悩める少女
「とはいえ、実を言うと理由はもう一つあります」
隣に座った十勝が溜息混じりに告げる。
ピクリ、逆隣りの光葉が反応した。
じぃっとこちらをジト目で見て来る。
なんですかね光葉さん。別にぎるてぃ案件ではないですが?
「実はですね、先程トイレに向かった際、中田さんがとある作戦を提案してきました。ええ、もちろん才人様関連です」
それを俺に告げるってことは、俺に考えてほしい何らかの状況になってるってことか。
「端的に言えば、貴方に習ってレイプしてしまおうっていう話です」
「へぁ!?」
想定外過ぎて変な声が出た。
なんだ? と周囲から注目を浴びたが、光葉が咄嗟に俺の腕に抱きついて見せたことでチッ、リア充野郎め。という視線だけで皆が視線を外す。
中田たちも十勝が何かを告げ口しているとは思いもしていないようで、すぐに小川へと振り向き川端を牽制し始める。
「ど、どういう結論でそんなことに?」
「中田さん、顔が狐目でしょう? 金持ちだけどモブ顔っていうのを気にしてまして、でも才人様を諦めることはできないそうなんです。もともと告白までしてるんですけど、才人様からは友達でいようとやんわり断られてまして、それでも諦められないからああやって取り巻きに入ってるんです」
正確に言えば、中田は初め、自分の家が金持ちだということを前面に押し出し小川に告白したようだ。
しかし、当時は幼馴染と付き合っていた小川。当然ながらお断りしたそうだ。
でも小川だったから、相手を傷付けないようにと言葉を選んだ結果、中田は友達でいよう。という言葉をまだ、友達でいよう。と解釈し、ならチャンスはまだある筈。と思ってしまったようだ。
だから日上達と共に小川のオッカケを行い、持ち前の気の強さと金を使って小川の邪魔者を排除して行っているらしい。
そのため自分が一番小川にふさわしいんだと未だに思っており、どうにか彼女になろうと必死なのだそうだ。
そこで思い至ったのが今回の策略。
俺が光葉をレイプしたことで思いついたらしい。
そもそも、この学園では警察に捕まることは無い。
つまり、小川を襲える状況になってしまえば、彼女は小川の女になれるのである。
もちろん無理矢理襲ったのだ、蔑まれはするだろう。でも、既成事実さえあればどうとでもなる。
優しいと思っている小川が自分の女になった中田を捨てるわけがない。
そう思っているからこそ行うのだ。
だが、彼女一人では小川を襲うなど出来ない。
腕力的にも敵わないし、川端の邪魔もある。
その為、彼女は策略に同じ小川の女になりたい日上と十勝を巻き込むことにしたのだ。
小川を三人で襲う。
別に日本の法律に縛られる必要などないのだから、自分が眼を瞑りさえすれば、他に何人女が出来ようが小川の女で居られるのである。
ならば、迷う必要は無い。
「決行は今夜。夕食後に才人様より早く体育倉庫に入り込み、二人が絡み疲れて眠った後」
まずは川端をガムテープでしばり、彼女の目の前で小川を三人で逆レイプ。
やってること、俺よりゲスじゃないか?
俺のことゲス男呼ばわりしながらゲス女になり下がるのかよ。マジ下衆だな。
「正直、私も才人様の彼女になれるのならなりたいんです。でも、強制的に襲うのは、何か違うんじゃないかなって、思うんですよね」
「それは俺に対する嫌味かね」
「い、いえ、そうではなく、ですね。私は、どうしたらいいのでしょう? 中田さん達と一緒に処女を捧げてしまっていいのでしょうか? でも、後悔すると思うんです。けれど、参加しなくても後悔すると思うんです」
参加すれば、小川からは絶対的な嫌悪を向けられるだろう。参加しなければ、処女を小川に捧げた中田に自慢され、自分だけ参加せず、小川の女になれなかったとみじめな気持になるだろう。
だから彼女は相談することにした。
ぴしゃりと断罪して来そうな木場を避け、同じ間違いを犯した俺に相談を持って来たのだそうだ。
まぁ、木場なら規範を守るように言うだろうな。
すなわち彼女の参加を止めさせ、自分が乗り込み逆レイプを阻止しようと動くだろう。
それはそれで十勝が中田と日上の恨みを買うだろう。
さて、十勝はどうしたらいいか。
別に俺としてはどうでもいいが、頼られた上に隣からどうするつもり。という木場と光葉の視線が俺に注視されているので下手な返答はすべきじゃない。
「そうだな……」
参加してしまえと言うべきか。
しかしソレを告げると木場が何か言ってきそうなんだよな。
参加するなと強く言っても、それはそれでお前が言うなって話になるし。
これは困った。そもそも俺に来るべき相談じゃないだろう。
どうして俺なんだよ。
光葉さん、コレどうしたらいいですかね? え、自分で考えろ? ですよねー。