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第三の真相3

「結局、あんたも友達売るんじゃん」


 原の話が終わると、どうでもいいように篠崎が告げる。

 確かに売ると言えば売ったともいえるんだけど、そもそもな話お前が殺人を犯してなければ問題は無い筈なんだが?


「で? 篠崎、お前からはどうだ?」


「どうって? どういうことよ沢木」


「二人の話に加えて自身で証言することは無いのか? 言い訳とか、嘘で逃げるとか」


「何でもいいわ。私と沢木君が嘘だろうが隠された真実だろうが暴いてあげる」


 待て木場。俺を仲間に引き込むな。なんかもったいぶって真実に近づこうとするとか死亡フラグにしか見えないぞ。


「はぁ。面倒臭い」


 溜息を吐いて篠崎はゲームを再開する。


「はいはい、私ですよー。御堂も足立も殺しましたー」


 どうでもいい事を告げるように篠崎は告げる。

 始め、何を言われたか理解できずに皆がぽかんとした顔をした。

 まさか自分から告白して来るとは思わなかったのだ。


「え? 認めるの?」


「別に隠すことじゃないし? 御堂の奴ヤるだけヤってレアキャラはまた今度とか言って来やがったから殴ってゲーム機奪っただけだし? 通信しようとしたら邪魔して来たから気絶するまで殴って、したらゲーム機ひしゃげてゲームできないじゃん。どうせならレアキャラ一杯の御堂の貰っちゃえばいいかってゲーム機替えただけよ」


 そして凶器に使って使えなかった赤のカセットはゲーム機ごと血溜まりに捨てられた。

 気絶のつもりだったがそのトドメで彼の命まで奪ってしまったのだろう。


「足立もさぁ、一回のみじゃなく何度もヤりたかったみたいでさぁ、なんかもーメンドくなって、とりあえずゲーム機貰って御堂のゲームから足立のゲーム機に通信でレアキャラ移動させたのよね。んで、足立が邪魔だから御堂のゲーム機で思っきし殴ったのよ。いやー、まさかアレくらいで死ぬとか思わなかったし。つか私に迷惑だから死ぬなっつーの」


「お、お前……ゲームの為に人殺したのか……?」


「え? まぁ、そうなんのかな? だってレアキャラ欲しかったし。あいつら等価交換だっつーのに出し渋ンだもん。しゃーないっしょ」


 篠崎はそう告げながら歩きだす。

 皆が自殺するつもりだと思った彼女の行動だったが、篠崎が向かったのは屋上の入り口だった。


「お、お前、死ぬんじゃないのか!?」


「はぁ? 何言ってんの榊。殺人しましたから死にますとか殊勝に自殺しろって? バッカじゃねーの? 私が死ぬ訳ないじゃん。ゲームやるっつーの。ああ、私はもうゲームしてるだけであんたらの邪魔しねーから。食事以外放っといて」


 じゃあねー。と背中越しに手だけ振って階段を下りていく。


「おい、おいっ、良いのかよアレ!?」

「いいというか……え? 本当に篠崎さんが二人を殺したの?」

「ちょ、ちょっと待って、今私混乱してるのだけど……」

「大門寺サン、いいんすか?」

「奴が殺人犯なのは確からしいが、俺たちに害が無さそうなのも確か……か」

「え? いいの?」

「沢木、木場、ど、どうすんだよアレ?」


 どうすると言われても……

 確かに篠崎の言う通り、犯人が分かったからって犯人に自殺してくれと言えるわけがない。

 それは自殺強要、自殺幇助。ただの犯罪だ。

 大河内の呪いとでも言うべき思考判断の麻痺に俺たちは陥っていたらしい。

 犯人は犯行がばれれば自殺するのが当然だ、なんて考えは、持つべきじゃな……い……?


「な、何よあんた!? なんでここにっ」


 ……なんだ?


「嫌、止めてッ、来んなっ、おおこ……いやあああああああああああああああああっ」


 なん……だ?

 屋上に向かうための階段。姿の見えない篠崎の声が響き、何かがごろごろと転がり落ちる音が聞こえた。

 どさり、聞こえた音に俺たちは戦慄する。


「……行くぞ」


 ぐいと襟首が掴まれる。

 俺は大門寺に引っ掴まれ、大門寺が走りだす。

 だから、なんで俺までっ!?


 大門寺に連れられて階段へと向かう。

 階段上に辿り着くと、階下に倒れた人影一つ。

 側には壊れたゲーム機が無情な戦闘音を立てていた。


「篠……崎?」


「嘘、美哉!?」


「美哉っ!!」


 階段上で呆然としていた俺達を押しのけ、原と山田が駆け降りる。

 倒れた篠崎に原が呼びかけ、山田が身体を起こし抱きしめる。

 山田はどれだけ篠崎好きなんだよ。ストーカー化しちまってるんじゃないか?


「チッ。駄目だ。首の骨が折れてる」


「ゲームしたまま降りたから足を踏み外したのか?」


「いや、それにしては事前の声がおかしかったわ。それに、落下したのは後頭部から、どんな落ち方したら前向いた状態から後頭部から落下するのかしら?」


 俺の呟きに遅れてやってきた木場が答える。

 背後から掛かった声だったので思わず声が出そうになった。

 だが、確かにまるで誰かを見付けて逃げようとしているような声だった。

 屋上に居なかったのは……三綴だけだ。

 まさか三綴を見て逃げようとして、死んだ?

 だが、彼女が直前に叫んでいた『おおこ……』三綴ではなくおおこ。おお……こうち?

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