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探索4

 玄関に向かい下足場から校庭へ。

 校門の先についても調べておきたかったので四人で向かう。

 校庭のトラックを突っ切り桜並木の立ち並ぶ校門へと辿り着く。


 残念だが桜の葉は殆ど緑。花は既に散ってしまっている。

 適当な石を探す。

 トラックと言っても小さな石なら稀に存在するので、これを拾い、オーロラ向かって投げてみる。


「反応、ないな?」


「落下音もないわね」


「ソレがあればなんかあんの?」


 俺の言葉に木場が同意し、所沢が小首を傾げる。


「落下音があるならこの見えない向こう側にも道があるってことよ。音が聞こえないのは隔絶された場所か、あるいは……」


「……何も無い」


 不意に光葉から漏れた言葉にゾクリとした。

 その通り、この先に、いつもの通学路は存在しないかもしれない。

 流石にソレを確かめる為に自身を使ってみる気にはならない。

 案外、この靄の外へ抜けるだけでこの不思議空間から脱出できる可能性もないではないが、確証が出来ない状態でソレを行うのは危険だろう。


「どうせなら所沢君、勇気出してこの先行ってみる?」


「嫌ですよ!」


 木場の言葉に両手で身体を抱きしめ身震いする所沢。

 あまりここに居て何かの拍子に霧の向こう側に行くことになっても嫌なので早々に場を後にする。

 こんなところで命を無駄に賭けたくは無い。


 それにしても……と俺は校舎へと視線を向ける。

 簡単な作りだ。

 校庭から垂直に一直線の校舎は四階建て。

 校舎の右に体育館が存在し、校舎の左に食堂。左後ろの所に剣道場とその右隣にプール。


 校舎内には左から購買、職員室、校長室、調理実習室などなどと一年教室の群れ。

 二階は理科室、視聴覚室、などと二年教室の群れ。

 三階は家庭科室やら開かずの教室などとともに三年教室がいくつか。

 そして四階は音楽室や宿直室、和室やら部活用の教室がいくつか。

 そして屋上には人影がちらほらここからでも見える。


 こんな校舎でこれからいつまでかもわからない生活をしなければならないのだ。

 不安もあるし恐怖もあるが、隣にいる光葉を見ると、なぜだか安心するというか、ワクワクとした不思議な昂揚感を覚える。

 非日常という状況に期待している自分がいるのかもしれない。


「それで、次は何処へ行くの?」


「ん? ああ、次は……」


 向かうのは剣道場だ。

 先程来た食堂への通路を横切り校舎裏へと向かう。

 体育館とは逆方向にある道場で、直ぐ近くにはプールが存在しており、プールと剣道場の間は不良の溜まり場としてよく使われているらしい。


 昔の先輩が書いたらしいスプレーアートは、無駄にいい出来だったために卒業生の作品としてプールの壁に描かれたままになっているのだが、誰も消そうとすることはなく、既に十年以上ここにあるらしい。

 年々アートが増えていっているらしいが、初期のアート程の傑作はまだ誰も作れておらず、不良達にとっては先輩に引けを取らないアートをすることが彼らの目標となっているらしい。


 そんな裏道に、男達が居た。

 坂東、榊、三綴の三人だ。

 彼らは剣道場の下にある窓、丁度足元が見える位置に付いている窓の一つを必死に覗いていらっしゃった。

 やはり賀田を覗きに来ていたようだ。


 俺は思わず視線を背ける。木場と目があった。

 二人揃って呆れた顔だったのは仕方ないだろう。

 ここは放置しておいていいかもしれない。


 剣道場からそっと離れて校舎裏へ。プールの左側は裏庭となっているので園芸部がソレとなく手入れしているようだ。

 この辺りは荒れ地ではあるが、園芸部が管理する場所が近くにある為、ついでに手入れをしてあるようで、耕せばこの辺も野菜畑として活用はできるだろう。

 運がいい事に園芸部の作った野菜類は普通に収穫可能な程に育っている。


「これは凄い。見てよ忌引さん!」


「……あ」


 誰かが止める暇もなく駆け寄って行き、トマトを一つもぎ取る所沢。


「ちょっとっ!? なぜ取ったの!」


「へ? いや、忌引さんに見せたくて……」


「これも貴重な食料なのよ!?」


「あ、えっと……ごめんなさい?」


 怒られている理由に行きつかなかった彼は小首をかしげながらも謝る。

 ごめんなさいで済ませられるものではない。下手をすればこの行動一つで殺し合いに発展しかねない致命的な行動だ。不良どもに見られなくて良かったな所沢。

 木場は額に手を当て呆れていた。


 このままだと他の奴らも同じような事をしそうなので俺と木場で立て札を作り、勝手に取らないように書いておく。

 どうでもいいが立て札は園芸部が作っていた木板があったので有効活用しただけだ。

 多分園芸部の人たちも無断で食べる学生がいたようで頭を悩ませていたようである。

 あまり意味はないかもしれないが注意喚起にはなるだろう。

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