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文化祭編 6



梓はミスコンが解散されると、やっと自分の時間が出来たことに気が付いた。しかし瑠奈の事件を思い出す。持ち歩いていたトートバックから携帯を出すと、瑠奈から電話が来ていた。折り返しの電話を入れる。


斗真が隣に来たのも気にしなかった。



『もしもし…梓?』



「どうしたの」



『犯人、まだ見つかってなくて』



「え?!」



『いま、あかりといるよ。大丈夫だからまわってね』




「そう…、ほんとに、瑠奈は大丈夫?」



『うん、大丈夫だよ。寮にいるから、安心してね』




斗真は梓が携帯を切るのを見ていた。




「大丈夫だよ。俺、誰かわかったから」




「え、誰?はやく捕まえて!」




梓は斗真によって胸ぐらを掴む。



「大丈夫だよ、さっき透に電話したから。透に任せてあげなよ。彼氏だし。それよりあずさちゃんも時間あるでしょ?一緒にまわろうよ」



梓は嫌な顔をしていた。確かに誰とも約束はしてなかったが、瑠奈の事件が自分の中では解決していない。しかし、斗真いうとおり、透がいれば大丈夫だと思っていたし、瑠奈もそのほうが落ち着くだろうということはたやすく予想できたので


1人で回ることを考えていた。斗真の申し出は拒否である。



「天敵と回るなんて嫌よ。あんたと一緒にいて良い経験なんてしたことないわよ?!」




昔から隣にいるとなぜが自分からやっかまれる。そんなつもりまったくないのに、ひどい話である。おさげも眼鏡も落ち着くから好きなのに、今は髪の毛も巻いているし全く落ち着けない。それで、斗真と一緒なんて最低だ。斗真は続けて提案する。



「いいじゃん。せっかく素敵な格好してるんだし、俺も暇だしさ」



そういうと、腕を組むように空けてくる。しかし梓はすたすたと屋台に歩き始めていた。



「いやよ!」



「つれないなぁ。幼馴染じゃん」



斗真がそういうと、他の女子が斗真に挨拶をする。爽やかに返事をする。梓はその好きに屋台へ早歩きをするが、ヒールを履いているせいで歩く速度は遅い。すぐに斗真は追いついてきた。男子に話しかけられて写真を求められ戸惑った。




「あ、すいません。梓ちゃんそういうの慣れてなくて、固まってるんで行きますね〜」




「大丈夫よ、わたしは」




梓が抵抗するが、斗真は梓の肩を持って歩いていく。



「俺のことは男よけに使いなよ。ギブアンドテイク。俺も梓ちゃんいれば女よけになるから」



「そうね、そうするわ」



梓は胸を張って歩く。斗真は、横にいる梓がやっかみも言わずに素直に歩いているのならなんだかおかしくてクスクス笑いながら歩いていた。


クレープ屋が空いているのをみて、梓は並んだ。順番がきて注文をする。



「あ、藍原さんだ!うれしい!」



注文をすると、そう声をかけられた。梓は何で知っているの?という顔をしていた


斗真はやれやれという顔をして、梓に説明する。



「梓ちゃん、ミスコン出てたでしょ。割と騒がれてるみたいだよ。あの後写真がまわされてるみたい。梓ちゃんのその格好の写真も貼ってあったよ。それが、各所にあるみたいだから。楓ちゃんも仕事早いね」



ものの10分程度で、斗真の洞察力も長けている。梓はあぁと納得していた。



「わー、めっちゃ綺麗な人!相田先輩の彼女なんですか?」




斗真はにこにこ笑って肯定する



「そう「違う!!!腐れ縁!!!!こんな腹黒い悪魔の彼女なんて願い下げよ!」




梓は食い気味に否定した。


一年生らしく、困った笑顔を見せていた。クレープがでてくると、梓は受け取りお金を払う。朝から食いっぱぐれていたのを、クレープを食べて思い出したかのようにお腹がなく。梓は大人しく隣を歩いている斗真を不思議そうに眺めた。中学校のときは、もっとうるさかった。教室まで来ては、笑顔で梓の闘争心に火をつけて颯爽と帰っていく。生徒会でも、斗真が自分をからかうのが名物になっていた。反応しなければいいのに、反応してしまうのは、幼稚園から積み重ねられてきたものだ。



