探索1
「よし、決まったな。んじゃーとりあえず探索終わったら教室集合で」
適当に決める大河内。
何かを考えて集合場所を決めたという様子は無く、ただ今皆がいるのがここだからって理由らしい。
「あ、待てよ斈。教室じゃなくて屋上にしようぜ。周囲が見渡せる場所の方がいいだろ」
「才人? んー。まぁ別にいいけど? じゃあ屋上に集合で」
小川がふと思い立ったように告げると、小首を傾げた大河内がまぁいいか。と集合場所を変更。
小川が誰にもわからないようによしっと拳を握って牧場にアイコンタクト。牧場が顔を赤らめ俯いた。
なるほど、あいつら教室で何かイケナイことする気だな。後で覗きに行こうかな。
いや、光葉が側にいるから行かない方がいいか?
グループ分けが決まったので各グループが体育館を出ていく。
不良チームは大門寺に従うように全員出て行き、オタクチームは空き教室でゲームしようぜ。とばかりに男達がさっさと去っていく。
残された篠崎と原が慌てて四人を追って行った。
普通チームは井筒が賀田の手を引っ張り率先して去っていく。
それに歩きながら付いて行く及川と待ってくれよーっと男共が駆けて行く。
そして残ったリア充と寄せ集め。
「あ、いおりんちょっといい?」
「え? ……なに斈君」
リア充チームの二人が足を止めたのが目に入った。
俺は自分のチームを見回す振りをしながら聞き耳を立てる。
ホント、リア充はいろんな奴に声掛けまくってるなお互いに。
「ちょっと話があるんだ。屋上集合前でいいからさ、購買部の準備室にでも来てくんね?」
「……う、うん」
ちょっと控えめに答える牧場。幼馴染な二人にしては少しぎこちない気がする。
「ちょっと牧場さんっ。顔貸してくれる?」
「へ?」
大河内と牧場が会話していると、十勝、川端、中田が近づいて来て背後から牧場を拘束、三人で無理矢理連れ去ろうとする。
「大河内君、悪いんだけどちょっと牧場さん貸して?」
「あ、僕は別にいいよ。話は済んだから。才人ー、僕部室棟調べてくる」
「え? ああ。それじゃ俺らは学校を……って、あれ? 他の奴らは? 伊織も居ないのか?」
体育館を調べるのに夢中で気付いてなかったらしい。
小川が気付いた時には牧場が連れ去られた後だった。
むぅっと唸る小川に大河内が牧場を振りかえろうとして、気付く。
「え? さっきまでそこに……ありゃ? まぁ仲良し四人で先に行ったんじゃないかな?」
「そっか。まぁいいや。一人でこっち調べとくから後で合流しようぜ」
リア充チームが去って行き、体育館には寄せ集めチームだけが残った。
というか小川君よ。あの女子四人、絶対仲良くないからな。むしろお前と仲のいい牧場さんをイジメかねないぞ?
まぁ、俺には関係ないので頭の中から先程の会話を捨て去り、自分のグループを見る。
俺の他には光葉。
俺の説得のおかげか、俺の側にぴったり寄り添い裾を掴んでいる。ちょっとその佇まい可愛らしいから写メ撮っていいかな?
所沢は光葉と一緒に居たいということでこのグループに入ってきた男だ。顔は可愛らしいショタ顔で、背丈も低い。年上の先生方からは結構人気らしい。確か模型部だっけ? 電車が好きだとか聞いた気がする。
壱岐はオタクグループに類する少年だが、一人でゲームするのが好きらしくオタクグループとも一線を引いている。今回も集合場所は屋上だっけ? と確認だけしてさっさと出て行った。
多分屋上でゲームし続けるんだろう。
協調性は全く無いようだ。屋上に居続けるのだろうから放置しておいても問題ないだろう。どうせゲーム三昧だ。
「探索とか好きにしたらいいと思いますわ。私は屋上にいますから」
日上もリア充チームに入れなかったせいでボッチ化しており、やる気なく屋上へと向かってしまった。彼女に付いても下手に関わるよりも放置の方がいいだろう。
もしかしたらこっちのチームじゃ無くてリア充チームと行動し出すかもだし。
で、残ったのは俺と光葉と所沢、そして木場さんだ。
クール系少女の彼女は背丈も俺より高い。といっても1センチくらいの差であるが。
スレンダー美人で常に冷たい瞳で相手を射抜くため、一部モノ好きな男には人気があるらしい。ウチのクラスじゃ不人気だけど。
人付き合いもほとんどしないので女子の友人も居ない。
常に一人の彼女は両手を胸の下で組んで体育館を見回している。
体育館には違和感とか全く無いからどれだけ調べても何の変わり映えもしないだろう。
「さて、んじゃ学校探索でもするか。木場さんはどうする?」
「別にグループに分かれても一緒に行動する必要はないでしょ?」
「ごもっとも。じゃあ俺らは行くよ」
光葉と共に体育館を後にする。何も言わずとも着いてくる所沢。
そして無言で背後に来る木場さん。
「木場さん?」
「別に一緒に向かっても問題はないでしょう?」
結局一緒に来るのかよ。寂しがり屋なのか?