守るべきものがある者
あれから五日経った。
俺とパブは行動を共にすることが多かった。ステータスの面では勝っていてもギルドのクエストに関してはさっぱりだった俺はパブに教えてもらう事が多かった。薬草の場所や何処にどの魔物が棲息しているかなど。やはり冒険者としては先輩であるということを目の当たりにした訳だが相変わらずパブは俺を兄貴のように慕ってくれる。
今日もいつも通りにパブと依頼完了の手続きをしようと受付に向かう。
「この町の近くに棲息しているゴブリン五匹の討伐が完了した。確認してくれ。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
ギルドで討伐したことを証明するにはギルドカードの裏にいつどこで何を討伐したかが自動的に記されることになっているのでそれを依頼書と一緒に見せてお金を貰うという事だ。だからフェリはお金を取りに行ったのだろう。
そんなことを考えてるとパブから声がかかった。
「兄貴、そろそろランクアップ出来るんじゃないっすか?」
「そうなのか?」
「はい、基本Fランクは依頼を5回以上クリア出来たら昇級試験が出来るんで、多分もう出来ると思うっすよ。」
「そうなのか。他のランクでもそうなのか?」
「いえ、基本これが適用されるのはFランクだけっす。他のランクは依頼のクリア度でギルドマスターが許可を出すっす。」
「そうか、なら俺も試験がをクリアできたらお前と同じEランクってことか。しかし、試験か…」
「俺の時はビッグスライム3匹の討伐でした。ビッグスライムは魔石に届くまで距離があるから苦戦したのを覚えてるっす。」
「俺の時は?毎回試験内容は違うのか?」
「そうっすよ。試験内容は毎回変わってしかもFランクは絶対に一人で行かなきゃだめなんっすよ。だから今回は俺が行くことが出来ないっす。」
一人か…ちなみに俺はこの力のことをパブに話している。だけど使わない。使う必要が無いからだ。この程度の相手であれば俺の膂力でどうにかなる。
だがまぁこの力の練習を怠った訳では無い。暇な時間を見つけ、様々な技を創り出した。例えば体に常に微弱な磁場のようなものを形成して、死角から攻撃が来た際に1度だけ防いでくれるとか、まぁ、もう一度形成し直せばいけるんだけど。言っていけばキリがないのでここまでにしておくが後々紹介するだろう。
「あ、あとレイヤの兄貴に大事な話があるっす。」
「どうした?そんなに改まって。」
「実は、俺、今回限りで冒険者を辞めることになったっす。」
「何故だ!?妹は元気になったじゃないか!」
「だからこそっす。今度は母と妹と近くの村に住んでゆっくりと農業をする事になったっす。これ以上家族に心配かけたくないっす。」
「そうか、なら先に例を言おう。短い、本当に短い間、ありがとうな。」
「そんな、兄貴に礼言われる程のことなんかしてねぇですよ!頭を上げてくだせぇ!礼を言うのはこっちっすよ!最初突っかかったのにも関わらずこんな俺の妹を助けてくれて……」
「当然の事をしたまでさ。」
「そんな事ねぇ!兄貴はすげぇ事をしたんだ!兄貴っ!アンタの事は一生忘れねぇ!今までありがとう!」
「なんだ?もう行くのか?」
「近くに行く馬車がもう出発なんっすよ。だからまた、どこかで会うことがあればその時は声かけてくだせぇ!」
パブは大粒の涙を目に溜めて今にも泣きだしそうだった。
「その涙拭いて早く行けよ。家族が待ってんだろ?これが最後ってわけじゃないんだから。」
「ず、すびばぜん…ありがとうございます。」
パブが涙を拭いて勢いよく顔を上げた。
「今までありがとうございました。これでさようならっす。」
そう言ってパブは悲しそうに笑う。
「オイオイ、パブ。こういう時の挨拶はこう言うんだぜ。」
「何時かまた、どこかで会おう。」
さっき拭いたばかりのパブの顔がまた涙で溢れる。
「はい!何時かまた、どこかで会いましょう!」
そう言ってパブは勢いよく背を向けて走った。
あいつにはあいつの守らなきゃならないものがあるのだろう。
「さて、俺も頑張らなきゃな。」
最後に見たパブのステータスに俺は笑みを浮かべた。
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パブLv20
HP 400
MP 120
物攻 140
敏捷 110
魔攻 24
魔防 34
スキル
短剣術
体力強化(小)
称号
守るべきものがある者
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そこには横取り野郎という不名誉なら称号は消え、守るべきものがある者という新しい称号になっていた。
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守るべきものがある者
守るべきものがある者。守る対象の状態が確認できる。
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「やはり、守るべきものがある奴ってカッコイイなぁ。」
そう言って俺は受付に向かう。
「フェリさん。昇級試験は受けれるか?」
パブとのBL展開は無いので安心してください。