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三綴捜索2

「んー、見当たらないねー」


 突き当りの体育館へ向う教室から順に覗いて行く。

 女子トイレも男子トイレも一応危険があるかもということで三人で見て回る。


「……トイレ、行きたい」


「ああ、外で待ってるよ」


「ごゆっくりー」


 光葉が恥ずかしそうに言って来た。

 俺は紳士的に対応したつもりなのだが、こんな感じでよかっただろうか?

 光葉がトイレを終わるまで、俺と井筒の二人で待つ。


「そう言えば井筒さん」


「ん? なにかな?」


「井筒さんエッチなんだっけ」


「はぅ!?」


 顔を赤らめる井筒。しかしすぐにバツの悪そうな顔をする。


「ま、まぁねー。そ、それが何?」


「いや、三綴に脅されるようなことになったからさ、その辺はちゃんと皆に把握させて誰にでも相談出来るようにしといた方がいいのかな、と。他の奴らにも性癖はあるだろうし、この隔離された世界だと欲求不満は危険だからさ」


「あー。他の人かぁ。そう言えば天ちゃん、私に付き合ってくれはしたけど、天ちゃんの欲求不満、大丈夫かなぁ?」


「まぁ、もしもヤバい感じの事が起こったら相談乗るよ」


「あは、ありがと。そうだねー、天ちゃんが処理してくれなくなったら沢木君に頼んじゃおうかなァ」


 ふふっと小悪魔的な笑みを向けながら俺にくっついて来る井筒。

 あれ、コレもしかして、少し攻めればヤれちゃう感じ?

 井筒の胸が腕を挟んで、こう、ヤバい、理性が……


「ぎるてぃ?」


「ひぅっ!?」


 背中から物凄い殺気が飛んできた気がした。

 びくんっと背筋を駆け抜ける毛虫の群れ。

 油の切れた機械のように振り向けば、トイレを終えた光葉様がジト目で俺を見つめていた。


「の、ノーギルティ!」


「ふふふ、沢木君がね、欲求不満が爆発しないように全員の性癖把握した方がいいかもって話してたんだよ」


「そう……沢木君の性癖……レイプ?」


 ぎゃああああああああああああああああ!?


「え? レイ……」


 一瞬目を丸くした井筒が俺に視線を向ける。

 マズい、いろんな意味でマズいぞ!?

 否定だ、早く否定しなきゃ……


「くふふ。沢木君がレイプするとか、そんな度胸あるように見えないよー」


「あ、あはは」


「ぎるてぃ」


「ちょ、今のは違うでしょ!?」


 むーっと膨れるような光葉。あんまり井筒とくっついてるとさらに誤解をというか、何かそのままヤンデレ化した光葉に刺されそうなので井筒を優しく離す。


「あはは。忌引さん可愛い。沢木君が忌引さんと付き合うの分かる気がするなぁ。私もお持ち帰りしたいし」


「えぅ!?」


 ジト目から一転、顔を赤らめ恥ずかしがる光葉。

 このままここに居てもなんか自爆しかしそうに無いので二人を促し特別教室へと向かう。

 まずは調理実習室。家庭科室と違うのは、家庭科室ではミシンなども取り扱っているのに対し、ここは料理オンリー。というのも、料理部が家庭科室を最初使っていたのだが、その次の日に匂いが籠っているせいで、家庭科の授業が疎かになると家庭科の先生が校長に直訴したらしい。

 結果、校舎を新しくする際家庭科室と調理実習室を分けて作ったのだが、空き教室でガス引けそうなのが職員室のお隣だというここくらいしかなく、仕方無く二階に家庭科室、一階に調理実習室が出来上がった。


 その名残として家庭科室に包丁などの備品が置かれたままになっている。

 家庭科の授業では家庭科室で料理作るようで、調理実習室を使うのは殆ど料理部だけであった。そのため料理実習室は料理部でカギを管理しているらしい。


 とりあえず、ここに三綴は居なかったのでさっさと次へ。

 職員室。うん、いない。

 校長室。一部の床がシミになっている。見なかったことにして次へ。

 最後に購買部。そう言えばいろいろ選んでいたけどアレ全部宿直室だ。どうしよう。


「んー。あ、飴玉発見!」


「そう言えば皆で飴分けるとか言ってたな。どうする?」


「んー、今ならわからないよねー。はむっ」


 俺達が止める間もなく飴を一つ自分の口に放り込む井筒。


「にへへ。イチゴ味」


「皆で分けるのに……」


「そう言わないでよー、えい」


 忘れていた。井筒はつまみ食いの常習犯だ。飴なんていう食べ物見付けたらそりゃつまみ食いするよな。と思っていた俺の口に飴玉が放り込まれた。

 オレンジ味だ。

 俺が眼を白黒させていると、続けざまに光葉の口に飴玉を放り込む井筒。

 抗議しようとしていた光葉の顔が仏様みたいに穏やかになった。

 やっぱり光葉はチョロインだ。


「マスカット……」


 光葉の飴はマスカットらしい。

 って、こら井筒、どさくさまぎれにポケットに鷲掴んだ飴を入れないっ。


「あ、あれ? 駄目?」


「流石にそれは駄目だろ。おやつは三つまでとします」


「えー、バナナ味はおやつに含まれますか!?」


「含むので三つまでです」


 ちぇーっと井筒が適当に三つ選んでポケットに突っ込んだ。

 本当に堪え症の無い子だなこの子。

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