表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/246

女の闘い

 購買で井筒が起きたあと、木場と井筒が何やらオハナシを行い、俺たちは図書室に向かうことにした。

 した、のだが、購買を出たところで焦った顔で食堂からやって来た及川と賀田にはち合わせた。

 当然、焦っていた理由は井筒が見当たらないからどこに行ったか捜索するところだったってことらしい。


 当の井筒は俺とにゃんにゃんしてました。

 なんて絶対に言える訳が無い。

 言ってしまえば確実に及川と賀田のヘイトが溜まる。

 光葉による死亡フラグが回避されたのに次の死亡フラグが立ち上がるとか勘弁してくれ。


「丁度良かった! 木場さん、玲菜知らな……え?」


「玲菜?」


 そして俺達と鉢合わせた二人が見たのは、蕩ける笑顔で木場の腕に絡みついた井筒であった。


「き、木場さん……それは……」


「ああ、欲情して沢木君を襲いそうだったから私が相手したのよ、そしたら懐かれちゃって」


 なん……だと!?


「実乃里ちゃぁん、好・き」


「玲菜……?」


「ダメよ賀田さん。こういう娘はきちんと手綱を握っておかないと」


 クスリ、不敵に笑う木場に、賀田が親の仇とでもいいそうな顔で睨む。


「寝た、のか、玲菜と寝たのかッ!!」


「仕方ないじゃない。沢木君とするよりはマシでしょう?」


 あの、既にヤッちゃってるんですが、何気に酷くないですか。

 あ、マジすんません、光葉さんそんな白い目で見上げないで。


「玲菜っ、こっちに! 木場ッ、二度と玲菜に近づくなッ」


「あら。それを決めるのは私じゃ無くて玲菜の方よ。ねぇ、玲菜?」


「え、わ、私?」


「だって、欲情したのに賀田さんが相手してくれないからこっちに来たのでしょう。じゃあ私がすげなく断ったら同じことじゃない。だから賀田さん、選ぶのは私でも貴女でもないの、玲菜が、抱かれたいと思う方にくるだけよ」


 なっ。驚き固まる賀田。ニタリと不敵に笑う木場。

 二人を見比べどうしたらいいのか分からず半泣きの井筒。

 どうしろと言われても下手に会話に参加すると俺にとばっちり、というか折角木場が自分が襲った事にしてくれるのだからわざわざ自分から死亡フラグを立てに行く必要は無い。


「玲菜。私が幾らでも相手してやる。だから戻ってこい!」


「天ちゃん……で、でも、嫌なんじゃ……」


「そんな事は無いっ。他の奴に行くくらいなら、なんで……っ」


 貴女が断ったからでしょ。そう告げようとした木場の口を十勝が塞ぐ。

 流石にこれ以上憎まれ口を叩くと本格的に賀田たちと敵対してしまうと気付いて木場の暴走を止めたようだ。


「玲菜。本当に、大丈夫だった? 酷いことはされなかった?」


 どちらかというと俺が死亡フラグ立つほどに酷い事された気がするのだが。


「う、うん。酷いことはされなかったけど……」


「来い、こんな奴らと一緒に居る必要は無い」


 木場から無理矢理井筒を引き離し、賀田が井筒を引っ張って去って行く。

 及川はしばし俺達を睨んでいたが、何も言わずに歩きだす。


「沢木君……」


 賀田を追って階段に向かう及川。俺の側を通り過ぎる時、一度立ち止まる。


「玲菜に手を出したら、あなたも殺すわよ」


 こ、恐ぇぇ……

 猿人類は俺に釘を刺して去って行った。

 まさか、俺が襲われたのバレてた訳じゃないよな?


「ふぅ……」


 俺が肝を冷やしていると、木場が大きく息を吐く。


「これで貸し2かしらね」


 もはや貸し以上の状態だけどな。俺は多分もう木場に頭が上がらない。

 今の、木場が自分が井筒の相手をしたと言わなければ、俺は及川に撲殺されていただろう。

 例え逆レイプだったとしても及川と賀田が許してくれるわけがない。


「助かったよ木場」


「そう思うのなら、惚れて欲しいわね」


「いやいや、それとこれとは話が別。というか、本気なんだな」


「……ええ。無理矢理監禁してでも彼氏にしたい程には」


 隠す気ゼロだこの人ー。

 何で俺に近づいてくる人ってこうヤンデレが多いんだ?


「それで、この後どうします?」


「どうもなにも図書室で調べ物だな」


「では私は賀田さんたちの居る宿直室に向かいましょうかね。ちょっと行きたくなくなってしまいましたが」


「別に図書室でもいいと思うけど?」


「え、でも肉欲の宴が始まるんじゃないんですか?」


「やらせ、ない」


 おお、久々に光葉が口を開いた。

 購買からこっちなんにも喋ってなかったから何考えてるのか気にはなってたんだよね。


「まぁ、そう言う訳らしいから、多分今日は本を調べるだけで終わるでしょうね」


「なるほど、ではお言葉に甘えましょうか。流石にあの三人と一緒に寝るのは恐かったですし」


 と、俺にしなだれかかってくる十勝。


「沢木さん。疲れました。おぶってください」


「ぎるてぃ」


 ……あちらを立てればこちらが立たず。

 本当に胃が痛みだして来た気がする。

 大丈夫なのか俺。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