表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/246

第三回学級裁判4

「では私だな。といっても朝起きた後はずっと剣道場で素振りしていたくらいなんだが」

「じゃあ放送は剣道場で聞いたのね?」

「いや。そろそろ食事を作る頃だろうと道具を片づけ道場から出たところで三綴と会った」

「え? 会ってたの天ちゃん!? だ、大丈夫だった?」

「ああ。脅して来たが丁度放送があったからな。三綴は舌打ちしながら去って行ったぞ。その後すぐに坂東が来て一緒に屋上に来たくらいだ」

「昨日については?」

「夕食後は清音と玲菜の三人で過ごしていた」


 賀田の報告に木場が顎に手を当て考える。


「一応聞いとくが、襲われては無いんだよな?」


「ああ。その手前だな。玲菜が危険なら危険が及ばないよう従うべきかと思ったが坂東の話では玲菜にも脅しを仕掛けたらしいしな。従う気もない」


「ええ。嫌だよ天ちゃん。私の為にあんなのに従ったりしないでよぉ」


 泣きそうな玲菜に天使は溜息を吐く。


「それは私の台詞だ玲菜。お前こそ従ったりするなよ。私の秘密などお前が身を呈して守るほどの物ではないのだから」


「う、うん。それは気を付ける」


 というか、これ、上手く脅しが成立してれば三綴の奴、井筒と賀田二人の女性と関係を持ててた訳か。失敗はしたが俺達が発見しなければ二人とも毒牙にかかっててもおかしくなかったよな。

 女性たちには気を付けるように言っておかないと、いや、俺が言うべきことじゃないかもしれないけどさ。


「あまり言いたくはないが、女性陣はこれからは特に気を付けてほしい」


「沢木?」


「俺が言うのもなんなんだけど、閉鎖空間なんだ、女性に対して欲望を持つ男は発散する場所をなくしてるからさ、女性陣も自分たちの身の回りには念入りに気を付けてほしい」


「ほんと、あんたが言うなって感じだね」


 所沢がジト目で話に割り込む。知ってたよ。言うと思ったよ。でも一応誰かが言っとかないとな。


「まぁ、俺も沢木に賛成ですよ賀田さん。三綴の例もあるんだし、俺みたいな紳士ならともかく所沢みたいなストーカー気質のもいるんだし」

「ちょ、僕はストーカーなんかじゃないっ」

「はぁ? あれだけ忌引さん影から見まくっておいて良く言うな。そのスマホの待ち受けも忌引さんの盗撮画像だろ?」

「……え? そうなの?」

「ちょっ。忌引さんに誤解与えるようなこというなよ! これは昨年の修学旅行で撮られた写真だよっ、ちゃんと正式に学校から買った奴だからね!」

「え? それはそれで引くんだけど……」

「わざわざスマホに撮り直したのかよ……」

「キモッ」

「なっ……」

「ま、まぁまぁ所沢が光葉好きなのは既に分かってたことだからさ、それより及川。今日の行動頼む。昨日は確認するまでもないんだろ?」


 流石に追い詰め過ぎた所沢がどうなるか恐かったので慌てて話を逸らす。

 追い詰められかけていた所沢が俺にフォローされて複雑な顔をしていたが、感謝とかいらないぞ。俺が襲われる確率を減らしただけだからな。

 感謝してくれるんなら暴走するのはやめてくれ。俺としては刺される未来さえなければそれでいいんだ。あ、撲殺とか毒殺も勘弁な?


「ええ。私も昨日は天使と玲菜の三人で寝るまで一緒だったと言っておくわ。朝起きた後は玲菜が歯磨きしたいと言ってたからもしかしたら購買にあるかもと思って私が取りに行ったの。食事を作らないといけないから玲菜には早めに食堂に向かって貰ったわ。天使はそのまま瞑想して素振りするって言ってたから道場に残したの」


 一応、説明としては簡潔な賀田やいろいろ適当な井筒よりも及川の方が整然としていて分かりやすいかもしれない。

 三人組の中では一番まともなのがこいつだろう。顔はゴリラ顔だけど。


「校内に入ってからは坂東君と購買で鉢合わせしたわ。歯ブラシを手に入れた後に沢木君と忌引さんが来て店内を物色。売店にあったゴミ袋に色々詰め込んでたわね」

「ん……必需品」

「いや。キャンディとか必需品じゃないだろ」

「何を言う坂東。あれは光葉の心のゆとりを守る必需品に決まってるだろ」

「飴玉一つでご機嫌かよ……」

「あら、いいじゃない。飴は好きよ。私も後で購買で貰って来ようかしら」

「それじゃあ皆で行って均等に分けちゃいません? 後で揉めるのもアレだし」

「むぅ、男子にもくれるんだろうな。僕も甘いモノは好きなんだが」

「え? 貝塚も食べんの? まァいいけど」

「弘君、一杯貰おうね?」

「む、俺も……か?」

「大門寺さんも食べるんなら俺も貰っていいか」

「結局全員か。飴要る奴は購買向う時にな、今は、犯人当てだろ」


 小川が溜息を吐きながら告げる。

 学級裁判とは言え三回目ともなるとどうにも抜けた感覚がある。

 きっと感覚が麻痺し始めているんだろう。

 現実問題、オタクたちが二人死んでも彼らの死を本当の意味で悼み殺人者を地獄に落としたいと思う者はここには皆無だった。

 むしろまた面倒なことしやがってという長年の会議で祭りに新企画取り入れるかどうかの話し合いぐらいにぐだぐだとした雰囲気が漂っている。

 引締めようにも木場すらも飴早く選びたいといった雰囲気なのでどうにも犯人探しといった様子にならない。大丈夫か俺ら……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