楓と湊 4話
文化祭も無事に終わり、また元の生活に戻った。変化したのは、尊美と瑠依の関係くらいだった。斗真が頻繁に梓に会いに来るようになったが、邪険に扱われていた。期末テスト前になり、メールや部活も禁止になり、楓は一生懸命に若葉や小春に教えてもらいながら勉強する。これには理由があった。いつも、中くらいの順位にいる楓だが、湊に啖呵を切ってしまったのだ。それは、文化祭が終了した11月の前半だった。楓の誕生日をバスケ部で祝ってもらった時に、湊と話していた。
「楓、期末大丈夫なのかよ?文化祭大変だっただろ」
「理系やばい。ほんとにやばい。」
楓は数字が苦手だった。見てるとよくわからないが眠くなる。瑠奈と一緒にいつも理系の勉強ができるクラスメイトに教えてもらっていた。瑠奈は今回は透に沢山教えてもらっているようで、一歩リードしている。
「おまえ、ほんとスポーツ以外なんもできねーのな」
湊に笑いながら言われて、楓はかちんときた。
「ええ、ええ、あんたとは違って天に二物をもらってませんのでね」
その言い方に、湊もかちんとくる。
「はっ、俺が頭良いとはいってねーけど」
「頭いいでしょ。はいはい、いいですね。なんでも揃ってる人は。日本代表にも選ばれてて」
「は?それはお前だってそうだろうが、勉強とそれは全く関係ないだろ」
「ないけど、湊みたいに2物は与えられてないんで、私は」
売り言葉に買い言葉で見事にわかりやすく睨み合う二人を、透は呆れ顔でながめ、女子がとめる。
「楓、やめなよ。せっかくの17才誕生日なんだから」
「なんでよ。喧嘩売ってきたのは湊だし」
「は?売ってねーよ」
「売った。確実に売った。」
「じゃあ、17位以内に入ったら、湊くんの言葉撤回してもらいなよ。17歳だから17位以内、ね?」
のったと湊からも楓からも声が上がった。それから、楓は小春と若葉に頼み込んで勉強に励んでいる。若葉に関しては、中間や期末にむけて勉強するのではなく先の先まで勉強しているので、みっちり教えてくれている。
「楓ちゃんってたいてい50位くらいだよね?そこまでできないわけじゃないよね」
「250人いる中でそれならいいとおもうんだけど、湊くんを見返すには17位にならないとなんだって」
小春は楓が解いた問題を丸つけていた。
「むかつく。ばかみなと。あほみなと!!!」
そう言いながら、楓は机に向かっている。小春はため息をつきながらも付き合う。そういうとこ保から、楓のことの友情がかたいことがわかる。若葉は決まっでててきそうなところの説明を丁寧にしていた。
「若葉はなんでそんなに勉強できるの?」
楓は机に向かいながらそういった。
「え?!知らないことを知れるからかなぁ………?知識欲がすごいんだと思うよ。中学まで田舎なところだったから勉強くらいしかやることなかったし」
若葉はそういいながら、手作りの問題を楓に出す。楓のために作ってくれたらしい。
「傾向と対策を練ればばっちりだよ。楓ちゃんて飲み込みいいし、文系はいつも80点くらいいくでしょ?今回の期末試験は結構みんなが躓くところが出されるから、全教科平均85点とれば17位に入り込めると思うの。だから、みんなの苦手なところはきちんとできるようになるといいよ」
「楓は理系苦手だもんね。化?学なんてこないだ30点とかだったよね。」
小春がそういうと、楓はショボンとしていた。
「そうなのー、敵なの。戦っても勝てないの」
いままで二人に教えてもらっていた布石もあり、残り1週間で、どうにかしてあげると若葉は意気込んでいた。部活もなく勉強に明け暮れるのに、ここまで集中をしたことが楓にはなかった。
一方で、湊は広間に集まって勉強をしていた。分野ごとに得意なものが先生になる。湊はほぼ先生役だった。読んで教師の話を聞けばわからないことはあまりなかった。わからなければすぐ質問して問題を説いたらだいたい頭にはある容量の良い頭をしている。
「瑠奈に会いたい。スマホ禁止ってなんなんだろう」
集中を切らした透はそんなことをいいだす。
「ほんとお前彼女大好きだな。」
貴志がそう呆れながらいって、手を止めた。
「瑠奈ちゃん素直で可愛いからいいよなぁ」
湊は教科書を読みながらそう呟いた。透は呆れ顔をする。
「それに比べて楓はって続くんでしょ?」
徹は見透かしたように言った。湊は冗談で言っったことを、楓があそこまで怒るとは思っていなかった。
「湊たちって、ほんとことあるごとに喧嘩するよね。今回の前はなんだっけ?」
