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暴露3

「えーっと、まぁ、なんだ。沢木については忌引さんが居れば問題ないってこと……かな?」


「あ、ああ。俺は光葉を襲った事は事実だ。だから責任とって添い遂げるつもりだよ。責任っていうよりは本気だけどな」


 坂東の上ずった声に俺も上ずった声で告げる。

 光葉はどうやらヤンデレだったようだ。

 浮気、ダメ、ゼッタイ。


「……皆、どうかしら?」

「ど、どうって言われても……今まで通りでいいような? ね、沢木君、忌引さん」

「うん。修君と一緒」

「まぁ、本人が良いって言うなら、俺がどうこう言える筋合いはねェな。明奈を救って貰った恩もある、ちょっと恩とは言い難いが……」

「私、何か変?」

「……いや明奈は変じゃねぇ」

「私は、危険だと思うけど……天使は?」

「私も危険だとは思う。しかし、沢木とて自分が死にたくは無いだろう。だから監禁する必要は無いと思う、それに、それをしたら今度は忌引さんが暴走しそうだな」

「それは確かにありえますわね」

「じゃあ沢木君については不問。当事者同士で既に決着付いてるからよしってこと?」

「ゲス男はどこまで行ってもゲス男だと思うけど?」

「……そうね。では沢木君、忌引さん。引き続き監視だけさせて貰うわ。いいかしら?」


 木場のまとめに光葉が頷く。

 これはもう頷くしかない雰囲気だな。

 光葉の爆弾発言の御蔭で一応監禁エンドは回避されたか。


「じゃあ寝場所は……図書室でいいのかしら?」

「まぁ、そうなるかな。ここは女性陣に占拠されたし」

「だから占拠した訳じゃないって言ってるじゃないゲス男」

「いや、こんだけ女性が大挙してりゃ男は逃げるしかねーんじゃね?」

「何か言った坂東?」

「イエ、ナンデモアリマセン」

「そうだわ。井筒さんたちもここに寝泊まりした方がよさそうね」

「え? 私達も? なんで?」

「三綴君が見つかるまでよ、寝込みを襲われたら嫌でしょ? ここなら他のメンバーが居るから問題は無いわ」

「で、でも……」

「今日は我慢した方が良さそうだな玲菜」

「うきゅん……」

「仕方ないわね。中田さん、それでいい?」

「……ええ。布団は使ってくれていいわよ」


 ……ん? なんだ今の顔。

 中田の奴何か思案するような顔してやがったぞ?

 あいつ、何かするつもりか?


 まぁ、俺に関係なければ問題は無いか。

 俺は光葉を見る。

 にこやかな笑みに眼を細めた彼女と眼が合った。

 ああ、俺、きっとこいつからはもう、逃れられないんだなぁ。




「そん……な……」


 そいつは宿直室前の廊下に居た。

 ドア近くの壁に背もたれ、内部の会話に聞き耳を立てていたのだ。

 力無く、その場に座り込む。


 両手の平で顔を押さえ、指先で顔を掻きむしるように、絶望する。

 声を出す訳にはいかなかった。

 真実を知ったことを知られる訳にもいかなかった。


 沢木修一が忌引光葉をレイプした。

 その事実を知ってしまった。

 だから彼は絶望する。


 大好きだったのだ。

 側で見ているだけで良かったのだ。

 大切な人だったのだ。


 奪われた……

 奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われた奪われたっ。


「ああ、僕は、どうしたら……」


 沢木を殺す?

 激情のままならそれでいい。

 だが、どう殺す? 殺して忌引さんが悲しむのを見たいのか?


 殺人が分かれば自分にも死が待っている。

 死んだら彼女を守れない。

 どうする。どうすればいい?


 そうだ。僕があいつを殺して、忌引さんを守るんだ。

 守って犯してあいつみたいに惚れさせ……

 違う、そうじゃない。そんなことしちゃいけない。

 僕はあいつとは違う。

 あいつのようにレイプなんてしない。

 忌引さんを泣かせたりする訳が無い。


 ああ、どうしたらいい?

 こんなことなら知りたくなかった。

 こんな場所に来なければ良かった。

 あいつの秘密を暴かなければ、こんな思いにはならなかったのに。


 どうしたら? どうしたら。どうしたらっ!!

 頭をかきむしる。両手で思い切り。

 頭に痛みが走る。血が爪に付いていた。


 クソ、頭が痛い。心が痛い。全てが痛い。

 沢木だ。沢木が居たからっ。

 あいつさえいなければ僕がっ。

 違う、いや、違わない。

 あいつが邪魔だ。僕と忌引さんの為にも、あいつが、邪魔なんだ。


 ただ、殺すだけじゃだめだ。

 徹底的に潰さないと。

 どうしたらいいのかまだ分からない。だから、今が見逃す。

 好機を伺え、方法を考えろ。

 待っていて忌引さん。僕が、僕が救ってあげるから……


 ゆっくりと、力無く彼は立ち上がる。

 ゆらり、幽鬼のような足取りで、彼は静かにその場を離れた。

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