足りない人数
屋上に続々と人が集まってくる。
まずは光葉たちから理由を聞いて、屋上に近かったらしい日上、中田が屋上に来ていた。もちろん光葉、井筒、原も一緒だ。
俺、大門寺、最上、ついでに話を聞いて遺体を確認に来た木場が遅れて屋上に上がった。
俺達が遅れたのは木場が確認するまで時間を取られ、その間木場が証拠隠滅しないよう俺達が見張らされたからである。
やっぱり証拠品のゲーム機を入手したのが悪かったらしい。現場荒らすな。と怒られてしまった。
で、俺達が集まった後に来たのは所沢、壱岐、榊の三人。誰も来ない食堂で食事が出来るのを舞っていたそうだ。
その後に十勝。放送を終えてようやく合流である。
少し遅れて小川と川端。
時間になったので食事に来たようだが、そこでイチャ付いていたせいで所沢たちより遅れたそうだ。
「遅れたか?」
「貝塚か、いや、まだ足立と田淵、御堂、山田、篠崎、坂東、三綴、賀田、及川が来てない」
多少不安がある。
特に三綴と賀田が居ないのが怖い。
殺人事件を優先させたが、賀田の処女が奪われて無ければいいのだが……
「おう悪りぃ、立てこんでて遅れた」
足立と田淵がやってくる。モヒカン頭のアニキはなんとなく、大人びて見えた。
「凄い集まってるな」
「三綴は、来てないのね」
足立に遅れること1分。篠崎が、そしてさらに少し待って坂東と賀田がやってくる。
坂東と賀田である。何故に坂東?
さらに、どうやら賀田と行き違いになって探しまわっていたらしい及川が汗だくで駆けのぼって来て、賀田の無事な姿に安堵、そのまま崩れ落ちて井筒と賀田に介抱されていた。
「ところで坂東、なんで賀田さんと一緒なの?」
震える声で榊が尋ねる。坂東はあーっと答えづらそうに頬を掻きながら空を見る。
「シャワー浴びてでてきたところでばったりあってな。一緒に来たんだ」
「やましいことは何も無かったぞ? 坂東は良い奴だな」
「本当っすか賀田さん! ひゃっふーっ」
賀田に褒められた坂東が飛びあがって喜ぶ。ジャンプした赤い服の配管工みたいなポーズを決めて着地失敗、そのまま尻持ちついて痛ぇと叫んでいた。
アホは放置して俺たちは屋上の入り口を見る。
「後、来てないのは?」
「御堂、足立の飽戸、山田、三綴だな。何かあったか。もしくはここに来たくない心情か?」
「とりあえず始めようぜ、木場、司会頼むわ」
足立に促されて木場が戸惑ったように俺を見る。
「いや、司会するのは後でも出来る。とりあえず全員揃えよう」
「テメーらそこ動くなよ。沢木、捜索に行……っ!?」
大門寺が俺の首根っこ掴んでさっさと歩き出す、ちょっと待って、俺は行くとは一言も。そう思った次の瞬間、大門寺の歩みが止まった。
屋上入口から、血塗れの山田がよろめきながらやってくる。
「山田っ!? どうした!? 何があった!?」
貝塚が逸早く走り寄り、山田を抱き起こす。
「た、大変だ……」
「山田?」
「御堂氏が、御堂氏が死んだッ」
「は?」
「せ、拙者視聴覚室に行ったんだ。そしたら、足滑らせてべしゃって、何かの液体に突っ込んで、その液体が御堂氏の後頭部から、だ、誰が、誰があんな酷いことッ!?」
「皆はここに居て! 沢木君、先に行くわ!」
「あ、オイ!?」
木場が即座に走り出す。殺人現場と聞いて探偵好きの血が騒いだようだ。
仕方なく俺も走り出す。なぜか他の皆まで一緒にやってきた。
どうやら皆現場が気になったようだ。
後に残された山田は、慌てて最後から走ってきた。
「どうなってる? 一日に二人も死んだってのか?」
「俺に聞かれても……」
「あり得ない話じゃないでしょ。御堂に足立。二人ともオタクチームよ。あのチームでも何かしらの問題があったってことなんじゃない!?」
先頭は木場、大門寺、そして俺。
遅れて足立が他のメンバー引き連れ走って来ている。
モヒカンヘッドは恐いだけじゃ無く頼れるアニキだった。これからもいろいろ頼りにさせて貰おう。
視聴覚室に辿り着く。
がらり、扉を開けばすぐ目立つ場所に御堂が倒れていた。
後頭部から一撃、いや、さらに血が出るまで何度か殴ったようで頭からの血が床を濡らして池のように広がっていた。
「本当に、死んでる……」
「見ろ沢木。また凶器はゲーム機だ」
気付いた大門寺がゲーム機を拾いあげる。
「……ん? やっているゲームが違う?」
「はぁ、はぁ。おお、そうではないのだ大門寺氏。それは三種類あるが同じゲームだ。レッド、ブルー、グリーンなんだ」
遅れてやってきた貝塚が息も絶え絶え説明する。屋上からここに来るまでの道のりは、彼にはキツかったようだ。
「そうなのか。御堂の凶器はグリーン。足立の凶器はブルーだな」
ゲーム機に刺さったカセットを調べ大門寺が告げる。
いや、そんなどうでもいいことはいいから他に証拠を集めようよ。
あ、ここ誰かが滑った跡が出来てる。ここで山田が転んだのだろう。