「湊の元カノがどれだけ、可愛いか神山さんが熱く語りだして湊が切れたんだろ」
歩夢がしれっとそういった。斗真がしょうもないと呟いてくすっと笑っていた。湊は立っていたが椅子に座ってはーと項垂れる。斗真が湊の肩に手をおいた。
「君たちの喧嘩ってもう、一つのコミュニケーションみたいなもんだろ?言いたいこと言い合って仲直りですかっとしてるじゃん、今回だってそうだろ。毎回パターン化してるじゃないか」
「あいつがからかい半分を本気にするからいけねんだよ。いっつもそう。冗談なのに真面目に受け取るんだよな」
そんなことをいって湊は落ち込む。楓はよくわからない所でキレる。
「湊だって楓ちゃんからしたらそうなんじゃないの?」
斗真に諭された。確かに、お互いに冗談を言い合ってるだけなのにどちらかが本気にしていつも喧嘩になる。意見が食い違っても許せるはずなのに、許せないのはわかってほしいからだ。喧嘩してお互いにいつも反省して仲直りする。毎回のパターンなのに抜け出せない。
「湊の初恋も前途多難だね。俺たちの場合は攻略すべきは期末試験の問題じゃなくて、意中の相手をどう落とすかって問題だね。湊はたかだか半年だけど、俺は10年だからさ。お互いに頑張ろうよ。それに、湊のしょっぱい初恋をみんな応援してるよ」
斗真はうれしそうにそういった。湊はみんなが応援してくれていることが嬉しかった。
「しょっぱいとかいってんじゃねーよ。お前ら、ほんといいやつだな」
「まぁ面白いから、湊の反応が」
「うるせーよ!!!いまの褒め言葉全部返せ」
楓にあうまで、彼女の話になっても、クールにどうこう言うだけでそこまで盛り上がらなかった湊だが、今は必死さが伝わってくる。
「応援してるのも、面白がってるのも本心なんだから仕方ないだろ?」
湊は椅子から立ち上がり、ため息をついた。勉強の疲れも相まっている。
「まだ、外いける時間だよな?」
「うん、大丈夫だよ」
21時以降は寮から出てはいけない決まりがある。まだ時計は20時を指している。
「俺、コンビニ行ってくるわ。菓子とか飲み物とか欲しい奴いれば買ってくるけど」
「俺も行くよ」
透が立ち上がった。適当にほしいものを言われて、そのまま量から出る。コンビニまでは徒歩5分ほどでつく。学生によく利用されており、文房具も豊富である。
「えっと、コーラとポテチと……」
「僕は修正テープほしい」
透はそういって、文房具が売られてる列にいく。あまり気にせずじっと見ている。隣に女の子がきた。横目でそれを確認すると、透ははっとした。
「瑠奈?」
しゃがみこんでノートを探している女の子は、瑠奈だった。瑠奈も驚いている。ノートを取り出して立ち上がる。
「透くん?」
髪の毛をサイドで纏めて、ラフなジャージ姿の瑠奈は恥ずかしそうにしていた。
「やだっ、私こんなかっこなのに」
真っ赤になっている。
「可愛い「なんでいるの?!」
急に楓の声が聞こえて、透は拍子抜けした。あの二人がはち合わせたらしい。瑠奈はすぐにお菓子売り場へいった。
「お菓子の買い出しなの。じゃんけんで負けちゃって、楓と私が行くことになったの」
瑠奈がフォローを入れる。湊と楓は気まずそうにしている。しかし、湊から話しかけた。
「………楓「いま謝んないでよ!?」
見透かしたように楓は言った。
「謝られたら、頑張ってる意味なくなる。あんたのこと見返すんだもん。喧嘩続行でよろしく」
楓はそう言うと適当にお菓子をかごに放り込んでいた。そして、お会計にすすんでいく。
「楓、素直じゃないからもう怒ってることはないと思うけど、やっぱり意地張りたいみたい」
瑠奈は、湊の耳元でそっと「湊くんに認められたいみたい」と小声で言って笑っていた。視線が合うと湊は苦笑いしていた。透がそれを見て怒っている。
「距離近いよ」
「俺と瑠奈ちゃんは仲良しだから」
瑠奈はうれしそうに頷く。透にも試験頑張ろうねと告げて、楓のもとに戻っていく。
「瑠奈ちゃんて、ほんといい子だね」
「距離感考えて」
「瑠奈ちゃんてなにも思ってない奴だと無意識に距が近くなるんだよ」
「なんか、湊のほうが瑠奈のことわかってるみたいでむかつく」
「そんなの俺のせいじゃねーよ」
湊はそういって、楓の後ろ姿を見つめていた。瑠奈と歩いているときはもう笑っていた。
「俺はやっぱり楓がいい」
あんなふうに、不器用でもまっすぐ向き合ってくれる楓がいい。湊たちも適当に買い物を済ませると、寮に戻っていった。
