立ってるフラグは死亡フラグ
「あー、そうだな。十勝、一応確認はするが、小川はお前にとってどういう存在だ?」
答えに困り、結局口先に頼ることにした。
どんな結果になろうとも、こうなったら口から出てきた自分の言葉を信じよう。
今までだってなんとか乗り切って来れたのだし。
なんやかんやで俺を蔑むような視線で見て来るのは及川と賀田だけみたいだし。
「どういう存在って……憧れ、ですよ?」
「うん。つまり、日上や中田は是が非でも小川の女になりたいと思ってるのに対し、君はミーハー感覚なんだ」
「それは、なんだか私の思いが二人より浅いと言ってますか?」
ギロリ、睨まれたせいで思わずうっと呻く。しかし気押されては居られない。一人の貞操が掛かっているのだ。
「別にそうは言ってないさ。要するに二人と君とはベクトルが違うんだ」
「ベクトル? それは、その、思いの方向性が違う、ってことですか?」
「ああ。二人は逆レイプしてでも小川の女に成れればいいと思っているんだろうけど、君は違う。そういう一発逆転の卑怯くさい手は……やめて光葉さん、その眼で俺を見ないで」
言葉の途中で光葉と木場の咎める視線が強くなったので思わず言葉を中断。
マジ許して下さい。お前が言うな感だすのマジやめて?
「と、とにかく、君が目指したいのは純愛とか、アイドルを応援する立場だと思う」
「アイドル……ですか」
「自分が選ばれれば一番ベストだけど、自分が納得できる女性と付きっているのなら素直に応援できる、違うかな?」
俺の言葉にうーんと考える十勝。結論は出たように硬い表情で頷く。
「確かに、川端さんや中田さんとは嫌だけど、牧場さんか日上さんとくっついてるのを想像したらなんか不満言いながらも応援してる自分がいました。そっか、私の思い、そういう部類なんだ……」
一人納得する十勝。
そんな彼女に言葉を被せる。
「つまり、二人と共に自分の初めて捧げても、君は後悔しかないよ。襲っての後悔は一生だけど、襲った事実を知らされて悔しがる後悔は一瞬だ。まだ清いままなら小川に嫌われることもない」
「そっか、それなら、私、才人様と今までどおりの関係で居られるんだ……」
「……これ、やっぱり洗脳じゃない?」
「のーぎるてぃ」
木場と光葉が何か小声で話してるけど気にしない方向で。
「ありがとうございます。なんかこう、すとんっと来たといいますか、気が楽になりました。中田さんたちには断りを入れておきます」
「んー。大丈夫か? 下手に返答に行ったらそのまま強制連行されるかもしれないぞ」
「そ、それは……付いて来て貰えません?」
「俺がか?」
「ぎるてぃ」
「ふふ。これはノーギルティでしょ」
待って光葉、これで罪扱いはおかしいでしょ。木場えもん助けて。
「そうね。確かに一人で告げに行けば強制連行はありそうね。トイレで告げるんでしょ。いつもそこで密談してるみたいだし、一緒に行ってあげるわ。最悪の場合は私に考えがあるから遠慮なく言って来なさい」
「木場さんが? え、ええ。ではお願いします」
少々木場が来ることに嫌悪感を滲みださせた十勝だったが、自分を助けてくれるのは理解しているので硬い表情で頷く。
しかし、なんだろうな、光葉に木場に十勝。
他のメンバーに比べても俺の周り女性が多い気が。
これは、勝ち組で、いいのか? いや、十勝は小川ハーレムの一人だから数に数えるべきじゃないか。
木場もむしろ敵と呼ぶべき存在だろうし。
「いやー。沢木さんやっぱり頼りになりますねー」
「え? そうか?」
「ただの犯罪者よ。犯罪者心理に関しては知識豊富かもしれないわね」
「お前な……」
「ふふ。確かに、犯罪者は犯罪者を知る、ですかね」
「……何も言い返せない自分がいる」
「ん」
問題なし。とばかりに同意する光葉。
十勝はクスリと笑みを浮かべ、未だに牽制し合う女性と話をしている小川達を見る。
「なんか、才人様追っかけるのも疲れちゃったなぁ……」
「しばらく休んだら良いんじゃないか」
思わず告げてしまった俺に、十勝は驚いたように眼を見開く。
「休む、ですか?」
「別に毎日オッカケする必要もないんじゃないか。疲れたら休息も有だろ、しばらく一人の時間取ってゆっくりすりゃいいんじゃね?」
「……ゆっくり、かぁ。そうなると、沢木さんの側が一番ですかねー」
「え?」
クスリ、小悪魔的に微笑む十勝に一瞬ドキッとさせられた。
改めて見ると、小柄な容姿におかっぱの髪型、揺れるアホ毛がチャームポイント。和服とか着て貰うとしっくりきそうな気がする。
座敷童子とか……げふんげふん。いや、うん。可愛らしいよなこの子。光葉襲ってなければ十勝も充分に……
「ぎるてぃ」
「ひぁ!?」
耳元で声が聞こえ、俺は思わず変な声を出してしまった。