二日目の終わりに3
シャワールーム手前に来た時だった。
別の方向からやってきた足立と田淵の二人とはち合わせた。
まさか二人が腕組んで楽しそうな顔をしてるとは思わなかった。
一体何があった?
「うお、沢木!?」
「あら、二人もシャワー?」
「ああ。足立と田淵も……か?」
「ええ。事後のシャワーよ。汗だくだもの」
「あ、あの、二人は、付き合ってるの?」
光葉が聞かずにはいられないと尋ねる。
すると二人は顔を見合わせ、困ったような顔をした。
「あー、なんつーかな。やり過ぎたモン同士傷の舐め合いっつーかな」
「正直、皆への恨みはまだあるけど、私が佐代里見捨てたのは事実だし、皆を恨むのは筋違いだって思えるようになったわ。香中にやられたことも……上書きしてくれたし」
ぽっと顔を赤らめる非純情乙女。
何がどうしてそうなった? というか足立はまさか田淵を落としたのか?
じぃっとなぜか光葉にジト目を向けられながら俺は二人の話を聞きつつシャワールームへと向かう。
「あれ? また珍しい取り合わせが増えたわね?」
「ん? うわっ!? 篠崎!? なんで男子シャワールームに!?」
「え? いや別にどっちでもいいじゃん。この時間に使う奴なんてほとんどいないっしょ」
確かにシャワーを浴びに来るには少し早い時間だ。とはいえ誰も入って来ないって訳じゃない。
現に俺達が来ている訳だし。
光葉と田淵が女子側に入って行ったからよかったものの、ここ覗かれたらなんか俺と足立が篠崎押し込めて襲ってるようにしか見えないだろコレ。
「原が探してたぞ、オタク共の統率してくれって」
「え? あー。マジかぁー。めんどいけど仕方無いなぁ子豚君共は」
シャワーを浴び終えた彼女はプール用に学校に置いていたのだろう。バスタオルで頭を拭きながら出てくる。
当然身体は丸見えだった。
「うおい、身体!?」
思わず足立が叫んで顔を背ける。俺? 当然ガン見である。眼福だ。
「あー? なに足立。もしかして女の身体直視できない童貞君?」
「ち、違ぇし」
「はっはー。チェリーボーイに私の身体は刺激強過ぎかぁ。ちょっち待ってねぇ。服着るから」
「さすがギャル。男に見られても気にしてないのか……」
「いや、それは偏見だからね沢木。っと、もういいよ」
制服を着直した篠崎が鼻歌交じりにシャワールームを出ていった。
俺たちは何とも言えない表情で顔を見合わせ、無言で個室に向かう。
前かがみだったのはどちらも指摘はしなかった。
ちなみに、俺が入った場所は篠崎がシャワー浴びてた個室。無駄に男臭くない良い匂いが残っていたのは約得だと思っておこう。
男二人でシャワーを浴びる。
隣のモヒカンヘッドが湯を浴びてへたっていく。
ただのロン毛兄ちゃんになってしまった。
「沢木……」
「ん?」
「田淵の奴は俺が面倒見ることにする。まだ危なっかしい感じもあるしな。出来るだけ他の奴とは合わせねぇようにするよ」
「その方がいいなら頼む」
「ああ……あと、これから大門寺サンたちに謝りに行くんだ。何処居るか知ってっか?」
「大門寺たちか。確か屋上は今の最上にはキツいってことで……開かずの教室横の空き教室に居る筈だ」
「ああ、あの辺りな。了解」
開かずの教室は俺達学生の間では有名なのだが、教師たちにとっては違うらしい。
前に教師に聞いてみたが、ああ、あの教室なぁ。と言葉を濁された。
どうもどういう用途の教室なのかは知っていた様子だが、見事に答えをはぐらかされたようで、結局どういう教室なのかは教えてはもらえなかったのを覚えている。
多分たいしたモノではなく、校長のヤリ部屋とかなのだろう。
「っし、気合い入れていくか。とりあえず殴られるの前提で!」
まずはその髪型何とかした方がいいぞ?
両頬をパンッと叩いて気合いを入れた足立が一足先にタオルで身体を拭きながら出る。
俺もシャワーを止めて頭を拭き、身体を拭き、前を隠してシャワールームを後にする。全裸の足立が待っていた。
「いや、隠せよ」
「男同士なのに恥ずかしいことなんざねぇだろ? それとも皮被ってんのか?」
「アホか。お前と一緒にす……なんだとっ!?」
「あ゛?」
「いえ、うん、失礼しましたアニキ!!」
「ちょ、待て、お前何処に向けてお辞儀してやがる!?」
足立とアホな男の会話をしながらシャワー室を出ると、丁度光葉と田淵が出てきたところだった。
田淵がしおらしくなっている理由はわかったし、田淵が暴走して光葉に何かしたりもしなかったようで安心した。
足立が居たのと、篠原ショックのせいで田淵の危険性を普通に忘れていたが、何も無くって本当に良かった。
さすがはアニキだ。田淵の牙を完全に叩き折っちまったぜ。