三綴捜索1
「えー、という訳で、皆さん食事取りながら聞いてください」
食事に集まった皆に、俺が代表して告げる。
何で俺が言わねばならんのだ。木場さん変わってくれません?
今ここに居るのは小川、川端、十勝、中田、大門寺、足立、田淵、最上、貝塚、原、坂東、及川、賀田、井筒、俺、光葉、所沢、壱岐、木場、日上と行ったメンバーだ。
山田と榊は食事要らないってことでここには来てない。
多分榊は明日一日は部屋から出て来ないだろう。
山田は……とりあえず貝塚が何とかしてみるってことなのでしばらく放置の方向で。
「最後に賀田が会ってから三綴の姿見た人ー」
皆が顔を見合すけれど、三綴の姿は見てないそうだ。
「なんだよ、あいつもしかして大河内のコスプレして校内徘徊してんじゃねーか」
「はは、そんなバカな……」
「んーでも姿が見えないってのは気になるなぁ」
「脅されたのにか玲菜?」
「違うよぉ天ちゃん。脅されたから姿見えないのが怖いんだよ」
「それは確かに。不気味ではあるわね」
「でっしょ清りん」
「でもただ逃げてるだけなんじゃないの?」
「それでも校内は狭いでしょ原さん。どこにも見掛けないってのはおかしいわ。だから、食事の後に一応所在確認だけはしときましょうって話になったの。ダメかしら?」
あ、結局木場に持ってかれた。俺の提案が見事に掻っ攫われた気がする。
「なるほど、確かに生存確認は必要か」
「ちょ、小川。居場所の確認だぜ? 生存確認って、死んでる可能性あるってことじゃねーか」
「けど、姿が見えないんだろ? 既に死んでる可能性は否定できないだろ。何しろ、次は四班なんだからさ」
小川の言葉で戦慄が走った。
皆疑いもしていない。次に殺人者と被害者が出るのは四班だ。それを確実だと信じてしまっている。
そんなの偶然だと、声を荒げて言う奴は既に居ない。
皆がうすうす予感しているのだ。明日は、四班で死者が出ると。
「いや、やっぱ生存確認じゃないな。明日までは命があるかもしれないし」
「明日までは……ねぇ、まるで明日三綴君が死ぬって言いたげね小川君」
「聞いた話じゃ賀田さんと井筒さんに脅しを掛けてたんだろ? ならその口封じに殺される可能性はある」
「ええ!? 私殺さないよ!?」
「他にも坂東や榊が賀田さんに脅しを掛けやがってと殺す可能性もある」
「いやいや、流石に殺しはしねぇって。最悪足立アニキに殴って貰う位?」
「何で俺なんだよ?」
「いや、大門寺さんの手を煩わせる程じゃないし、強いっていえば、なぁ沢木?」
「俺に振んな」
「で、でもほら、才人様の話は仮定の話ですし」
「まぁなぁ。つか怪しさなら生存確認とか言って既に死んでる仮定で話しだした小川も怪しいっちゃ怪しいしなぁ」
「足立君、流石に俺は殺人しないぞ。それに四班じゃないし」
「そこは四班だと思わせておいて犯人はっつー奴だろ」
足立の言葉に小川が足立を睨みつける。「ンだよ?」と睨みかえす足立。
雰囲気が悪くなったことを察して井筒が「まぁまぁまぁ」と両手を開いて仲裁を始める。
「仮定の話で敵対しても意味無いだろ。それで、捜索班に付いてなんだけど、男子を必ず班内に入れて捜索しようと思うんだ」
「必ず? なんでさ?」
「一応三綴は女性狙ってる訳だしな、女性だけの場合だと逆に襲われる場合がある。肉の壁は必要だろ?」
「ちょ、俺に肉の壁になれと!?」
「男だろ、いざという時女の子守る位しとこうか」
「マジかよ……見付かんなよ、三綴マジ見付かんな」
「あ、あはは……」
変な祈りを始めた坂東を放置して、俺たちは探索班を決めていく。
小川、川端、日上の三人、大門寺、最上、賀田の三人、足立、田淵、中田の三人、貝塚、原、十勝の三人、俺、光葉、井筒の三人そして坂東、木場、及川、所沢、壱岐が余った。
「それだったら私は食器を洗っているわ」
「おお、じゃあ木場と二人か」
「あら、一人じゃ大変でしょ。私も食器洗いに参加するわ」
「え? あの、俺……」
そして坂東、所沢、壱岐の男だけのチームが結成された。
頑張れ坂東。負けるな坂東。その二人なら間違い起こしても誰も咎めはしないぞ!
「じゃ、じゃあ探しに行くけど、本当にいいの?」
「ええ。気を付けて行ってらっしゃい玲菜、天使」
食器洗いの為に残った及川と木場が早速片づけを始める。
そんな二人に別れを告げて、俺たちは探索に向かうのだった。
とりあえず六チームいるので校舎一階づつと前庭、裏庭班に分かれて探す。
俺達三人は一階の探索に割り振られた。
ちなみに四階は坂東、所沢、壱岐、三階は貝塚、原、十勝、二階は大門寺、最上、賀田が探索し、前庭と体育館を足立、田淵、中田、裏庭と剣道場、プールなどを小川、川端、日上が請け負った。
小川チームが一番探索場所が多い気がするんだけど、これは小川が立候補したからなぁ。
本人いわく、少しは皆の役に立ちたいんだそうだ。