試験日初日になり、楓は朝からいままで若葉たちが教えてくれたノートを見返していた。試合の日のようなドキドキ感があった。教室にいきヘッドホンで周りの音をシャットダウンして、最後の追い込みをかけた。三日間のテストは今まで以上にわかるということが多かった。若葉の出してくれた問題が活かされている。小春や若葉に教えてもらえたからだろうか、湊を見返すという一心だったからだろうか。不得意だった科目もスラスラ解けた。頑張ったかいがある。テストが開けると部活も携帯も解禁になる。メッセージはかなりたまっていた。テストが終わった瞬間に、尊美を誘い体育館で体を動かして発散していた。それから、テスト休みを挟むが、湊とは連絡を取らなかった。結果がでるまでは連絡しない。テスト休みは、友達との遊びに費やし、返却日とテストの順位が出る日になった。朝から学校の掲示板に順位表が出ている。楓は小春の背中に隠れて、ドキドキしていた。
「あんた、こういうときはビビりよね。大丈夫だよ。一番苦手な化学でさえ86点だったじゃん」
「や、でも…若葉なんてオール100点だよ?どうしよう、だって17位って現実的に考えてもやっぱり無理じゃない。オール100点とかとってる人いるんだよ?」
「あの子は比べちゃだめよ。へらへらっと一位とってっちゃう子なんだから」
そういいながら、小春は順位表をみて、わーおと言っていた。
「え?!」
楓はまだ掲示板を見る勇気が出せず、かがんでいる。小春の背中に隠れている。そこに、梓と優衣も着ていた。若葉も来ている。
「おはよー。結果出てるね」
そういいながら、梓は自分の順位を確かめる。若葉と10点差で2位だった。
「わー、若葉今回全教科100点なの?!」
「いつも以上に勉強したら、なんかすんごい解けてたの」
そういいながら、梓はあいつどうだったんだろと携帯を出していた。
「斗真くんは、湊くんに負けてるって真祐がいってたけど」
小春はそう言った。梓はメールを送ると携帯をしまう。小春に隠れて楓はまだ自分の順位を見ていない。
「いい加減みちゃいなよー。楓ちゃん」
優衣はそういいながら腕を引っ張ると、楓は俯いたままぐっと見る決意をして、上を見上げた。
15位に神山楓と書いてあった。楓は飛びあがって隣の優衣に抱きついた。
「えーーー?!うそでしょ?!15位だって!!」
そういって、写メをする。そのまま小春と若葉に抱きついた。
「ありがと!!2人のおかげだよ!!ありがとー!!」
「それより、湊くんにいいなさいよ」
そういうと、楓はピタッと止まった。
「…今は言わない。今日部活で会うから、そのときにする。証拠に写真だけとって。」
楓はそういってポーズを決めて写真を撮っていた。教室に戻るとメールで着ていた。結果は直接といえよ。それだけだった。
部活の時間になると、楓は尊美を連れて先に聖和の学校に付く。2人で柔軟をしていると、男子もやってきた。
「お、たかみんと楓、はえー」
「あ、湊」
ふふんと言いながら、携帯を持ちだして楓は湊に見せつけた。
「これ!!どーよ!!」
そういって、写真を見せる。湊ははーと息をついた。
「やっと謝らせてくれんだ。認めるよ。お前は勉強もできるって」
「なにそれ?なんかつまんない反応だなぁ。けんか続行っていったんだから、盛大に仲直りしたかったのに」
楓は不満そうにそう言った。湊は楓の頭をぽんと触る。
「お祝いしてやるよ」
真面目な顔をする湊に楓は顔を輝かせた。
「え、なに??」
「文化祭のミスコンの優勝品あっただろ?」
湊は準備体操を始める。楓は携帯をポケットにしまった。
「あー、オリエンタルランドの?」
「あれ、ペアチケットだろ「そうだけど、まさか一緒に?」
「お前、好きじゃねーの?」
「好きだけどさ」
「贅沢じゃん」
湊は準備体操をおえて、柔軟を始めた。
「あたし別にご褒美ほしさにやってないんだけど…」
「俺がお前と行きたいんだよ。」
「それ、あんたの気持ちじゃん!!ご褒美関係ないじゃん!!」
尊美が2人に割ってはいる。
「いいじゃん。いってきなよ」
そう湊の肩をもつ。他のメンバーもそうだった。楓が折れるしかない状況になり、わかった!!と楓は言った。
「わかった。はいはい。」
「平日空いてる時の休み狙っていくから。12月後半だな」
湊はボールを持ち始めた。
「じゃぁ、必然的にクリスマス時期だね」
透はそう提案し、湊も良いねぇと言っている。楓は自分が置き去りにされるくらいに話が進行していた。動揺する楓に、湊はくすっと笑っていた。




