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呼び出し

「落ち付いたか大門寺?」


「……ああ。大丈夫だ。明奈は殺してない。その事実が分かればそれでいい。これから、どうする?」


「誰かに放送して貰うのが一番か。原。悪いんだけど放送頼めるか?」


「わ、私!? 知らないわよ放送の仕方とか!」


「十勝さんが知ってる筈だよ、えっと、一緒に行こう」


「十勝さんは多分、四階の宿直室」


 原、井筒、光葉が足早に去って行く。

 よし、となると俺らがやるべきは、誰がどうやって足立飽戸を殺したかだな。

 まずは遺体の現状を調べるべきか。


 とりあえずスマホで写メを取っておく。

 そう言えば購買にスマホ用の充電器があったな。そろそろ限界近いし、使っておくか。

 さて、犯人が何か証拠を残してくれてればいいけど……


 見事に後頭部に一撃だ。いや、連撃? 同じ個所に何度も殴られたせいで皮膚が裂けて血が大量に出ているんだ。

 硬い何かでがっつり行かれている。

 他に証拠品があるとすれば、壊れたゲーム機だろうか?

 液晶部分がひび割れていて画面が見れなくなっている。


 あとは……待て、このゲーム機、角に血が付いてる。あと、髪の毛?

 ……これ、多分凶器だな。

 つまり、足立は自分のゲーム機で角を殴られたって訳か。

 一応凶器な訳だし持って行っとくか。


 通常であれば現場保存の関係上持っていく訳にはいかないのだが、今回は学級裁判で犯人を見付けるものだ。証拠品は持ち寄って皆に見せるべきだろう。

 他に怪しいのは……

 ベルトが止めきれてないくらいか?

 学生ズボンのベルトが締めきれてない。脱ぐ直前だったか、あるいは何らかの状況で脱いでいたズボンを穿き直しているところで後頭部から殴られたか。


「どうだ沢木?」


「とりあえず、後頭部からゲーム機で殴られたことだけはわかったかな。一応証拠品だし持って行こうと思う。ただ、俺が持っとくよりも大門寺が持ってて貰った方が説得力でそうだから預かっててくれないか」


「血付きのゲーム機をか。仕方ねェな」


 大門寺にゲーム機を任せ、俺は一通り家庭科室を撮影して皆で外に出た。

 丁度放送が行われる。皆が屋上に集まるまでしばらく待ち時間になりそうだ。




 剣道場の入り口で、呼び出された賀田天使は三綴作馬と二人で会っていた。

 その表情は硬い。

 相手の三綴は追い詰められたような、しかし圧倒的強者の笑みでスマホの画面を賀田へと向けている。


「下衆ね」


「そりゃぁどうも。で、どうすんだ? こいつが皆にバレたら、あんただけじゃ無い。井筒がド変態だって知られちまうんだぜ?」


「何が……望みだ」


 悔しいが、彼への反論はできない。

 賀田が暴力に訴えれば征圧は可能だろう。しかし彼の口を塞ぎ切ることは不可能だ。

 ならば、自分一人が我慢すれば、井筒玲菜を救うことはできるだろう。

 自分一人が泥を被れば……


「跪け」


 冷たい声で、三綴が告げる。

 同時に学生ズボンのファスナーをずらし始めた。


「下衆め……」


「うるせぇ。俺にはもうやるしかねぇんだ。やらなきゃ……俺が爪弾き者だからな。だから賀田。お前は今日から俺の肉奴隷に……」


『緊急招集、緊急招集。死体が発見されました。全員至急屋上にお越しください』


 二人揃って睨み合う。


「どうした? しゃがめよ」


「招集よ。遅れれば捜索が始まるわ。貴方も終わりね」


「……チッ。こんな時に死にやがって。誰だよクソが。賀田、終わったらお前の処女を散らしてやる。逃げるんじゃぁねぇぞ? 逃げれば井筒のことバラすからな」


「……わかっている」


 クソが。と悪態付いてファスナーを上げた三綴が先に校舎へと戻る。

 三綴の姿が見えなくなったのを確認し、賀田は大きく息を吐いた。


「こんなことなら、気になる男にでもさっさと捧げておくべきだったか……まぁ、そんなもの居なかったからどうにもならんか。玲菜……最悪でも、お前だけは、守るから、だから……」


「あれ、賀田さん?」


「ん? ああ、坂東か。シャワーでも浴びてたのか? ん? 篠崎も一緒か」


 坂東がやってきた方向から今出てきた篠崎。放送を聞いていたからか、三綴が去って行った方向とは逆方向に向かって行く。裏庭を通って屋上に向かうようだ。


「びっくりしたよ、篠崎さんが男子シャワールームに居るんだもんよ」


「男子の方にか!?」


「聞いたらどっちでシャワー浴びようと私の勝手じゃん。むしろ女の身体見れて嬉しいっしょ。とか言い返されて何も言えなかった」


「とんだ痴女だな」


「ほんと、賀田さんの爪の垢飲ませてやりたいくらいっすわ」


「私のか? そんな汚いモノを飲ませたら腹痛だぞ?」


「いや、たとえ話っすからね。あ、それより急がないと、なんか放送ありましたよね」


「ええ。そうだったわ。屋上に行きましょうか」


「……あ。そうだ。三綴に気を付けてください」


 ふと思い出したように坂東が告げる。


「三綴……に?」


「ええ。あの野郎井筒さんを脅迫しようとしたんすよ。俺と沢木とゴリ……及川さんと忌引さんが丁度通りがかったから未遂だったっすけど、井筒さん危なかったんっすよ。賀田さんに迷惑掛けたくないから身体差し出そうとしてたんすから。賀田さんも、井筒さんのためとか言ってあんなクソ野郎に抱かれたりしないでくださいよ」


「あ、ああ……気を付ける」


 危なかった。

 賀田は思わず心底安堵する。

 もしも坂東に会わなければ、井筒の為にと三綴に抱かれに行くところだった。

 早めに井筒に会って今後の対策を練るべきだろう。

 新たな決意と共に、坂東と共に屋上へと向かうのだった。

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