「あんたが大人しいと変な感じ。どうしたのよ?」




梓にじっとみられて、斗真は視線をそらしてまた赤くなっていた。梓は?を浮かべている。



「や、梓ちゃん見てる男多いなと思って」



斗真は周りを見ながらもそう言った。そして、斗真もまわりをみて落ち着いていた。梓は周りには興味はないようでそうなのと言いながらもすたすた歩いていた。



「…ほんとにどんだけ鈍感なの…」



斗真はぼそっとそういい、梓はなに?と聞くがなんでもないと答えた。



「…今日はありがとね。瑠奈のこと元気づける姿、なんか頼もしかったよ」



にししと笑いながらそういうと斗真は顔を真っ赤にしていた。梓のたまにいう素直な一言に、いつも胸うたれているのだ。



「何で顔赤くしてんの?熱でもある?」




梓は斗真の頭に手を置こうとするが、止められた。




「もしかして、私が変なこと言ったから?」



「…そうだよ。変なこと言った。俺の事褒めてくれたことないじゃん」



「あー、そうだね。でもほんとに感謝してるんだもん。まぁあんたは、、あたしの目の上のたんこぶだから」



何枚も上手なのは梓のほうだと、斗真はそう思ったが言わなかった。こうやって調子を崩されるのが嫌じゃない相手も、梓だけである。こんなに好きなのに伝わらない。


斗真ははーっとため息をついて先に歩く梓を追いかけた。




湊は、中学で仲よくしていたメンバーと合うことになっておりミスコンのあとはそのメンバーと集まっていた。楓がお好み焼きで怒りをぶつけたメンバーである。ミスコンの舞台裏まできてくれた。観客の中に、楓の中学の友達である乙哉が友達といるのが見えた。楓がこそっと視線を合わせてウィンクして手を振っているのも分かった。女子と男子が半々いた。


中学のメンバーといると、そのことばかり思い浮かんで気分が浮ついてしまった。ミスコンの集計をしている教室の前を通ると、楓が嬉しそうに乙哉たちと一緒に話しているのに気が付いた。



「楓、やせた?」




「最近、忙しかったからかなぁ?ってか、美和ちょっと身長伸びたんじゃない?」



「えー?気づいてくれた?楓を抜いて、172はあるよ」



「えーいいなぁ!」




バスケ部の仲間だったのだろうか。


「お前、半袖で頑張ってたな。寒くなかったの?」




乙哉に聞かれて、楓は笑ってみせた?。



「盛り上がったし、熱気すごかったからそうでもないよ?」



湊はそれでも楓が震えていたのを知っていた。今もパーカーは来ている。乙哉は本当かよと言いながら疑った目をしていた。他の男子も楓を狙っていると話していたのを思い出した。いま楓の前にいるやつらは、乙哉以外も楓のことが好きなんだろうか。いったいどれだけいるんだろう。そう思うといてもたってもいられず、思わず話しかけて邪魔をしてしまった。



「おい、楓」



「あれ?湊…と、友達たち」



楓は思い切り笑顔で湊の中学時代の友達に挨拶をしていた。お好み焼きでの失態を忘れたかのように、楓は満面の笑みだった。楓の中学の友達は皆固まっていた。レベルの高い集まりであることが理由だろう。楓はそれを感じ取ったのか、明るく言う。



「同じ高校生だよ。まぁ、ハイレベルだけど、、、。あたしなんて、お好み焼きで超浮いたんだから!」



はははと笑う楓だが、湊にとっては苦い記憶だ。


湊の元カノである理恵が声をかけた。



「あのときはほんとにごめんね」



「あ、違うよ!嫌みとかじゃなくて!!あたしのほうこそごめんね!お気を悪くすることしちゃって」




「楓、何したの?!」




「あー、ちょっと、、、いつものやつをね」




楓はあはははと苦笑いをして頭をかいた。


そこに、中多が現れる。



「楓、いい加減にしろ。あと30分で集計終わらせんだからな」



「まじ?そんな時間?」



時計を見て楓は我に返って慌てた。



「じゃ、ごめんね。誘ったのに回れなくてまた会おう!仲中バスケ部同期会しよ!」




「もちろん!誘うからね。あ、私たちこそ、お菓子渡すだけなのにごめんね」



楓は大丈夫といって、手を振ると、ドアを閉めた。



楓がいなくなると、グループ同士ぎくしゃくした空気が流れた、会釈をして違う方向へと互いに進んでいった。湊は、まだぼーっとしたまま歩いていた。何回か楓のいる教室を振り返ってみていた。もしかして、中多も楓が好きなのか?でもあいつには彼女がいたはず、、、。そういろいろ考えていると元カノであった理恵が声をかけられる。



