第三回学級裁判1
御堂の遺体や周囲を確認した俺たちは再び屋上へと戻る。
いない三綴については第二の死体というインパクトが強過ぎて皆忘れてしまったようだ。
アイツ、井筒に脅迫してたし来づらいんだろう。
今回の件はオタク達だし、多分関係もないだろうから捨ておいても問題は無い……か。うん。誰かが言いだすまで黙っておくか。
屋上に辿り着くと皆で円陣を組む。
時計回りに小川、川端、十勝、中田、大門寺、最上、足立、田淵、貝塚、山田、篠崎、原、坂東、榊、及川、賀田、井筒、俺、光葉、所沢、壱岐、日上。そして中央に木場。
木場は皆を見まわし、用意は良いわね。とばかりに息を吸う。
「さて、始めましょうか」
「今回は死者が二人よね。同じ犯人かしら?」
「それはわかんねぇぞ中田。別の犯人が同時にやったのかもしれねぇし、共謀かもしれない。あるいはどっちかが相手を殺した後別の犯人に殺されたのかもしれない。とりあえず、現状ある材料で調べるしかねぇだろ」
「つーかぁ、面倒だから私ゲームしとくね」
「もう、美哉……ウチの班から死体出たんだから今日くらいは興味持ってよ」
「その通りだろう。特に篠崎氏、君は死ぬ前の御堂や足立と会っているはずだ。一応容疑者になるのだから興味は持ってほしいな」
「あん? そりゃどういう意味だ貝塚? 死ぬ前にそいつが会ってたって何で分かる?」
「そ、それは……」
アニキに問われて押し黙る貝塚。
あまり言いたくないようだ。ゲームであればミニゲームとかをして押し黙った貝塚から情報を開示させたりするのだろうが、あいにくそんな都合のいい方法は無いので俺たちは貝塚を質問攻めにするしかない。
「何か情報があるのなら言った方がいいと思うわ貝塚君」
「し、しかし、その……恥ずかしいと言うか……」
「恥ずかしがってる場合かよ!」
「……ああもう、してたんだよ! 篠崎氏と御堂氏が、男女の営みをっ!」
「はぁ!?」
思わず叫ぶ貝塚。よっぽど恥ずかしかったのだろう。これだからシャイなチェリーボーイは。
しかし、篠崎の奴、山田だけじゃ無く御堂にまで手を出してたのか。
「やっぱりあいつらともやったのか! 美哉ッ!!」
叫んだのは山田。未だに血塗れの彼は般若の形相で篠崎を睨む。
「えー。だってぇ、珍しいオケモンくれるって言うしぃー」
ゲームの為に身体を売ったのか。
安売り過ぎるだろ。
「一発限りだっていうからぁ、オケモンも童貞も貰ってあげったんだけど?」
「香中も最低だったけどこれはこれで……」
思わず田淵が呆れた声を出す。
篠崎のあっけらかんとした様子に他の皆も溜息を吐いていた。
篠崎はそんな皆の反応にも全く気にしていないようで、ただただゲームを続けていた。
「とりあえず、何から話して行こうか?」
「そうね。とりあえず議題としては、犯人が同一人物か否か。二人の死亡推定時刻。凶器は何か。皆のアリバイは? といった感じかしらね?」
「まず分かりやすいのから行こう。凶器は何か。からだろう」
俺の言葉にコクリと頷く木場。
全員を見まわし、まずは死体の状況を告げていく。
「最初に私達が発見したのは足立飽戸。状況は床に倒れた足立君は後頭部に一撃を受けていたらしいわ。頭蓋が陥没するほどの衝撃ね。多分何度も同じ場所を殴られたんだと思うわ。じゃなきゃあんなに血を流したりはしない筈だもの」
確かに、ただ後頭部を殴っただけで頭蓋骨が陥没したとして、血が出るほど強打したとなると、腕力も並みじゃなくなる。
このメンバーでそんな事を行えるのは、賀田か大門寺くらいだろう。
「それと、血溜まりの前に最上さんが佇んでいて、手にはバール、でいいのかしら? 棒状の鉄塊? を持ってたわ。地面に付けた時に血が付着したみたいだけど、彼女が殴った訳じゃないらしいわ。凶器はその棒、じゃなくてゲーム機。だったわよね大門寺君」
「ああ。こっちのブルーのカセットが入ったゲーム機だ」
「ゲーム機が凶器って……流石オタクチーム」
「んで、第二の殺人現場。こっちも殺害方法は後頭部を殴打。凶器もゲーム機よ。それから山田君が一度来ていた証明として滑った場所の血が他の場所とは違う付き方になっていたくらいかしら?」
「二人とも死に方は一緒ってことか」
「んじゃあ犯人は同一人物?」
「模倣犯ってこともあるでしょ。とりあえず話し合いで真相究明するしかないわ」
「他に何か判断要素ってないの?」
「んー。あ、そうだ。最上、確か足立はお前が来た時生きてたんだよな?」
「う、うん。死にたくないって言ってたから。生きてたよ。すぐに、死んじゃったけど」
最上が彼を最後に見取った者だ。にしても、なんであいつらが殺されたんだろう?
それに、抵抗しなかったのは何故だ?
やはり犯人は知り合いだったからか? それとも不意打ちだったから? いや、そもそもクラスメイトしか居ないんだから犯人は知り合いで合ってるのか。