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それぞれの午後2

 今更だが、人物紹介をしようと思う。

 なぜって? 宿直室に女が五人、男が一人。つまり、蚊帳の外過ぎて暇なのである。


 という訳で俺、沢木修一は中肉中背、特徴的な容姿でも無くちょっと人付き合いの苦手なシャイなあんちくしょうである。ちなみにこれは死語。

 宿直室のちゃぶ台前で、女子トークが繰り広げられているのをぼーっと眺めているだけで、話に加わろうとすら思えない引っ込み思案な青少年である。


 そして俺を放置して話を繰り広げているのは、右から忌引光葉。

 俺がレイプしてしまった小柄なツインテール少女である。

 眠そうな目で湯呑を両手に持ってまったりしている。可愛……おっと思わず見惚れる所だった。

 正味、恨まれても仕方無い酷い事をした相手なのだが、最初のトークが良かったのだろうか? 男女仲はそれなりにいいと思う。油断して香中みたいにならない事だけは神様に祈っておくが。


 隣に居るのは木場実乃里。

 黒髪ロングで冷たい印象の女性だ。ミステリー好きらしいのだが、今は高坂のことで気落ち気味。

 姦しい三人組の話を頷くだけで殆ど話には参加していない。

 一応光葉にとっては三人娘から話が振られることを防ぐ壁の役割をやってくれてる為か、時折気の毒そうな顔を木場に向けていた。


 木場の隣には日上佳子。

 丁度俺の向かいに座る彼女は、金髪ドリルの凄い髪型だ。

 それというのも、昔、小川がゲームしているのを大河内と話していた時、金髪のドリルヘアなお嬢様っていいよな。みたいな会話を聞いてしまい、その次の日からこの髪型を維持しているそうだ。

 性格もその日から変わったようで、傲慢になり、ですわ口調になり、笑い声はおーほほほほ。胸を張って高笑いする姿は普通にお嬢様にしか見えない。

 でも、実は川端とか中田の方がお嬢様なんだ。日上は一般下流家庭である。


 もともとは引っ込み思案なメガネッ娘キャラだったはずなのだが、随分と変わったものである。

 そのせいか、小川ハーレムの中でも一人浮いた存在で、でも小川からは結構好印象だったりする。

 恋愛感情うんぬんよりも愛玩生物として見られているようなのだが、日上は気付いていないようだ。


 日上の隣に居るのが十勝眞果。

 光葉と同じか少し高い位の背丈で、オカッパ貧乳寸胴という一部マニアからは絶賛の容姿で、オタク共からは座敷童子キターと言われたほど。

 彼らからすれば褒め言葉だったようだが、本人は気にしているようでオタクたちには敵意しか向けなくなった。

 放送部をしていたことがあるらしく、時折皆を集める時には彼女に頼めば校内放送をしてくれるようだ。


 小柄ながらも負けん気は強いため、他の皆を押しのけてでも小川に猛烈アタックを掛けたこともある。

 残念ながら背が小さ過ぎたのか妹扱いしかされなかったのだが。

 それでも彼女は諦めることなく小川にアタックし続けている。


 最後に、真の大金持ちながら容姿が平凡なモブ顔で小川の恋愛対象になれなかったらしい中田良子。

 セミロングの髪をサイドポニにしている細身な彼女は良家のお嬢様といった立ち振る舞いで他から一歩離れた視線で小川を観察し、的確に二人きりになれる時を狙って接触することが多い。

 でも、やっぱり狐目なせいか、容姿が好みから外れているようで、今のところ牧場や川端に敗北を喫している。

 戦略や媚び方などはかなり男受けするはずなんだけどな。好みの容姿かどうかで印象が変わってしまうのが失策か。


 今は小川のいいところを口々に言いながら木場に時々話を振って、小川君のここ、素敵よね? と同意を求めて来る。木場は全く興味がないようで相槌打つだけなのだが、そうか。これがハーレムの恐ろしさか。

 俺は気付いてしまった真実に思わず戦慄した。

 彼女達は普通に話しているように見えて実は新たなハーレム候補を引き込もうとしているのだ。


 第三者から聞いた好意程相手の注意を引くモノはない。彼女達が小川のいいところを告げることで小川ってそういうところ良い奴なんだ。と他の女性が興味を持つ。それが積み重なることで小川の知らない間に彼を気になる女子が増えていくという、恐ろしいシステムが稼働していたのである。


 このままでは光葉まで小川の毒牙に掛かりかねない。

 なんとかこの危険人物たちを宿直室から叩きださねば。

 そう思った時だった。


「沢木、入るぞ」


 突如男の声と共に巨漢が宿直室へと侵入して来た。

 開かれたドアから一歩。男は部屋の状況を見て一瞬気押される。

 そりゃあそうだろう。まさかこの部屋が女性陣に占拠されているとは思うまい。


「邪魔、したか?」


「いや、全然。何か用か大門寺?」


 やって来たのは大門寺。その後ろからひょこっと最上が顔を覗かせる。

 不安げな表情の彼女は、しっかりと大門寺の背中を両手で掴んでいた。


「少し話がある」


 そう告げて、大門寺と最上が無遠慮に部屋に押し入ってきた。

 てっきり俺を外に連れ出すのだと思っていた女性陣が凄く嫌そうな顔をしていたが、気のせいだと思おう。この部屋は俺と光葉の部屋だ。お前らの部屋じゃ無い。

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