「楓ちゃんていいね。湊が惚れるのもわかるわ」



「え?」



「湊が自分から好きになったのって、楓ちゃんが初めてだもんね」



ばればれだと言うのが恥ずかしくなる。



「…大切にしてくれたのはわかってるけど、気持ちはくれなかったから、羨ましいよ」



理恵がそういうと湊は苦笑いを浮かべていた。女の子らしさなら、理恵も由美も楓の倍はあるだろう。しかし、湊はそんなことよりも楓がよかった。楓の笑った顔、切ない顔、おちゃらけた顔が浮かんでくすっと笑った。結局好きになると言うのはそういうことなのだろう。



「ごめんな」



「いいの。湊の優しさにつけこんでたのはわかってるもん。湊と付き合ってきた子は皆そうだよ」



理恵はそういうと、湊はもう一度ごめんと呟いた。




集合時間になると、楓は頬に落書きをされた状態になっていた。さっきのペナルティだろう。集計さぼりました。ごめんなさい。と両頬に書かれている。しかも、油性ペンで1文字1文字書いた人物が違うと言う凝ったものであった。集まったミスコンの参加メンバーはぎょっとしていた。


楓は気にせずに時間が迫っているので短く説明してステージに出ていた。流石にパーカーは来ているが相変わらず生足である。



「これは、集計の時にちょっと友達と話してた罰です。あと、一発芸やれって言われたんで、拍手に合わせてジョジョポーズします」



そういって、楓は、観客に拍手を誘い、パンパパパンのタイミングでポーズを決めていた。笑いをとれることが楓の喜びでもあるので罰ゲームというか、楓の独壇場になりつつある空気だった。さっそく音楽が鳴り、結果発表になる。その前にメンバー全員が舞台に上がる。集計結果は楓が手元に紙として用意してある。梓も舞台に上がっていた。ここでは、3位からしか教えてもらえない。自分は何位なのか、全ての順位が分かるのは次の日である。掲示板に張り出されるらしい。


自分が斗真に勝てるのか、せめて圏外にはなっていませんように。今になって梓は不安になった。最下位ということもあり得る。



「男女ともに、第三位から!」



楓はそういうと、ドラム音がなり、ジャンと楓が声でいう。



「1年、大和孝志さん、2年、荒井咲里さん」



「大和くん、咲里ちゃんおめでとう。景品はお菓子パッククラスの人数分です」



そして、コメントをもらう。二人がコメントをして、楓は咲里にクラスでお菓子を分けるように伝えていた。



「続きまして、2位の発表です!」



梓は両手を合わせて神頼みをしているようだった。



「2年、相田斗真さん、3年、林道麗華さん」



梓はまた負けるのかということが頭をよぎった。やはり、ミスコンは不利だ。また言うこと聞くのか、あいつの、あの腹黒悪魔の!!前回は掃除当番交代、その前は鞄持ち、その前は、、、今回は変なことじゃありませんように。泣きそうになりながらも、二人のコメントなんて一言も聞けなかった梓は燃え尽きた表情をしていた。いよいよ1位の発表になる。



