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解散

 三綴が消えた。そして大河内と思しき人物の目撃証言も消えてしまった。


「ちなみに木場、ここに三綴居たりはしないか?」


「隠れられるような場所なんて厨房だけでしょ。あのズンドウの中くらいじゃない?」


 木場が示したのは思い切り縮こまれば入れなくはなさそうなパスタ茹でる大型のズンドウ。当然ながら蓋が開いているので丸見えである。


「他は?」


「一応及川さんと探してみたけどここにも居ないわね」


「マジかよ。あいつ消えちまったのか?」


「やめてよ神隠しとか、この箱庭でそんなの起こったらほぼ確実に全滅じゃない」


 足立の言葉に原が反論する。

 足立は頭を掻いて困ったような顔をする。


「こっち来てから気が休まる時っつーのが無い気がすんな」


「ほんと、毎日トラブルだらけよね。まだ三日なのに」


「しかし、もう三日か。未だに脱出できそうな場所は見つからんな」


 そっちも気になるところだ。どうにかこの世界から脱出して元の世界に戻ることは出来ないのだろうか?

 まさか蠱毒空間? 最後の一人だけが出られる場所だったり?

 あるいはこれは死後の世界で、しばらく生き残っていれば三綴みたいに消えるようにして元の世界に覚醒できるとか?

 さすがにそれはないか。


「とりあえず、三綴君が居ないのは気になるけど、皆落ち付きたいのもあるでしょうし、自由行動にしましょうか?」


「まぁ、それがいいな。ここにずっと居る訳にもいかねぇし」


「三綴君が来るかもしれないからそっちの三人は私達女性陣と合流した方がいいかもしれないわね」


「えう!?」


「やはりその方がいいだろうか?」


「え? え? でも天ちゃん……それだと……」


「それは後で考えよう玲菜。清音が戻ってからでも……そう言えば清音が戻って来ないな」


「う○こやってんだろー」


「あら、はしたないこと言わないでくれる?」


「ぎ、ぎゃああああああああああああああああああああああああっ!?」


 坂東が悪戯顔で告げた瞬間、ぬっとあらわれた及川が彼の背後から告げる。

 当然、坂東の汚い悲鳴が轟いた。


「戻ってきたか及川」


「ええ。久々のお通じだったわ」


「結局合ってんじゃねーか。うぅ、言うんじゃなかった想像しちまった……」


「坂東、サイテーね」


「うっせぇゴリ川」


「それじゃあ解散しましょうか」


 木場が纏めるように告げると、皆が思い思いに立ち上がる。

 まずは足立と田淵が席を立ち颯爽と食堂を出て行く。

 おそらく保健室に籠るつもりだろう。


「才人、私達も」


「そうだな。じゃあ体育倉庫使わせて貰うよ」


「くぅ、あんまり声出すなよ。体育館まで響くんだからなっ」


「気を付けるよ」


 小川が立ち去り、川端も付いて行く。

 十勝、中田、日上がソレを哀しそうな目で見送っていた。


「山田、どうする? 僕は和室でゲームしとくけど」

「拙者は三綴を捜索する。適当な場所で寝るから放っておいてくれ」

「う、うむ……ゲーム仲間が一気に減ってしまったな……壱岐氏、よかったら和室来ないか」

「え? 僕? ……まぁいいけど。体育館よりは寝られそうだ」

「寝るまでなら私も相手したげるわよ。どうせゲームしてるだけでしょ烈人」

「うむ。ゲーム仲間は多い方がいい。是非来てくれ原氏」


 ……んん? なんか今一瞬違和感が。原の奴、貝塚の名前呼んだ?


「じゃあ沢木君、行きましょうか」

「宿直室だっけ? ここじゃなくていいのか?」

「私は別に構わないけど?」

「……あまり皆には告げない方がいいことか……分かった宿直室に行こう」

「ん」

「あれ? 忌引さんたちどこ行くの?」

「なに所沢君、私達は宿直室に戻るだけよ?」

「そ、そうなの? でも十勝さんたちも井筒さんたちも、一緒じゃないか。女性陣がなんで皆宿直室に……」

「ああ、俺と光葉の宿直室な、女性陣に侵略されたんだ」

「人聞きの悪い。貴方が譲ってくれただけじゃない」


 どの口が言う木場。

 俺に拒否権なかったじゃないか。

 って、いつの間にか大門寺と最上が居なくなってるじゃないか。


 所沢を一人残して俺たちはぞろぞろと食堂を後にする。

 ああ、坂東も残ってたな。どうする気だあの二人?

 まぁ俺には関係ないか。


「オイ待ってくれ、お、俺も一緒に行くぜ」


「え? 坂東君も来るの?」


「べ、別にいいだろ。寝るときは和室だっけ、そっち行くからさ」


 ああ体育館から移動するつもりか。

 よっぽど昨日が酷かったんだな。

 という訳で、坂東も飛び入り参加し、所沢一人を残して俺たちは宿直室へと向かうのだった。

 果たしてこいつ等全員に木場の話を聞かせていいものか、なんかこう、嫌な予感しかしないんだよな。


 そして俺が行った嫌な予感に繋がる行為なんて一つしかない。

 隣の光葉に視線を向ける。

 優しげに微笑む彼女の瞳に、腹を括るしかなさそうだと気合いを入れる俺だった。

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