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文化祭編 3




ミスコンの実行委員、男女で各クラス1名ずつ選出される。


2日目のメインイベントであるミスコン、楓は実行委員として盛り上げるべく司会となっていた。


みんなの意見を聞き、話し合いの回数も多く行い、ミスコンに出るメンバーとの顔合わせでも意気込みをかなり楽しそうに語っていた。


話し合いのとき、1位をもらった人への特権として何を渡すかということが一番真剣に話し合われた。


これはミスコンに出るメンバーにも話さず、当日のサプライズとされている。


景品は当たり前のように用意してあるのだがほかに良い案が浮かばず、


実行委員は頭を悩ませていた。2日前に決まり、今日は本番を迎える。


打ち合わせをするのに実行委員で作成したTシャツに短パンという姿で楓は聖和の校門にきていた。


リストバンドが実行委員のしるしである。コンテストはいたって簡単で、最初に自己紹介と質問コーナーがあり、


続いて自己アピールの時間がある。一人3分最後に一言いうコーナーがある。


外部からくる客もいるので、体育館ではおさまらないと判断し、外でやることになっている。


広いグラウンドにカメラも設置し、盛大なイベントになることが予想されていた。


実行委員で最後の確認をした後、参加するメンバーが集合する。




「楓、メンバー集まってるぞ」



副実行委員長は、バスケ部で仲良くしている中多である。


楓は最後の景品などのチェックをして席をはずしていたので呼びに来たのだ。



「おっ、オッケーってか、中多が説明すればいいじゃん!あんた副実行委員長でしょ?」



「俺は裏方だって!人前で説明とか苦手だっつってんじゃん」



「もー、わかったよ」



楓はそういうと招集をかけたメンバーのもとへといった。


ハイレベルな美男美女の顔ぶれだった。学年ごとに5名ずついるので、


相当なメンバーであるが、一人も引けを取ることはない。



「おー、さすが!クラスの推薦で通ったメンバーだね!今日はよろしくおねがいします。


一応、もう一回自己紹介しておきます。実行委員で司会を務める清連学園2年3組の神山楓です。


流れは前に配ったプリントどおりです。自己紹介は、1年生からお願いします。


学年ごとにランダムになるようにくじがあるので後で引いてください。その出た番号順でよろしくお願いします」



テキパキと説明する楓は、11月なのに半そで短パンと来ている。


見ているほうが寒くなる格好だ。当の本人は、全く気にせずに話を続ける。



「優勝賞品はオリエンタルランドのチケット。もう1つ特典がありますが、お楽しみです


話は以上です。よろしくお願いします。」



楓はそれだけ説明すると、質問を受け付けた。


たったままでいるメンバーの中で、湊が手を挙げる。



「もう一つの特典て?」




「それは、お楽しみだって!1位の人だけ!」



楓は隣にいる実行委員にねーと言った。楓は他に質問を受け付けるが、特に出ることはなかった。


よしといって、楓は意気込んだ。



「そろそろ本番なので、心の準備!みなさん楽しんでください」



楓はそれだけいうと、パーカーを羽織って設置したステージに最終確認をしに行った。


騒がれている中で、梓は周りをみて挙動不審になる。




「何この人たち、同じ生物なの?!」



自分の思っていたことが言葉になっているのにハッとし、隣にいる斗真を見上げた。



「って感じの顔だったよ?」



そう言われて、顔を真っ赤にし肘で小突く。口調も真似されて余裕な表情の斗真に梓はいらっとした。


梓はいつもの格好をしている。眼鏡におさげで、コンテストの出演メンバーなら


誰よりも浮く存在であるということは自負できる。これは、クラスの策略である。


斗真は梓の隣で腕を組んでぼーっとしていた。梓は隣の斗真を見る。


斗真は小学校から沢山の子に囲まれる毎日だった。バレンタインは列ができるほどだった。


男子校に入っても彼の人気は変わらず、部活の練習などは見学しに来る女子もいるらしい。


斗真は他の女子に呼ばれてそっちに行った。くじ引きをするらしい。梓は邪魔ものがいなくなったとほっとした。


そして、自己アピールでやることを脳内でシミュレーションする。


梓も呼ばれ、2年生内での順番を決める。男女別で、男子からである。


梓は女子の中の最後の順番だった。



スタートの時間になった、楓はマイクを持って現れる。



「ようこそ!聖華祭、メインイベントのミスコンがスタートします!