「残る1位!!」



ドラム音が長くなる。それは無駄に長いが、やっと切れて楓が発表する。



「2年、奥出湊さん、2年、藍原梓さん」



楓の言葉にはたと梓は不思議な顔をしていた。あれ、自分の名前が呼ばれた?前に出てくるように指示されて、皆よりも数歩前に出る。


楓がこいこいと手招きをするので、湊の隣に立った。




「2年生凄いね。ミスコンの上位ほとんど2年生でした」



楓はそうして、景品を渡し、コメントさせる。



「まずは、奥出君から」



マイクを渡して、湊が挨拶をする。



「あ、ありがとうございます。なんていうか、嬉しいかな。僕の事応援してくれたクラスの人だったり部活の人だったり沢山の人に感謝します


ありがとうございました」




完璧な挨拶、しかもこ慣れている。楓は、湊からマイクを受け取った。



「奥出くん、ありがとうございました。続いて、藍原さん」



楓にマイクを渡されて、梓はよくわからないままマイクを持っていた。



「えっと、ありがとうございました。


勝負に勝てて嬉しいです。全面的に協力してくれたクラスの皆に感謝します。ありがとうございました」



梓はそういうと深々とお辞儀をした。


楓はそのまま続ける。



「1位のお二人には、サプライズ!もう一つ特典があります!これから一ヶ月、校内の売店のものはただとなります!そして、ここでいま客席に皆さん、そして両校全校生徒さんに相談です。後夜祭終了まで二人のわがままを聞いてあげられますかー?!」




楓が元気に質問すると拍手がどっと起こっていた。楓は、沈めると、大きな声でいう。




「じゃあ、みんなー!!!!.二人に傅け!頭を垂れろ!二人のわがままは甘んじてうけてくださいねー!!!!よろしくお願いします」




楓がお辞儀をし次の段取りに進もうとすると


湊が楓からマイクを奪った。



「じゃぁ、言いだした神山さんに最初の権限を使いますね。みなさん、よく見ててくださいね」



そういうと湊は隣の梓にマイクを渡し、楓の両頬をがしっと掴んだ。楓は、抵抗することもできず驚いている



「見せしめな」



そういって、無理矢理楓の唇を奪った。もう何回目かもわからないが、慣れない楓は驚いて目を見開いたままだった。一気に真っ赤になる。そして唇を押さえていた。



「っな!!なんで!!!!」




湊のファンの女の子たちが、悲鳴をあげる。



「誰に何しようと勝手だって皆で決めてくれたんだろ?」



湊はいたずらっぽい顔をしてそういった。



「傅かせたい女なんて、お前しかいねーよ」



挑発するような湊に楓は困った顔をして唇をパーカーで隠していた。梓も驚いている形で、斗真がとっさに梓が持っていたマイクをとった。



「以上で波乱のミスコンは終了します!湊の暴走ぶりは見事ですが、司会者を再起不能にさせるのは困りものですね。今回は2位で終わりました、他にも悔しい思いをしたメンバーもいます。次は勝てるよう、また奮闘しますので、またコンテストがあるときはよろしくお願いします。では、みなさん、後夜祭もお楽しみください。イベントは以上です」



斗真が綺麗にまとめるが、楓はいいところを全部もっていくなと訴えていた。湊はしてやったりの顔をしていたし、はちゃめちゃなままイベントが終わった。楓はまた怒られるとどよんとして舞台を降りていたが、中多は何も言わなかった。湊はドンマイといいながら、楓の肩を軽くたたく。



「何がドンマイだ!湊のばかーっ」




涙目で湊の胸を何回も叩いていた。



「あの場で思いついたんだよ。いいじゃん。楓も俺の言うこと聞く義務があるんだよ。後夜祭までは」



二人のやりとりはもはや付き合ってるカップルのような会話である。楓は、なにも言えなかった。斗真に切り替えて話を降る。



「ってか相田くん、いいとこ全部もってかないでよー」



「ほら、あのままじゃ終わんなかったっしょ?それに、アピールしとかないとね。来年は勝たないと」



からかうように斗真はそういった。



「あたしが言うべきセリフ全部言ってた!!」



「楓には同情するわ」



梓はぼそっとそういった。片想いされている相手に公開でキスされて、それは=告白されているものだ。楓は梓に後ろから抱きついた。



「ねー、酷い男どもだよ!!」



「私の権限を使って、二人とも後夜祭まであたしたちに近づかないでっていうよ」



「俺にも権限あるだろ!対等じゃん!俺が楓に後夜祭終わるまで一緒にいろって言ったらどうなるんだよ?」



「そういうために考えたんじゃない!」



楓はうなだれていた。唇を湊に奪われるのはもう何回目なのだろう。結局は、意識せざるを得なくなるように刷り込まれているようだっま。湊と会うと、実は毎回思いだされるから、なるべく唇は見ないようにしているのだ。湊は中多に楓はかっさらっていくと伝言すると、権限ですぐに了承された。



