第三回学級裁判2
「では、えーっと二人を最後に見たのって誰になるのかしら?」
「一応御堂は篠崎氏が最後になるのでは? ただ、容疑者である以上、一番最後に見たのは僕としといた方がいいのかもしれないが」
「そうね。とりあえずはそれでいいわ。その時間から御堂君が殺されるまでの時間、皆のアリバイを聞いといた方がいいわね。篠崎さんを最後にして……ところで見たのっていつ?」
「うむ。丁度沢木氏に会う前だったので昨日宿直室に向かう前だな。その後は貰った茶室でずっと寝ていたと証言しておこう。一人だったので証明は不可能だがな」
そうか、貝塚もアリバイが無いという点では容疑者になるんだな。
彼は篠崎と御堂の情事を見てしまった訳だし、逆恨みして御堂を殺した、なんてこともありうる訳か。
「じゃあとりあえず一番怪しい三班のメンバーは抜かして、一班からアリバイ報告しましょう」
「俺達からか。えーっと、夜は体育館倉庫で美海といたぞ。その後は朝食までずっと二人だった。朝食時間になったので食堂に移動したけど、美海とずっと一緒だったよ」
「才人に同じ。ふふ、才人ったら子供みたいに甘えて来て可愛かったわ」
「ちょ、恥ずかしいから言わないでくれよ」
リア充爆死すればいいと思う。
俺と貝塚の思いが一つになった瞬間だった。
「私と良子、佳子は木場さんと深夜まで宿直室に居たわ。犯行とか不可能です」
「とりあえず皆一回トイレに行ったけど、皆揃ってだったから個室に入ってた時間だけ自分のアリバイ確立できないだけで一分程だったわよね?」
「そうね。その時間で御堂君や足立を殺しに行くのは無理だと思うわ」
「つか、足立言うなよ。なんか俺が殺されてるみたいに聞こえるぞ」
「足立が二人いるのが悪いのよ」
「お前喧嘩売ってんのか?」
「次郎、話が進まないから黙ってなさい」
「うぐっ」
「え、えーっと、その後は朝食時間まで話し合いだったから寝ても無いし、アリバイ証明になりますよね。あ、最後に原さんと忌引さんと井筒さんが部屋に来て放送をお願いされたから校内放送で皆を屋上に呼びだしたわ」
「まぁ、予想通りだが一班のメンバーに殺害は無理そうだな」
「そういうことよ」
ふんっと中田が胸を張る。
足立アニキが思わず舌打ちしたが、気付かなかったようだ。
「二班は?」
「俺と明奈は開かずの間横の教室に居た。足立と田淵が謝りに来た以外には誰とも会ってないから二人きりだった。ただ……」
「えっと、朝方と事件直前に教室出ました」
「何でまた?」
「もしまた死に掛けた人がいたら楽に殺してあげようって思って、鈍器が欲しかったので購買に。ついでにハブラシ持って来たの」
「いや、楽に殺そうって……」
「チッ。明奈が持ち治ったのはいいが、沢木、これは……」
「副作用については保証外です……」
当然俺は顔を逸らす。
大門寺サン、これは多分副作用です。
副次効果については一切責任持ちません。
「田淵と俺は保健室に居たぞ。一度シャワー浴びに行った時も沢木と忌引に会ったし、そこで篠崎とも合流した。他の時間は田淵と一緒だったから互いにアリバイは証明出来てる」
「共謀してたら意味無いと思うんだが」
「それを言ったらキリねーだろ貝塚」
「そんな事よりお前だ足立!」
「お、おう? なんだよ榊」
「やったのか!? やっちまったのかその殺人鬼女を!?」
「え? あ、あー。まぁ、互いに友人無くしたしな、なんっつーか成り行きで?」
「くっそ、童貞がまた減ったぁぁぁ」
「クソッ、何故だ何故こんな無情な。いい奴から消えていきやがる……」
「いや坂東、いい奴から童貞卒業できるならいいんじゃないか?」
「うるっせぇ裏切り者め! テメーに発言の自由はねぇ!」
足立に喰ってかかる坂東と榊。余程許せなかったようだ。
「どうでもいいがよ、とりあえず俺らは保健室か食堂以外向かっちゃいねーぞ? シャワー浴びに行ったのも昨日の昼過ぎだっけか? ぐらいだったしよ」
「そういうわけだから、今回私達は無関係よ。それと、私まだ殺人してないから殺人者じゃないわよ」
「揚げ足だよっ。取るなよ田淵!?」
「別にいいじゃない。どうせ粗末なんだから」
「ぶっ殺すぞ!?」
「あーはいはい。話し進まないから次の4班は?」
「俺と榊は夜中は体育館に居たよ。三綴が一回外でてったけどすぐ戻って来てたぞ。時間的には1分もなかったから殺人は不可能、だな。その後は朝まで雑魚寝。俺と榊と所沢と壱岐がずっと一緒だった」
「あ、でも朝になった途端三綴の奴がいなくなってたぞ」
「その後は皆バラバラに行動したな」
「俺は所沢と壱岐を引き連れ食堂に向かったぞ?」
「こっちはハブラシ手に入れるために購買に向かった。及川とばったり出くわした後は沢木と忌引がやってきて……あの話は省いていいか? 関係ないし」
「ああ。そっちは後で話すよ。アレがあった後は?」
「アレってなんだよ?」
「沢木が後で説明するらしいから俺からは、シャワーしに行った後のことな。ついさっきだが汚れた服着替えて放送聞いてから賀田さんと合流して屋上に来たぜ?」
「あら、その割りには髪が濡れてないわね」
「……頭、洗ってないからな」
だからどうした? 及川の言葉になぜか間を開けて答える坂東。嫌そうな顔をしているのは聞かれたくない話しだからか、それとも及川と話したくないからか?