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それぞれの午後1

 昼食を終えた俺たちは、皆で高坂と香中の遺体を埋葬することになった。

 香中はシーツに包んで小川と俺で持ち上げる。

 死体運びは重いから男の仕事だ。とか及川が言ったせいで他のメンバーまで同意。


 坂東たちは俺非力だからとかいう理由で辞退して、結局俺と足立に決まりそうになった。

 そこに小川が率先して立候補したのだ。

 なんでも牧場を埋葬したときに手伝えなかったからということらしいけど、もう一つ、今回の騒動で傷心気味だろう足立に二人の遺体を運ばせるのは悪いということらしい。


 小川ハーレムが才人がする必要は無い。とか言いだしていたけど、小川自身が立候補したわけだし、男が運べと言っていた自分たちのせいで、小川にやんわり窘められてからはそれ以上文句を言うことは無かった。


 香中を桜の根元に連れてくると、次は高坂。

 激突で後頭部を割ったようで見るに堪えない状況だったが、小川と足立と俺でなんとか運び終える。

 しかし、なんで人とのつながりが殆ど無かった俺がこんなに積極的に関わっているんだろう。

 正直今までの人生の中で人との密集度が最高潮なんじゃないかと思う。


 坂東たちが必死こいて作った穴に二人を埋葬する。

 俺達が遺体運びしている間に穴掘りをさせられていたようだ。

 もう、スコップ類は穴掘り用の為にこの場に突き刺したままにしておくようだ。

 皆、まだまだ死体が出るだろうと見越しているのかもしれない。


「……佐代里」


 田淵の呟きが聞こえた。

 俺は振り向こうとしたのだが、木場が話しかけて来たのでそちらに意識を向ける。


「ねぇ、変じゃない?」


「変? 何がだよ」


「屋上から落ちたから高坂さんは死んだ。死体もある。でも、それならもう一人死体があるはずなんだけど……」


「え? あ……そういえば」


 大河内の死体、無かったな。誰かが埋めたのか?


「まぁ、屋上から落下したのは皆が見てた訳だし、誰かが埋葬したんでしょ。小川君かしら?」


 とうの小川は牧場の墓に手を合わせているところだ。隣では川端が小川君は私が幸せにするね。とか告げている。腹黒いなあいつ。


「なぁ、もう、帰っていいか?」


「足立? ああ。もうすることは無いから大丈夫だ」


「じゃあな。夕食には顔を出す」


 踵を返して手の甲だけを俺たちに向けて去って行く。

 一人になりたいのだろうからそのまま行かせてしまおう。

 大門寺達も気になるといえば気になるんだけど、あの二人も二人きりにした方がいいだろうし、今日はもう何もする気にならないから俺も宿直室に戻るか。


 しかし……

 改めて皆を見る。

 小川たちは? 小川を中心にハーレム共が纏まっているようには見える。

 でも川端が抜けがけしたせいで十勝、中田、日上は川端に敵意を抱いているようだ。

 小川が居ない女性だけの場所で何かしら陰険な嫌がらせはしてそうだけど、その内エスカレートしたら危険だな。


 2班は? 大門寺は言動も顔も恐い。最上は殺人者みたいな立ち位置になってしまっている。

 足立は精神不安定みたいだし、田淵は狂ってしまってる。俺の言葉で悔い改めてくれてればいいけど、一度狂ってしまってるから変な方向に自己納得して皆に危害を加えるかもしれない。


 3班は? 篠崎がオタサーの姫になったため御堂と足立と山田がベタベタしている。

 貝塚は落ち付いているようだし、原は呆れているが、これだって立派な格差だ。

 何かさらなる切っ掛けがあれば殺人にすら発展するだろう。


 4班は? 今は表面化してないが井筒の間食グセは早急に何とかしないとマズい。

 今日もおにぎりをつまみ食いしていたことが発覚した。

 幸い大門寺が居なかったからよかったが、下手したら殴られていたところである。

 賀田も危ない。坂東たちは見つめるだけにしているようだが、ここでは何しても捕まらないのだ。行動を起こす奴が出て来ても不思議ではない。

 レイプ犯も既にいることだし……誰とは言わないが。


 5班は? 当然光葉と所沢が爆弾だろう。

 被害者は俺だ。

 この班で一番危険地帯に居るのは俺なのだ。

 今更ながら肝が冷えて来た。


「ふぅ、我が家は落ち付くわね」


「いや、ここお前の家じゃないからな?」


 取りとめの無い事を考えながら宿直室に戻って来たのだが、俺と光葉に加え、当然のように木場が居座っていた。


「それにしても殺風景ですわね。何とかなりませんの?」

「茶室よりは過ごしやすいかなぁ」

「あ、ラーメン発見」


 ついでになぜか付いて来た小川ハーレム。


「オイ待て、何故貴様等までここに来る」


「だって、校長室は血塗れでしょ。新しく貰った体育館倉庫は黴臭いし、ついでに才人様と美海が占領してるし」


「というわけで午後の間だけ過ごさせて」


 宿直室は、徐々に女共に占領されつつあるようだ。

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