くした。こんなに笑う人なんだ。新しい発見だ。


「あの、なんで笑ってるの?」


「だって、可愛いなって」


瑠奈は顔を真っ赤にした。今まで男の子は自分を可愛いなんて言わなかった。怜奈が可愛い。瑠奈は可愛くない。みんなそういった。透はそうじゃなかった。嬉しくて涙が出そう。上を向いて涙を止める。

こんな素敵な男の子に愛される怜奈は凄い。そして、透に惚れた自分は滑稽だなと思い知った。


「だって、大切な人にあげる大事なプレゼントだよ?」


「でも、俺より真剣」


「秋月くんが何がいいかわからないっていうから」


「そうだね。ありがとう」


瑠奈は、指輪を見つけた。自分と怜奈の好みはだいたい似ている。

ただ、自分は可愛いものは似合わない気がしてつけないだけで、同じ顔をしているけれど、怜奈には似合う気がする。

瑠奈はこれとか?と3パターンを考えて、一番良いと思うものを透に選ばせた。

透が選んでいる好きに、自分もストラップをかい、最初に目についたペンダントを買った。


「お礼にケーキでもおごろっか?」


「いいよ。わたしも楽しかったし」


「早めの誕生日ケーキだと思ってよ」


透は、微笑んでいた。透の笑顔はこちらも明るくする笑顔だ。本当に優しい人なんだなと思った。皮肉をいったのに笑って返されてしまった。敵わないなと思って、つられて笑ってしまう。


「もー、じゃぁおごってもらおうかな」


透はオッケイといって、デパートのなかにあるレストランに入った。そういえば、このレストランはあのときのレストランだ。ちょうど、奥のソファーの席に座った。ここも、前と一緒だ。偶然が重なり過ぎだ。どぎまぎしてしまう。メニューをみて、瑠奈はチーズケーキを紅茶と頼んだ。


「すごい、ここで怜奈に会った時、怜奈が頼んでたのと同じものだ」


透は楽しそうにそういった。そんな、メニューまで鮮明に覚えているのに驚く。あれは私だよ、とそう言えたらいいけれど、それは言えない



「へー」


「双子って、面白いね」


「そうだね。似てても全く違うんだ。怜奈は凄く可愛くて、甘え上手で笑顔が似合うのに、

わたしは、逆みたい、真面目すぎて似てるのに可愛げがないんだって。怜奈が太陽なら、あたしは月。月は、自分じゃ輝けないんだよ」



透はその発言に不思議に思った。どこがとは言えないが、変だ。


「比べるなんて、なんで?怜奈は怜奈だし、瑠奈ちゃんは瑠奈ちゃんだ。怜奈は太陽…確かにそうかもしれないね。でも怜奈は月が好きだろ?」


「、、、、、そうだね」


視線を合わせない。俯いていた。見透かされてしまいそうで怖い。ロマンチストな透だからそんなこと気にしなくて大丈夫だろうか。


「それより、透くんにCD返すよ。ありがとう」


一回借りたCDをやっと返した。透は瑠奈の態度が気にかかる。今日は違和感だらけだ。


「いいよ」


「他のもまた貸してね」


「うん、じゃぁ、今度ね」


「ありがとう、楽しみ」


瑠奈は微笑んだ。透は、瑠奈をじっとみた。見たことのある笑顔。怜奈の姉だからだろうか。双子は似てるのはあたりまえだけど、他に違う感じがする。

そういえば、瑠奈は鎖骨のちょうど中心に黒子がある。

本人は気が付いているんだろうか。

瑠奈は、ケーキを食べながら、透と明るく話しあっていた。


「今日は助かった。ありがとう。またね」


「ううん、怜奈がよろこぶのなら!またね」


瑠奈は笑って別れた。


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