第三回学級裁判6
随分と必死に原が叫んでいる。
何故かは知らないが最上を犯人に仕立て上げたいみたいに聞こえるんだが、違うよな?
それだとまるで自分が犯人だから別の犯人作り上げたいんですって言ってるようなもんだぞ?
「じゃあ原さん、貴女から話を聞きましょうか? 昨日の夜から今朝にかけて、何処で何をしたいたのかしら?」
冷徹な視線に射すくめられ、原は思わず押し黙る。
一瞬目を泳がせながらも、小さな声で話しだした。
「よ、夜はその、宿直室で寝たわ。木場さんたちも一緒だったでしょ」
夜中は原も木場や十勝たちと一緒に眠ったらしい。
まぁ、あそこ無駄に広いからな。布団は二組しかないけどそこを我慢すればなんとかなるだろうし。
「朝は?」
「こ、購買に行こうと思って、ハブラシ欲しかったから、それで、その……足立を見かけて、家庭科室に向かってたから何するつもりだろうって、近づいたらその、バレそうだったから、隣の教室に入って、そしたら最上さんが来て、慌てて最上さんを引きとめに向かったら、足立が殺されてて……だ、だから最上が犯人なのよっ! そ、そうじゃないとおかしいっしょ!!」
その反応の方がおかしい。
なんでそんなに必死なんだろう?
ふむ、原は発見者だからと無条件で容疑者から外してたけど、加えておいた方が良さそうだな。
「一つ、聞いていいか原?」
「な、何よ沢木?」
「お前は最上が来るまでしばらくの間、隣の教室に居たんだよな?」
「そ、そうよ?」
「なら、話声か何か聞こえなかったか?」
「へ、あ、な、なんでよッ、何でそんなこと聞くのよッ!!」
「まず、足立がそこに居た理由だよ。例え最上が殺したと仮定したとしても、入ってきた最上に気付かず後頭部を殴打された足立は、家庭科室で何をしていた? そしてお前はそんな足立が何をしているか確かめもせず隣の教室で最上が来るまで待っていたって言うんだろ? 不自然過ぎじゃないか?」
「べ、別に隣の教室居ても問題ないでしょっ、それこそ私の勝手よ!」
大声で叫ぶ原。威嚇じみた言葉に、しかし木場が冷徹に追い詰める。
「で、貴女は何を隠そうとしているの?」
「は? な? な、なんのことっ!?」
「動きが怪しい、視線が泳いでいる、無駄に声を張り上げ相手の反論を封じようとする。不都合な何かを隠している者の兆候ね」
「うぐっ……な、何も見てないわよ。そうよ、最上が殴ったところも何もかも見てないわよっ」
黙秘を始めた原に、木場は埒が明かないと貝塚に視線を向けた。
疑わしいけどピースが足らないので一先ず他の人の証言を取り入れるようだ。尋問は後だな。
「じゃあ次の人、よろしく」
「お、おう。それじゃあ……」
「私は昨日、御堂に抱かれてたわ」
貝塚が告げようとした瞬間、篠崎がゲームしながら伝えてきた。
さすがにスルー出来ない告白だったので俺たちは貝塚から篠崎へと視線を向ける。
「え、マジ……か?」
「ええ。とりあえず日が変わるまでかしらね。それからレアキャラ貰って、待ってた足立に抱かれたわ。家庭科室で」
「ちょっ、美哉っ」
「その後レアキャラ貰ってシャワー浴びたわ。シャワー室で坂東と会ったからついでに口で遊んであげたの。シャワーから出たら死体発見で屋上に来たのよ」
まさかの告白に俺たちは何も言えなかった。
篠崎は山田だけじゃなく御堂や足立からもレアキャラを貰う代わりに身体を差し出したのだ。ついでに坂東が約得貰ったみたいだが、そこはどうでもいい。
「つまり、貝塚より後に二人と会ってたことを認めるんだな?」
「ええ。事実だし。そこまでは生きてたわ。保証しとく」
となると、篠崎を抱いた足立は、その後に殺されたことになる。
そしてこのことで怪しい容疑者が四人になった訳だ。
いや、一応五人か。貝塚も昨日は一人だった訳だし。
怪しいのは貝塚、山田、原、篠崎、最上の五人。
もう少し絞りたいところだ。
「変ね。その証言が来ると、原さんの証言がちょっと怪しくなってくるわ」
「な、なんでよ!」
「あら、だって貴女、家庭科室に入って行く足立君を見たのでしょ? だったら篠崎さんもそこに居たはずよね?」
確かにその通りだ。
原の証言だと家庭科室に入った足立が、次に来た最上に襲われたみたいに言ってたけど、篠崎がいたとなるとこの証言がおかしくなる。
「篠崎、家庭科室から出る時最上に会ったか?」
「いいえ。一人で出て、そのままシャワーに向かったわよ」
「となると、少なくとも篠崎さんが家庭科室から出たあと最上さんが来るまで、足立君は一人で家庭科室にいたことになるのね」
「そ、そうよ、だから一度出て来て、戻って……」
「あら、どうして一度出て戻ったと分かるの? まるで見ていたようだけど」
「っ!?」
あーあ。これは言い訳するほどボロが出るパターンだ。原が物凄い慌てようでなんとかしようと必死に視線を巡らせ考えている。
まさか本当に、こいつが犯人?