梓は、初めて斗真に勝ったが、実感がわかないままだった。クラスメイトや友達とミスコン優勝でもりあがっているかな、斗真に呼ばれた。



「梓ちゃん、ちょっと生徒会室いこっか」



そう言われて、聖和の生徒会室に二人で向かった。斗真は素直に負けを認めた。そして、片膝をついて梓の手にキスをした。梓はその行為に驚いて、ぎゃっと手を引っ込める。



「色気ないなープリンセスなのに」



「色気もへったくれもない!もともとミスコンさそったのはあんたでしょ?っていうか、あんたに勝てることがあったなんて!!やっぱみんなの力は強いのね」



梓は嬉しそうにそう言った。斗真はやれやれという顔をして、そのまま立ち上がった。


真面目な顔をして梓を見つめる。とうの梓はぶつぶつと他に何なら勝てるのかしらと考えている様子だった。



「弱み教えるって言ったよね?」



「あっ、ウルトラマンの怪物シリーズ順番に最後まで言えたら勝ちとか?」



梓は思いついたようにそういったが、斗真の真剣なまなざしを見てかしこまった。



「真面目に漏らさず聞いてね。俺の弱みは、梓ちゃんの事が好きってこと」



梓はふんふんと聞いて、少し間をあけてはっとした。驚きを隠せないまま目を見開く。そしてしばらく考えて梓はもう一度尋ねた。



「はぁ?もっかいいって」



「梓ちゃんが好きなんだよ」



「えっと、弱み?間違い「だーかーらー!一生懸命俺に立ち向かう梓ちゃんが好きなの!


幼稚園の時からずっと気づかなかったの?」



梓は驚きを隠せなかった。そして、一旦考えさせてといって後ろを向いていた。斗真はそのまま後ろから抱き寄せる。



「は、わかったわ。こうやってあたしを惑わせることかま策略なのね「そんなわけないでしょ。ストレートに受け取ってよ。ずっと頑張ってる姿が可愛くって受けてたけど、もうやだよ。


敵ってなに?俺そんなに嫌われてるの?」



梓は斗真の腕のなかで、斗真の胸の鼓動が高鳴ってるのをきいてしまった。慌てて離れる。



「え?!なんでドキドキしてるのよ?あたし、あんたのことそんなふうに見たこと一度もないし、あんたがそんなふうに見てたことに驚愕だわ」



「鈍感だもんね。ほんと、楓ちゃんよりも鈍感て何?」




「楓より鈍感?あたしが?!」



梓は腑に落ちない様子だった。慌てる梓の肩をもって、自分の方へ向かせた。そして、視線が合うように屈んでいた。



「そうだよ。10年以上一緒にいて、俺の気持ちに気づかないって鈍感すぎでしょ。他の子なら気づいてるよ。天然の鈍感の梓ちゃんは、楓ちゃんみたいにキスされないと分かんないの?してあげようか?」



そういうと、梓は斗真の唇に手を当てて思いきり拒否をした。



「や、わかったから!!いいから!!ってあっ」



自分の手が斗真の唇に当たったことにも気づき手を戻す。感触が柔らかくてなんだか恥ずかしくなる。



「ごめん!」



「キスを拒否したことのほうがショックなんだけど……」




斗真はしゅんとしていた。



「それは、、あんたはあたしにとって目の上のたんこぶであって、好きとか、好きとかは…」




言葉がこもる。斗真は困っている梓に嬉しそうに微笑んだ。




「いいよ、わかった。何年も片思いしてるんだ。俺は何年でもアタックするよ」



斗真は胸を張ってそういった。小さいときかは片想いしてきたのだ、やっと伝えられて嬉しい。梓の戸惑った顔がとてつもなく可愛い。




「あ、、、あたしあんたになんて靡かないんだからね」




ふん、と腕を組み鼻をならす。つんけんした態度はとるが、内心はかなり動揺している。




「いいよ、僕は君のこと諦めるつもりはないんだから」




斗真はいつもの挑発的な態度で梓をみた。梓は宣戦布告されたような気分になり、いきいきした顔をしていた。



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