第四の殺人1
「「「き、きゃああぁぁぁぁぁぁ――――ッ!?」」」
起きた川端。中田と日上が揃って悲鳴を上げる。
跳び箱から現れた遺体。それはつまり、彼らがずっと死体と一緒に過ごしていたことを意味していた。
「そんなバカな。探索時にここは探した筈なのに……いや、そんな場合じゃない。日上、十勝さんに連絡。放送してきてくれっ」
「え。あ、わ、分かりましたわっ」
既に夜這いの為に全裸待機していた日上が慌てて体育倉庫から出て行く。
「あ、ちょ、日上さんっ!?」
気付いた川端が指摘するより早く日上は駆け去って行った。
「と、とにかく二人とも倉庫から出よう。下手に何かを動かすな。現場維持だ。多分沢木と木場が調べに来る」
「才人、とにかく中田さんに服着て貰って。出るのはそれからよ」
日上の服を回収した川端に頷き、脱ぎ散らかされた服を集めて中田に放り投げる。
「さっさと出るぞ中田。俺を襲おうとしたことについては後で話がある。でも今は三綴だ」
わかったか? 念押しすると、中田は青い顔でこくこくと頷き、急いで服を着込むのだった。
「ん?」
一階を探索していた山田と何もすることが無いので山田に付いて来ていた坂東は見た。
目の前を全裸の女性が走り去って行く。
階段を上って行った全裸の女性は、おそらく日上だ。
「え? 何だ今の?」
「ぶはっ!?」
「うわっ!? 坂東氏!?」
あまりの衝撃的光景に坂東は鼻血を噴き出し倒れ込む。
突然隣で倒れた童貞君に、山田は一瞬憎悪を無くして慌てふためくのだった。
「しかし、なぜ全裸で校内を走ってるんだあいつは?」
すでに童貞を喪失した余裕か、女性の裸を見た程度では動じなかった山田は小首を傾げ、気付く。
「切羽詰まった顔。つまり、誰かが死んだか」
ならば十勝を呼びに向かったのだろう。早々に屋上に呼び出しがある筈だ。
「仕方ない。誰が死んだか知らんが、先に屋上で待機しておくか。そら、行くぞ坂東氏。起きろ」
げしりと脇腹を蹴って坂東を起こす。
しかし起きる気配が無かったので、仕方無く背負って屋上に連れて行く山田だった。
「十勝さんいらっしゃいますっ!?」
がらり、開いた場所は宿直室。
二つ並べられた布団には、片方に及川一人。もう片方には賀田が眠っており、その賀田に絡みつくように寝相の悪い井筒がキスを迫っているところだった。
「十勝さんなら多分図書室よ」
「し、失礼しましたわっ」
女性同士のキス直前という状況を見て慌てた日上は慌てて去って行く。
声に起こされ、布団から這い出た及川は、眠たい眼を擦りながらドアを閉めに行く。
「それにしても、何で裸だったのかしら?」
その疑問に答えをくれる人物は、誰一人としていなかった。
「十勝さん!」
がらり、開こうとした図書室のドアは施錠されていた。
勢いよく開こうとしたため爪に痛みが走る。
付け爪がはがれたようだ。
「痛っ――――? え? 何で私、裸?」
そして自身の状況に気付く余裕が生まれる日上。
顔を真っ赤にした瞬間、異変を察した図書室内の人物が鍵を開けてドアをスライドする。
「あ、まっ」
「誰だよこんな時間に……って、え?」
出て来たのは唯一の男性。沢木修一だった。
沢木は一目見ると、即座に下へと視線を下げ、そして顔へと戻ってくる。
「なんで、全裸?」
「ぎるてぃ」
「は? ちょ、待って光葉、これは違……違うんだぁぁぁぁ」
忌引に引っ張られて奥に連れていかれる沢木に代わり、木場と十勝がやってくる。
「こんな夜更けに全裸訪問なんて、随分な痴女具合ね」
「ち、違、き、緊急事態で、服脱いでたの忘れてただけですわ。って、そ、そうです! 十勝さん、放送、放送をっ!」
「放送?」
はっと我に返った日上の言葉に、木場の目が細まる。
「第四の殺人。……で、いいのね」
「そ、その通りですわ!」
「場所は?」
詰め寄る木場に気押されながらも日上は答える。
「た、体育館倉庫……」
「体育館倉庫って、まさか、中田さんが!?」
「ち、違いますわ! 死人は三綴さんですわよ。なぜか室内で死んでいたのですわ!」
なぜってどういうことですか? 十勝がそんな疑問を言うより早く、木場が動き出す。
「沢木君、行くわよ!」
忌引により奥に引っ張り込まれていた沢木の元へ行くと、その腕を引っ掴んで走り出す木場。
忌引が慌ててソレを追って行く。
「と、とにかく私は放送しますので、日上さんは服着てください」
「体育館倉庫にあるのよ!」
「だったら戻ってくださいっ!」
日上の背中を押し出す十勝。
走って来たせいで荒い息の日上は、再び校内を全裸で走り、体育館倉庫へと向かうのだった。