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三綴捜索4

「あら? 十勝さん、なんでまたそこに? まだ椅子は空いてるでしょ?」


 木場も疑問に思ったようで、探るように聞いて来た。

 俺の隣に座った十勝は、ん? と一瞬考える様子を浮かべた後、頬を掻きながら応える。


「あはは。やっぱり一人きりで座るのはちょっと勇気が要りますし、他に開いてるのは大門寺さんの横か原さんの横でしょそれを考えたら……ここがマシかなぁっと」


 オイコラ、マシとか言うな。なんだその余ったからコレ選びますみたいな答えは。


「ふふ、良かったわね沢木君、両手に花よ」


「お前絶対楽しんでるだろ」


 木場は心外だとでもいうように眼を見開き驚く。

 いちいちムカツク表情だなオイ。


「心外だわ。素直にモテてるのねぇーと驚いているだけなのよ。本当は酷い人なのに、ねぇ?」


 ゾクリ。

 一瞬、俺に向けた木場の視線が殺意にも似た威圧を発した気がした。


「報告会が終わったら宿直室に来てくれる?」


「なんで……だ?」


「確認しておきたいことがあるの。ええ、確認しておかなきゃ、いけないことよ」


 不敵に微笑む木場に戦慄を覚える。

 まさか、いや、そんな筈は……


「あの……」


「ああ、大丈夫、貴女もきっと関係あるから、一緒に来て貰っていいわよ」


 光葉が遠慮がちに声を掛けると、先んじて木場が伝える。

 その言葉を聞くと、不安そうな顔から一転、光葉は「ん」と満足げに頷いた。


「何の話ですか? 私もご一緒していいですか?」


「ええ、別にいいけど……あまり良い話じゃないわよ」


「でも木場さんの話ならば聞く価値はありそうね。私もご一緒しても?」


「清りんが行くなら一緒するー」


「まぁ、暇だしそちらの話でも聞こうか。私達は大勢と一緒の方が今は良さそうだしな」


 なぜか及川が参加表明。

 それに気付いた井筒と賀田も近づいて来た。


「別に私は構わないけど……いいのかしら、沢木君」


 そこで俺に来るのかよ。

 だが、何か嫌な気配がするな。

 背中を嫌な虫が這いまわっている気分だ。

 返事に迷っていると、そっと光葉が俺の手を握ってきた。


「っ、ああ、別に構わないよ」


 私が居るから大丈夫。

 そんな言葉を伝えられた気がして、気付いた時には了承の意を伝えていた。

 否定しなかったことを後悔しそうな気もするが、頷いてしまったからには覚悟を決めよう。

 一体、あまり良い話ではない話とは何なのだろうか?


「おう、戻ったぞ」


 声と共に足立、田淵、田中の三名、そしてその後ろから坂東、所沢、壱岐が戻ってくる。


「ちょっと、やっぱおかしいっしょ。何で俺らだけ男所帯なんだよ!?」


「ふっ。いいじゃない二人とも可愛らしい男の子なんだから。両手に花だったでしょ」


「やめろよ田淵。俺にそっちの気はないっちゅーの」


 足立と田淵が隣り合って座り、田中が十勝の隣に座る。

 壱岐は空いていた腹の隣に、所沢は迷った結果壱岐の横に、その横に坂東が座る。

 結局お前ら隣り合うのかよ。


「ああ、やっぱり、俺達が最後か」


 遅れ、小川、川端、日上の三人が戻ってくる。

 裏庭と剣道場、プールを捜索していたから時間が掛かったようだ。


「全く、貴女達は本当に邪魔して来るわね」


「あら、別に邪魔などしていませんわよ。ねぇ才人さん」


「ああ。日上は良く動いてくれて助かったよ。むしろ俺たちの方がお邪魔なんじゃ無いかと思ったくらいだ」


「あら、才人さんが動くほどの手間ではなかったのですから構いませんわ。もしも何かしらの褒章をいただけるのであれば口付けの一つでもあれば」


「あ、はは。彼女に怒られるからそれはできないかなぁ」


 クソ、罪作りな奴め。

 気付いてない小川は頭を掻きながら断る。

 それに気にしてない表情で残念ですわ。と答える日上、ニタリと黒い笑みを浮かべる川端に一瞬殺意の視線を送る。


 中田と十勝もジロリと川端を一睨み。

 火花が散った気がしたが、今のところは川端の完全勝利状態だ。どうやって小川から川端を引き剥がすか、三人は無い知恵絞って考えるのだろう。

 女って怖い。


「御免なさい、今のうちにトイレに行ってきていいかしら」

「ゴリ川、報告とか言いからさっさと行って来い。うえぇ想像しちまったじゃねーか」

「それで、誰か三綴見付けたか?」

「いや、剣道場にもプールにも居なかったよ」

「前庭と体育館も居なかったな。校庭には隠れるところなんざねーし、校舎内じゃねーの?」

「けど一階には居なかったぞ。山田は居たけど」

「二階も居なかったな。榊は居たが」

「三階も見ていないぞ」

「四階もだ」


 報告を受けて俺たちは考え込む。

 屋上は俺達が居たし、探せる場所は全部探したつもりだ。


「部室棟はどうだった?」

「剣道場の裏にある奴か。駄目だ。虹の奥だから手出しが出来なかったよ。同じ理由で野球部のプレハブ小屋も確認はできなかった」

「虹の先に向かったとか?」

「それはないだろ。あいつだって流石に未知の危険しかない場所に向かう程自殺志願じゃねーはずだ」


 この箱庭のような学校から、三綴が消えた。

 全ての場所を探したが見つからない。

 俺たちは小首をかしげならが可能性を指し示すが、どれも有効そうな話には繋がらなかった。

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