本日司会を務める私は、清蓮学園2年、神山楓です!盛り上げていきましょー!!!」



ハイテンションな楓に観客も盛り上がる。司会のアシスタントである1年生の女子も楓と一緒に出ている。


その子も自己紹介をし、二人で盛り上がる。



「では、早速参加者を呼びましょう。まずは1年生のみなさん!」



楓がそういうと、1年生が出ていく。そして、一人ひとりがクラスと特技を述べていく。


楓は1人1人に3つくらいの質問をする。そして、場を和ませていた。



「つぎ、2年生のみなさん、ステージへ来てください!」



そう言われて1列でステージに出ていく。楓は番号を見て、そのまま臨機応変に声をかけていく。


最初は湊で始まる。湊に向けられる歓声はかなりのもので皆が圧倒されていた。


楓はいつも湊と接するように質問をしていく。湊は場に慣れているようでサラッと答えていた。


男子の最後が斗真の番だ。



「相田斗真です。特技は暗記と長距離走、陸上部です」



「斗真くんにも質問が3つあります。まず、好きな教科は?理由もつけて答えて」



「数学かな。公式分かれば後は応用すればいいし」



「簡単なことじゃないぞ、それ。次、自分の性格を一言で表すと何ですか?」



「色彩の彩の字」



「おー、いろんなことが出来るからだね。それっぽい。好きなタイプは?」



「んー、俺に対等に向き合おうとする子かな」



そういって次は女子に来る。梓の出番まで我関せず梓は無心だった。


ここでの自己紹介は特に明るくするという必要もない。自分はギャップで勝負して十分勝てると


クラスのメンバーには散々言われている。ドレスアップする必要はないが次の自己アピールからは私服を着て良いということになっている。


私服といっても、みんなで決めた白シャツにジーパン姿をしていた。


圧倒されていると楓が梓の前に来た。梓の様子を見てリラックスさせようと楓は声をかける。



「自己紹介お願いします」



「あ、清蓮学園2年1組、藍原梓です。よろしくお願いします」



梓が丁寧にお辞儀をする姿は、今時の女子ではなく、どこか古風な要素を感じさせる。


観客は今までは歓喜のような声援だったが、ざわついている様子がうかがえた。楓はそれも気にせず続ける。



「梓は、あとで凄い姿をみせてくれるんだよね?」



「さぁ?どうかしら」



梓はいつもの口調で答える。



「あと、結構ズバズバ物言う性格なんだよね。


あたしも何度梓には注意されたことか…こんな大人しそうな顔して」



「あんたの場合ね、適当すぎんのよ。髪の毛をぬらしたまんま出て行ったら風邪ひくし、


今のそのかっこ!あんたは大丈夫だろうけど、みてるこっちからしたら寒いのよ!


