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二日目の終わりに6

 流石に、宿直室にこの人数が揃うと手狭に感じる。

 俺、沢木修一と光葉、木場、十勝、中田、日上、貝塚、原の九名である。

 丸いちゃぶ台を囲み、ぎっちぎちになるのが嫌だったようで、皆ちゃぶ台から少し離れて距離を開けていた。


「で? なんなんだこのハーレム状態? リア充は爆死した方がいいぞ?」

「俺は光葉と二人きりになりたいんだけどな。宿直室が女子に占拠されてんだ」

「あー、何よソレ! なんか私達が悪いみたいじゃない」

「沢木のケチ、良いじゃないこっち広いんだから」

「あのなぁ中田、この人数は流石に手狭に感じるだろ」

「それは……まぁどうでもいいから、話を始めましょう」

「うをい!?」


 中田により強制的に話を転換させられた俺は思わず主張する。しかし誰も取り合う気は無いようで、中田に乗っかって原に視線を向けた。


「それで、結局何があったの?」


 木場の質問で原があーっと頭を掻きながら溜息を吐く。

 どうやら皆と話した御蔭で落ち付きは取り戻せたようだ。


「まぁ、なにっつーか、オタク共のお守が大変で、疲れたから和室に戻って来たのよ」

「御堂、デスゾ、山田の三人だな。篠崎ラブになってるみたいだからなぁあいつら」

「そうなのよ! あいつら美哉ばっかり優遇してさ、私なんて路傍の石みたいに見てくんの! あいつら何様よ! ふざけんなっつーの」

「そう言ってやらないでくれ。皆女性とは疎遠だったのだ。キスしてくれた篠崎にゾッコンになるのはしかたないさ」

「そうは言うけどさぁ貝塚。って、そういえばあんたは篠崎に行かないのね? 電池とか渡せばキスしてくれるのに」

「ああ、うん。なぜかこう、彼女にキスされたいとかは思わなくてな。ゲームも同じレッドだからか自力で取れるレアしか居ないと思ったんだろう。誘われもしなかった。まぁ誘われても行かないけどな」


 と、恥ずかしげに頬を掻く貝塚。お前こそ何様だよ。童貞君が何言っちゃってんの?


「ふーん。美哉は好みじゃないってこと?」

「流石に僕も男だ。綺麗な女性は好きだよ。ただ、貢いでまで彼女にちやほやされたいとは思わないだけさ」

「うっわ、かっこつけてる」

「キモッ」

「中田さん流石にそれは直接過ぎますわ。せめて心の中だけで言うべきですわ」

「フォローするつもりかもしれないけどさらに傷抉ったわよ今」


 中田のフォローをした日上。しかしさらに傷を広げる結果になっており、木場が呆れた顔で指摘する。


「まぁいいわ。それで、和室に向かった後でどうしたの?」

「あ、そうそう、それでさ、一人きりじゃない。暇だなぁ、ゲームでもすっかなぁ。と思ったときだったのよ」

「なんでそこでゲームなのよ」

「え? いや、まぁ、ゲーム借りてるし、やっぱそれなりにハマってんのかなぁ。篠崎みたいにオケモンコンプリートとかは狙って無いけど。結構おもしろかったし」

「そんなもの、興味すら湧きませんわね」

「私もそうだったなぁ。でも実際やってみるとコレが結構、ほら、やってみ」

「え? ちょ、いや、私は……」


 ゲーム機を手渡された日上。すかさず貝塚が説明を始めたので二人を放置して原の話に戻る。


「まぁ、そんな訳で、ゲーム機取り出したらさぁ、隣から物音がしたわけよ。え、何コレ、恐って思ったから恐る恐る部屋を出て隣確認しに行ったんだけどぉ」

「そこでよく確認しようと思ったわね。わたしだったら部屋からでないわよ」

「カギ掛けますよね」

「誰かいたら話相手になんじゃん。だから見に行ったんだし」

「危険人物かもしれないのによくもまぁ……」

「いや、木場、普通クラスメイトしかいないから危険だとは思わないからな」

「あら、そのクラスメイト内で殺し殺されしてるのよ。危険だわ」

「だが、全員が危険だと怪しんでいては誰も信じられなくなるぞ」


 木場の言葉に貝塚が割り込んできた。

 むぅっとしかめっ面する木場だったが、話が進まないからだろうか、それとも論破出来ないと思ったのか口を噤んだ。


「んでま、空き教室覗いたんだけどさ、男が一人居たのよ。その顔が大河内にしか見えなくって、思わず悲鳴あげちゃったわけ。相手も気付いたのかあんたたちが駆け付けた時には消えちゃってたわ」


「んじゃあ、結局本当に大河内だったかどうかは確証ないのか」


「あー。まぁ、でも大河内にしか見えなかったしぃ」


「なら、窓はどうだった? 最初に見た時開いてた?」


「い、いやぁ、そこまでは……」


「……役に立たないわね」


 木場、言い方。

 なんかもう、その言い方のせいで原がムッとしてるじゃないか。


「よっし、ゲットですわッ!!」


 突然上がった声に思わず皆の視線が集中する。

 拳を突き上げた日上が視線に気付いて固まった。

 そしてゆっくりと拳を下げると、耳まで赤くなりながらゲーム画面に視線を落として集中する。


「ところでさぁ、貝塚は何でここに居んの?」


「うむ、僕はその、隣の体育館倉庫で小川と川端が煩くてな。特に川端が……」

「なっ!? ま、まさかそれって!?」

「お、お楽しみ状態!? クソッ先を越された!」

「ま、まぁそういうわけで別の寝床を探そうとだな……」

「ああ、それなら茶室開いてるから寝て良いと思うわよ。原さんカギは?」

「ほいよ。貝塚にあげるわ」

「いいのか? しかし女性陣は?」

「「「ここで寝るから」」」

「ちょっと待てぇ!?」


 見事ハモッた木場、十勝、中田に俺は思わず心の悲鳴を上げた。

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