探索2
空き教室で人の声が聞こえた。
どうやら不良チームがいるらしい。
関わり合いになる気はないので閉じられたドアから中を覗くことなく通り過ぎる。
なのに漏れ聞こえた声が気になり思わず足を止めてしまった。
「ね、ねぇ。こいつ自由に使っていいからさ、私達のこと守ってよ」
「お、マジで? って最上をかよ。ちっさ過ぎて楽しめねぇよ」
「俺も好みじゃねーな。胸ないの胸!」
「ほら明菜、こいつ等に奉仕してやんなよ」
「……え? でも……」
「私達友達でしょー。こいつらから守る為にあんたがこいつ等満足させてやってよ。きゃはは」
ゲスだ。ゲスの群れが居る。
といっても俺が助けに行ける訳もない。
最上には悪いが足早に通り抜ける。
俺としても最上の貞操よりも自分の五体満足の方が重要なんだ。下手に入って行って半殺し、最悪殺されてはたまらない。
「ま、しゃーねぇな。ヤれるだけマシかぁ」
「俺一番な」
「ふざけんな。お前の出したの使えってかよ」
「やっりぃ。明菜がんばって! 私達を守ってねー」
「そ、そんな……」
「っし、じゃーまずは口で……ひぃっ!?」
「ちょ、どうしたんスか大門寺さん。あ、そうっすよね、大門寺さんが一番ッスよね!?」
「黙れ」
うおお、番長が動いた。狂犬はエロスの方も猛々しかったのか。
「明奈、着いて来い」
「……え?」
「行け、行って来いっつに」
「あんたに掛かってんのよ!」
「ちょ、そりゃないっスよ大門寺さん独り占めは……」
「俺らも溜まってるんですよ。ちょっとくら……いえ。すんません」
おそらく最後に睨まれたのだろう香中の声が尻すぼみになって謝っていた。
ガラリと扉が開かれる。
俺たちは慌てて近くの空き教室に隠れた。
そんな空き教室前の廊下を通り、屋上へと向かって行く大門寺。
戦々恐々、最上はちょこちょこと彼の背中に付いて行くのだった。
「あ、大門寺さん、この二人どうします!?」
「……好きにしろ」
足立が教室から顔だけだして尋ねると、大門寺は一度立ち止まりそれだけ告げる。
小走りで駆けていた最上が背中にぶつかっていたが、気にする事も無く歩きを再開し、二人は屋上へと去って行った。
どうやら最上を襲ったりする気はないらしい。屋上には他のメンバーもいるし公開で、なんてことは多分しないだろう。
おそらくレイプされそうになった最上を救ったんだ。と、思いたい。
視聴覚室にやってくると、オタグループが居た。
男共は適当な椅子に座ってゲーム中のようだ。壱岐と同じように学校に携帯ゲームを持ち込みプレイ中らしい。
時折通信し合っていることからして全員で協力して行うゲームではなく、アイテムなどをやりとりするだけの通信らしい。
「つかマジか」
「何してんのよ」
「これはオケモンだよ。僕はオケモンレッド、伴氏はオケモンブルー、飽戸氏と壮介氏はオケモングリーンをやってるのさ」
「結構面白いですぞなもし」
「そう言えば烈人氏予備持っていたはずですぞ」
「あ、それならば拙者もブルー持ってるよ」
「ふむ。では僕の予備オケモンレッドと壮介氏の予備オケモンブルーを、お二人にお貸ししよう」
「え? いらねーんですけど?」
「そもそもゲームとかしたことないしぃ?」
ブツクサ文句垂れながらも受け取ったゲームを行いだす女子二人。
どうやらこちらのチームはそれなりに上手くいっているらしい。
校内探索は全くする気はないようだけど。
視聴覚室から聞こえた声だけで満足し、俺は彼らの元へ向かうことなく踵を返す。
光葉たちも入る気はないようで、俺共々次の場所へと向かうようだ。
「この三匹から始めのオケモンを選ぶんだ」
「あ、この子可愛いー」
「んで、このオッケーボールを投げると敵を仲間に出来るぞなもし。オッケーマークが出なければ失敗ぞなもし」
「ちょ、いきなり失敗って!?」
「相手の体力減らすと成功率が上がりますぞ」
「先に言えよ!?」
「あいたっ!? なぐったね!? 親父にもぶたれたことないのにーですぞーっ」
「え? この前親父に殴られたと言っていたぞなもし」
「しまった!? このネタが使えないですぞ!?」
「あんたたち殴られたのに楽しそうね……」
「ふはは。美哉姫と円香姫の拳ならむしろ御褒美ですぞ」
「え? それはキモい」
なんやかんやで姫扱いされている二人の女子は、オタ軍団に罵声を浴びせながらもなんだか楽しげだ。
邪魔するのも悪いので俺たちはこの場を後にすることにした。
そのまま一階へと向かい、食堂へと向かう。
にしても、チーム編成次第でこんなことになるんだなぁ。
オタク達と女性陣は合わないと思ったんだけどなんかこのまま仲のいいチームになりそうな気がしなくもない。
漏れ聞こえた話を聞いただけだけど、女子二人はゲーム好きみたいなので早々ハマり始めていたのであった。