さっきまでパーカーきてなかった?なんで腰に巻いてんの?」



「暑いんだもん。このステージ。ってか、あたしだけ?!半袖短パンの女子ってあたしだけなの?!」



楓はそう言って、観客を見回していた。そしてあっと気づく。小学生くらいの女の子を指した。


この二人のコントのようなかけあいは、意外と受けている。楓はこれを狙っていたかのようだった。


梓に質問する前にパーカーを脱いで、腰に巻いていたのだ。



「ほら、あそこの可愛い小学生も半袖たんぱんじゃん!」



「客を指さすな!」



梓はそういうと、楓は時計を見た。梓は楓のおかげで緊張がほぐれていた。



「もー、質問する時間なかったじゃん。とりあえず、2年生は以上です。」



後ろに下がり、3年生の登場を見ていた。並んでいるなかで、自分が一番目立っていることは確実だった。


いい意味ではないとも分かっていたが、悪い印象でもない。ただ、自分の容姿が大人しそうであることはわかっていることだった。


そこから出される意外な言葉に観客は圧倒されていたことも分かる。


楓が落ち着かせてくれたということも、3年生に対して質問をしている姿を見て分かった。


皆が楽しめるようにという願いを込めて、楓は梓にも質問をしていたのだろう。




全員が自己紹介を済ませると、次は自己アピールの時間だ。


それまでは時間を少しとることになる。クラスのメンバーが集まって梓に寄ってたかって服を出し、化粧をする。


優衣が事前に梓と話し合ったメイクを施している。全員でチェックし、おおと盛り上がる。



「お姫様テイスト、やっぱりいいねえ!」



梓は鏡をみると、そこには自分じゃない自分が写っていた。髪の毛もアレンジされメイクもされているが、


自分だと言うことはわかるくらい薄化粧だと言うことも分かる。


これならいけるよ!という声も上がった。自身も鏡で見てみると、本当に自分ではないようなでも自分のような気がする。


ドレスっぽい赤いワンピースをきて戦い準備はできた。梓は用意した弓と矢を持って、イメージトレーニングをするために


外に出ていた。順番が来たら呼んでほしいと友達にはつげてある。



「…梓ちゃん?」



声に反応し目を開けて後ろを振り向くと斗真が驚いた表情をしてこちらを見ていた。


その表情は変なものでも見たかのようで、梓は機嫌を損ねていた。


斗真に勝つためにここまで考えたのだ。なんでその相手に変なものでも見られる表情をされないといけないのか。



「…なにその顔…」



顔を見るなり斗真は真っ赤になっていた。いつもの余裕そうな顔からは想像できない。


しかし、斗真も服装的にはしっかり考えてきているように見えた。


相手にとって不足はない。梓は斗真に近づく。しかし、斗真は後ずさる。梓は不思議そうに斗真をじっと見つめていた。



「…何で後ずさりするのよ。そんなに変なの?」



斗真は顔を反らしていた。反則だ。そりゃ、化けると思っていたし、


眼鏡をかけていないときの彼女の顔も知っているし、可愛いことも知っていた。


しかし、ここまで化けるなんて思わなかった。これだと、勝ち負けというものがどうでもよくなってくる。


梓は首をかしげて腰に両手をあててあり。。



「それより、今回もしあたしが勝ったらどうする?初勝利のお祝いは?」



梓が近づいていくと、斗真は立ち止まっていた。



「僕の弱み1つ教えてあげるよ」



「あら、楽しみ。私が負けたら、またあんたのいうこと1つ聞くのでいいの?」



「いいよ」



梓はそれを聞くと闘志を燃やしていた。そして、斗真に人差し指を向ける。



「見てなさい!今回こそ!絶対に勝つんだから!!」



生き生きした目をして梓はそういうと、クラスのメンバーとまた打ち合わせに戻っていた。


斗真は手に頭にやり、まいったというような顔をしていた。


遊び半分で誘ったはずで、今回は互角だと思っていたが多分今回は自分が負ける。


綺麗になりすぎて言葉が出なくなってしまった。


参加者は、自己アピールのために順番に出ていく。1人に用意されているのは約3分。


1人ずつステージに出て披露する。宴会芸の人もいれば、歌の人もいる。


女子は女子らしい見世物が多い。ダンスや歌が多い中で、梓は違う出し物を披露する。


皆の衣装も可愛くしていたり、男子も考えられている。


皆が注目しているのは、やはり奥出湊だった。彼の服装も目を弾くところだが、特技もバスケットボールひとつで披露していた。


楓は自分だってできるもん!と主張する姿があった。湊はやってみろと言わないのは、楓が出来るのを知っているからだ。


じゃぁ楓に出来ないものやってやるといって、新しい技を披露していた。


