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第三の真相2

 皆の視線が俺の指先から篠崎美哉へと向かう。

 ハイライトの消えた瞳とでも言うべきか、不気味な視線で俺を射抜く篠崎はふーん。と興味無さそうに口を開く。


「確かに、その推理だと私がカセットを変えた理由が分かるわね。でも、二人を殺したかどうかは、分からないんじゃない?」


 確かに、このままでは原や山田が足立や御堂からゲーム機を奪って殺害したという図式も成り立たなくは無い。

 ここからだ。相手を追い詰めていくために立証して行かないといけない。


「それなら、山田、原。話を聞こうか。庇い立てしてもいいから証言してくれ」

「いや、沢木、庇い立てしていいって、それは駄目なんじゃ……」

「待て坂東氏、むしろ庇い立てしてくれた方が推理としては穴を指摘していくことが出来て相手を追い詰められるのだ」

「おいおい貝塚、それはゲームの話だろ……」

「あら、でも推理ゲームの醍醐味は犯人を追いつめ、逃げ道を塞いで相手に犯行を白状させることでしょ。私も手伝うわ、徹底的に真相を暴きましょ」

「……もう、完全に私が犯人と決めつけてるわねあんたたち。まぁいいんだけど」


 さぁ。話をしてくれ。と皆の視線が山田へと向かう。

 まずは最初に死んだ御堂の真相を解いて行くつもりのようだ。


「山田」

「う……ああ、もう、わかったよ。拙者は視聴覚室に向かった。その時にはもう御堂氏が死んでいたよ。血溜まりに滑って転んだところで凶器に使われた赤いカセットの入ったゲーム機を見付けた。赤いカセットは貝塚氏か美哉しかいない。御堂氏に用事がある相手など美哉だけだと思ってゲーム機からカセットを抜いて自分のと差し替えた。後は皆の元に向かって死体発見を告げた。それだけだ」

「あら殊勝。普通に告げるのね」

「隠し事したって意味無いんだろ。だったらさっさと告げた方が無駄に疑われる意味は無い。なぁ美哉。別に御堂にまで抱かれ無くたって良かったんだぞ。なんならブルーのレアキャラも拙者が……」

「山田、お前なんでカセット替えるなんてしたんだよ?」

「それは……だ、抱いた女を庇うために決まってるだろうッ! 最悪、拙者のと入れ替えただけだって言い張れるし!」

「うわ、山田キモい」

「って、篠崎さんが言っちゃうのそれ!?」


 山田の行動は簡単だ。

 昨日のうちにレアキャラを受け渡すという理由で篠崎を抱いたからだ。そのまま情が移ったようで犯人が彼女かもしれないなら自分が守らないと。そう思ってやってしまったことだろう。


「そもそもなんで視聴覚室に行ったんだ?」

「そ、そんなのっ。美哉が他の奴に抱かれるのが我慢ならなかったからに決まってるだろっ。美哉を探してたら視聴覚室から出てくるのが見えたんだ。それで外で待機してた足立氏引き連れてどっか行って、よっぽど出て行って抗議してやろうかと思ったけど、視聴覚室が気になって……」

「お、おい、それ重要証言なんじゃね!?」

「篠崎さんが出て来てすぐに視聴覚室入ったってことか!?」

「ってことは、行為を行ってすぐに殺害したということになるのかしら?」

「どうなの山田君?」

「そ、それは……」


 木場に促され山田は目を泳がせながら篠崎を見る。

 逡巡しながら、しかしもはや逃げ場は無いと諦めて、溜息を吐きだした。


「視聴覚室に入ったら御堂氏が死んでた。だから証拠を自分のと入れ替えたんだ」

「つまり、御堂君は篠崎さんが視聴覚室に居た時には既に殺されていたことになるわね。犯人説は濃厚かしら?」

「もう言い逃れ出来そうもないが、一応原の方も聞いとくか?」

「じゃあ原さん」

「う、い、言わなきゃ、駄目?」

「もう秘密にする意味も無いだろ」

「……それは、その」


 困った顔でちらちらと篠崎を見る原。

 二人は仲のいい友人なのだ、友達を売るような引け目を感じてるんだろう。


「美哉と足立君が、家庭科室に向かうのを見たの。何であの二人って疑問に思って後付けて、そしたらそのまま絡みだしたから隣の教室に隠れたわ」

「って、それは最初から最後まで聞いてたってことかよ」

「し、仕方無いじゃない。逃げるタイミング逃したのよっ」

「だが、それならば犯行時も聞いていたってことだよな?」

「は、犯行自体は見てないわよ。何かで誰かが殴られる音と足立の汚い悲鳴が一瞬聞こえただけで、恐くて教壇の下に隠れてたもの」

「つまり、隣の家庭科室で犯行があったのは聞いたけど、見てはいない?」

「そ、そうよっ。静かになって少し経ってから慌てて家庭科室に向かって、ゲーム機が凶器だってのはすぐわかったから無我夢中でカセットを入れ替えたのよ。その後は恐怖で隣の教室に戻って震えていたわ」

「声は、聞いてたんだろ。殴り殺される直前の会話は?」

「無かったわ。それは隠す意味も無いから告げるけど、本当に会話は無かったのよ」

「その後は?」

「しばらくしたら最上さんが来たから、悲鳴を上げられると思って止めに向かったの。まさか自分が悲鳴をあげることになるとは思わなかったけど」


 家庭科室に入ろうとした最上を止めに向かったら彼女が殺人者みたいな状況になっていて思わず悲鳴を上げたそうだ。そりゃあの時の最上見たら悲鳴はあげるだろ。

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