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ハニートラップ

「さて、これからどうする?」


 基本は図書室でまた本を漁る日々だろう。

 まだまだ何かしらのヒントが隠されてるかもしれないからこの空き時間に調べるそうだ。

 とはいえ、俺はこれから購買部に向かってプロテクターに成りそうなモノを見繕わないと。

 不意の一撃でお陀仏になるのはごめんだ。

 特に危険なのが光葉なのだが、それ以外にも危険な奴はいるみたいだしな用心に越したことは無いだろう。


「それなら先に行っていて。忌引さん、少し話があるの、トイレでもいいかしら?」


「ん?」


 木場に言われた光葉は俺に一瞬視線を向けて、十勝に視線を向ける。


「え? なんですか? ああ。忌引さんが居ない間に私が襲うとでも? しませんよ。でも、気になるならご一緒しましょうか?」


 結局十勝も木場のお話というのに付き合うらしい。

 じぃっと見ていると、木場が視線を逸らす。

 やはり光葉への話しというのは俺関連らしい。俺を交えず話がしたいようだ。

 もしかしたら光葉の恋心を試すとかそんなだろうか?

 あるいは光葉に俺を諦めるように告げるとか?

 木場なら理論立ててやりかねないけど、未だに信じられないな。木場が俺を好きだなんて。

 しかもちょっとヤンデレ入ってるとか。いや、待てよ。光葉がヤンデレ、木場がヤンデレ、最上もなんか病んでるみたいだし、田淵なんて完全なヤンデレだよな。

 どうしよう、このクラス、ヤンデレばっかりな気がして来たぞ。


「んじゃ購買か倉庫にいるよ」


「了解」


 木場たちと別れ、一人だけで購買へと向かう。

 購買には様々な物品が置かれているのだが、必要なのがあるかどうかは不明だ。

 こうして見たところは購買自体に置いてあるのはよく買われる小物類が多く、滅多に買われないバールっぽい何かなどは購買倉庫にしまってあるようだ。注文が入った時だけ持って来るようになっているらしい。

 購買のカウンター奥にあるドアを開いて購買倉庫へ。


 牧場の遺体が出てからもここには人の出入りが何度かある。

 隠れるのならば段ボールだらけだから最適でもあるのだが、流石に二度目の探索となっても三綴が見つかることは無かった。

 段ボールに入って潜入してたら面白かったのだが、彼にそんなユーモアを期待するのは無駄らしい。


 用途ごとに仕分けされて棚に入れられた段ボールや籠を探して行く。

 鉄板のようなものか、あるいは硬い板がいい。後は軽ければさらに良い。

 流石に購買倉庫には無いかもしれない。

 プロテクターのようなモノでもあればいいのだが……


 分厚い本服に入れたは良いけど凄く重いんだ。

 これならまだ瓦入れた方が……あっちの方が重いか。

 お、ヘルメット発見。多分防災用ヘルメットだな。普段は折りたたんでおける奴だ。

 何の用途で使うために購買にあるのかは不明である。

 懐中電灯はまず使わないだろう。毎日明るいし。

 防災用の水は貴重だな。見付けたのは僥倖か。これはあとで皆に伝えとこうか? でも水は普通に出るからいらないんだよな。


「剣道着の防具が一番の候補かなぁ。あからさま過ぎるけど」


 待てよ。別に単体で防具に成りそうなのを探さなくても、小物を繋げれば……

 そうだ。このチェーンロープを使って鎖帷子作れば……って、何でこんなのまで置いてんだよ。

 黄色いワッカが連なったチェーン。おそらく入ってはいけない場所を囲って侵入禁止にするためのものだろうが、学校には関係ない気がする。まぁこれも誰かが必要だから購買に置いてあるのだろう。


 折角なのでこれでベストを作ってみようかと思う。

 などと適当に考えていた時だった。

 ガラリ、ピシャ

 ドアが開き、誰かが入ってくる。

 扉が閉められ、カチャリとカギが掛かった。


「え?」


 誰か来たのか?

 振り返った俺が見たモノは――――


「井筒?」


「うん。私です」


 俯いた井筒がそこに居た。

 薄暗がりの照明に照らされた室内で、ゆっくりと彼女が近づいてくる。

 まるでテレビから這い出てきた悪霊の如く、ゆっくり、ふらり、確実に。


「どうしたんだよ。カギまで閉めて、お、おい?」


 そのまま俺を通り過ぎると、購買から来れるドアに向かい、こちらも施錠する。

 なんだ。何する気だ。

 ヤバい。これは非常にヤバい気がするぞ。

 俯いたまま近づいてくる井筒に思わず退る。


 マズい。まだ刺殺対策は何も出来てないぞ!?

 井筒が迫る。

 すでに退路は塞がれている。

 飛び込むように突撃される。

 逃げる暇すらなかった。


 抱きつかれ、逃げ道を塞がれ、何が何だか分からない状況で見上げて来た井筒の顔を見る。

 蕩けた様な顔は、俺を殺そう。なんて表情ではなかった。

 その顔は、発情した雌猫のような……


「天ちゃんが処理してくれないのっ。お願い、私をレイプしてくださいっ」


「は? ちょ、本人からソレ言うのはレイプじゃな……」


 そう、逃げ場などなかった。

 逃れることなど出来なかった。

 俺はこの日、井筒に襲われた。性的な意味で――

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