観客は賑わっていた。そして、斗真の番だ。



「湊の次だとちょっと地味な特技になっちゃうけど大丈夫かな?」



「大丈夫!!で、何するの?」



梓はステージ裏で見ていた。湊が戻ってきて話しかける。



「藍原さん、斗真と勝負してるんだって?」



「何で知ってるの?!」



「あいつ、よく藍原さんの話出すからさ、仲いいんだね」



湊は爽やかに笑っていた。



「へー、バカにしてるんでしょ。どーせ」



「………まぁ、傍から見たらそうかもね」



湊は少し悩んでからそう答えていた。梓は斗真に視線を向けている。


斗真の特技が暗記したものを暗唱することであると梓は知っている。


小学校から1回見た者はすぐに覚えてしまうのが斗真の特技だった。


斗真は、お客さんのなかから、本を持っている人をあてて貸してもらっていた。


50ページほど読んで楓に渡した。



「50ページまでどこでもいいよ。」



楓は15ページと言って、カメラにページを写させる。


斗真は後ろにある画面を見ないように、さらさらと文章をこたえていく。


おぉという声が聞こえてくる。



「本当にあいつすげーよな」



「いやいや、湊くんも学年トップなんでしょ?」



奥出湊が有名なのは、すべてが完璧という噂だからである。


トップ10入りから外れたことはないようで、斗真も一目を置いている。


周りの噂を気にしない梓でさえ、湊のことは知っていた。



「斗真には及ばないよ」



「そんなことないよ!斗真と違って、優しいし、気さくだし、話しやすいし完璧じゃん」



「斗真って気さくで優しいんじゃないの?」



「違う!あいつは全部計算しつくされてるか出していた。ら!!あたしにはわかるんだから!


あいつは腹黒いのよ」



梓は腕を組んでいた。



「へー、そう見える?」



そういうと、梓は大真面目に頷いていた。



「ふーん、藍原さんだけにって感じだね」



湊にそう言われると、梓ははっと失笑していた。


話しやすい湊と梓が話しているのを、周りもみている。


梓の変化に驚いているようで、二人に割って入ろうとする者はいない。


仲良く話していると、斗真が戻ってきた。二人の間に割って入る。




「湊、梓ちゃんとなに話してるの?」




梓は二人に挟まれて嫌そうな顔をした。



「ちょっと、あんたら二人に囲まれんの妬まれんのよね。二人で話してて」



梓はそういうと舞台で頑張っている楓の様子を見に行っていた。斗真が梓の姿を追っているのを見て、


湊は斗真に声をかける。



「斗真って、いつから片想いしてんの?」



「俺?…あ、なんだかんだもう10年か!すげー。俺も気持ち悪いな」




指折りしながら驚いていた。



「わ、長っ!あの相手じゃ、大変だろ」



「湊には言われたくないね。神山さん一筋縄じゃいかないでしょ。」



そういうと、湊は満更でもない顔をしていた。もう、次は梓の出番だ。


梓がステージに出ていくと、驚きの声が上がっていた。



「おー、ギャップ萌えだー!」



楓がそういうと、梓は胸を張ってポーズを決めていた。



「梓、もう特技七変化でいいね!」



「いやいや違いますよ。ちゃんと用意してきたの」



弓と吸盤の矢を持ってきた梓は観客に見せていた。



「私、弓道を8年やってるんですけど、小さい的に当てられます」



楓に指示して、ステージの端と端にたった。



「怖いんだけど」



「大丈夫、死んだりしないから」



「いや、そりゃそうだけどさ」



一回で当てると梓は集中して、楓の頭の上に或るりんごに視線を向けていた。


そして、放つと一発で真ん中に的中する。おぉという歓声がわく。


梓は、お辞儀をして戻って行った。




自己アピールが終わると、1人1人がまた出ていき、一言述べていく。


そして、票を全校生徒と来たお客さんから集める。


票は設置されてあるボックスに回収される。そして1時間後にまた集まる。


それまではまた体育館などで劇やバンド演奏などがある。


後夜祭が18時30からなので、発表はその一時間前であるということを楓は伝えると、


ステージから戻ってきて、参加者に御礼をいった。



「皆さんのおかげで盛り上がりました!本当にありがとうございました!」



楓はそういって深くお辞儀をする。



「これから集計してから、結果発表まではドキドキと文化祭を楽しんでね」



にっこり笑ってそういうと、参加メンバーは解散した。



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