表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/246

三綴捜索3

 購買倉庫に来た時だった。

 がさごそと音がして、誰か先客がいるらしい。デカい尻を向けて何かを探している様子だったので、背後から近づいた俺達には気付いてないようだ。


「何してんだ……山田?」


「おっほぅ!?」


 びっくーんと飛び跳ねた山田が慌ててこちらを振り向く。手にはスパナ? を持ち戦闘態勢。

 が、俺たちだと気付いて慌ててスパナを隠した。


「な、なんだ君たちか」


「何してんだよこんなとこで」


「ふん。仇打ちの準備に決まってるだろ。拙者、初めて添い遂げたいと思った女だったのだ。殺した奴は絶対に許さん」


「事故かもしれないだろ? ゲーム見ていて足滑らせたとかさ」


「沢木だって気付いているのだろう。あの体勢は自殺じゃない。背中から落ちて首を折ってるんだ。何かから逃げようと屋上に向かって、背後から引っ張られた。そんな死に方だった」


 山田の奴的確に見てるな。

 俺もそう思った。あの死に様は他殺だ。事故ではまずあり得ない死に方だった。

 まぁ忘れものに気付いて戻ろうとして落下事故。の可能性はあるかもしれないが、状況的にそれもあり得ないだろう。


「三綴か大河内の亡霊か。見付け次第殺してやるっ」


「いや、亡霊は殺せないだろ。……じゃなくて、あんまり根詰めるなよ」


 今は気が立ってるだけだろうが、三綴見付けたら何するか分からない。落ち付くように伝えて周囲を見回す。


「それで、三人は何故ここに? 購買倉庫の物品を取りに来た様子でもなさそうだが?」


「ああ、三綴が居ないんだよ。今皆で手分けして探してるんだ」


「三綴か。見付けたら殺害報告してやるよ」


「いや、殺すなよ。落ち付け、まだ三綴がヤッたと決まった訳じゃないだろ」


「それはそうだが……」


 押さえが効かんとばかりに憤る山田。こいつも爆弾化しちまったらしい。

 ヤバいな、日を追うごとに爆弾が増えて行ってる感じがする。


「とりあえず、一通り探したら皆食堂に集まることになってるからさ、良かったら来てくれ」


「……今は皆で騒ぐのは遠慮したいのだが……三綴が居るかもしれないならば行く価値はあるな。同行しよう」


 あ、今来るのか……

 ちょっと後悔したが山田が強制的に同行してきた。

 調べる部屋も無かったのでそのまま食堂へと向かうことにする。


 食堂にやってくると、丁度食器を洗い終えたらしい及川と木場が休憩のために椅子に座っていたところだった。

 木場は自販機から紙パックのいちごミルクを買って飲んでいる。

 俺たちに気付いた二人の視線が山田に向かった。


「「山田君?」」


「むぅ、なんだ? 来たら悪いのか」


「いえ、一人になりたいって言っていたから」


「ええ。驚いただけよ」


 二人の近くに俺たちは移動し、井筒が及川の隣に座る。

 俺たちは適当に空いた椅子に座った。俺は当然光葉の隣だ。

 そしてそれを見た木場が何故か光葉の隣に座ってくる謎。


「それで、三綴君は?」


「一階には居なかったな」


 簡潔な説明に「そう」とどうでもよさそうに呟き、木場は話題を変えて来た。


「それで、実際のところどう思う?」


「何の話だ?」


「大河内の亡霊」


 確かにそれは気になるところだ。

 目撃者はかなりいる。大河内本人か、本当に幽霊か、あるいは大河内が生きていると見せ掛けたい誰かが成り済ましているのか。


「実際に見てないからなぁ、何とも」


 ただ、死体が見つかっていないのが気になるところだ。


「玲菜達が先だったか」


 考え込んでいると、賀田、大門寺、最上が戻って来た。


「あら、お帰りなさい天使。どうだった?」


「三綴は二階には居なかったよ。ああ、でも理科準備室に榊が逃げ込んでたぞ」


「異常な怯え具合だ。ホルマリン漬けの蛙とかがある理科準備室に籠らんでも良かろうに」


「アイツ何考えてんだ? 逃げるにしても場所考えろよ……」


 溜息しか出て来ない。榊が逃げ込んだ先は多分かなり不気味な雰囲気しかない理科準備室。早々音をあげるだろうことは想像に難くない。


「戻ったぞー」


 雑談を始めていると、三階探索部隊である貝塚と原、十勝が戻ってきた。


「もー、なんで私がこの二人となんですかー。って、やだ、まだ才人様帰って来てない」


「十勝氏、僕と一緒にいるのが不満なのは分かるがそう言うことは本人の前で言わないでくれまいか、地味に傷付くのだが」


「あ、ごめんなさい。でもほら、蔭口叩くよりはいいかなぁっと」


 そんな事をいいながら十勝は周囲を見回し、うーんと唸った後俺の隣に座って来た。

 ちなみに貝塚と原は隣り合って賀田の隣に座る。


「どうでしたか沢木さん」


「ああ、こっちは進展なし。購買倉庫で山田を見付けて連れて来たくらいだ」


「あはは、やっぱり居ませんでしたか。三階も居ませんでした。徒労ですよ徒労。しかもあの二人、なんか普通にゲームの話で盛り上がりまくってるんです。なんかこう、カップルと一緒に帰ってる気分を味わいました」


 うんざりした顔で息を吐く十勝。それは良いんだが何故俺にそれを報告したのか理解できません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