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導入2

 ……

 …………

 ……………………

 ……………………あ……れ……?


 ふいに気付いた時には、既に終わっていた。

 女子トイレの一つ洋式便器に乗せられた光葉は涙目でこちらを見ていた。

 彼女の姿を視界に収めるのが辛い。


「……なん、で……?」


 荒い呼吸で息絶え絶えに尋ねてくる。

 その声には恐怖があり、疑問があり、そして拒絶があった。

 はらはらと流れる涙が痛々しさを強調する。


「あ……俺、俺は……」


 思わず逃げようとした。けどドアに背中が当りはっとする。

 今逃げるのは愚策。謝るのも愚策。既に死を覚悟してヤッてしまったのだ。

 運がいいのか悪いのか、襲う直前に幽霊に取り殺されることもなく、やってきた部外者に二人揃って殺されることも無く、誰の阻害もなく襲ってしまった。

 正直本当にここまで行えてしまうとは思わず、もはや何をしていたのかすら記憶もあやふやな程に正気じゃ無かったと今なら言える。

 だが、彼女にとっては自分はただの……レイプ犯だ。

 ならば今やることは……


 華奢な少女に圧し掛かるようにして抱きすくめる。

 びくりと強張りながらも身体からは力が抜けたままの少女の耳元に、告げる。

 必死だった。もう既に襲った事実は覆しようがない。どれ程謝っても許されることではないことくらい自分だって理解していた。

 ただ、自分がしてしまった事の重大さに恐怖することも取り乱すこともなかった。

 自分は近いうちに殺される。そんな漠然とした思いがあるからの大胆な行動だったのかもしれない。


「学校が隔離されたらしい」


「……え?」


 唐突に告げたのは現状の話。

 どんな言葉を掛けられるか身構えていた彼女の虚を突く。

 意味がわからず戸惑う彼女に畳みかけるように告げる。


「俺達のクラス以外誰も居ないらしい。もしかしたら死ぬかもしれない。だから死ぬ前に好きな女を抱くことにした」


「な……え?」


 本当は好きでもなんでもないただ眠っていたクラスメイトの可愛い女の子でしかなかったが、それでも罪を逃れるためか、俺は必死に言い訳を考える。

 相手が勝手に納得してくれるように、自分が襲われたことが偶然が重なっただけの不幸な出来事では無かったと思えるように。


「もちろん悪いとは思っている。でも、気持ちが抑えきれなかったっ」


 混乱する光葉に言葉を被せる。

 彼女を褒め、好きだといい、できるだけ好印象を植え付ける。

 とにかく必死だった。別に嫌われてもいいだろう。そう思うが、罪悪感が俺に言い訳を吐かせていたのだ。




「遅ぇぞテメーらっ!!」


 足立が俺と光葉を見付けて怒鳴る。

 物凄く恐い顔だが、面倒見がいい不良だという位置づけだったため怖気づくことなく頭を掻きながら謝る。

 愛想笑いを浮かべる俺が御免と謝ると、「ったく」と悪態一つ吐いて足立は視線を逸らした。

 体育館にクラスメイト全員が集合した。


「ここでモ○クマ登場ー……………………あれ?」


「でねーじゃねぇか」


 そりゃあそうだろ。

 思わず安堵する。どうやらゲーム世界とかではないらしい。

 となると現実一択なのだが、それはそれで悪夢であってほしかった。

 すでに俺は罪を犯した後なのだ。今更ながら罪悪感が圧し掛かる。


「あーもう、体育館来たの意味なしじゃん」

「まぁいいじゃないか伊織」

「そーだけどさー才人ぉ」

「それよりどうする?」

「他に人居ないか調べようぜ」

「あーもう。絶対ロンパ系だと思ったんだけどなー」

「僕も思った。でも違うっぽいな」

「バトロワ系も違うよな。何処にも銃器とかナイフねーし」

「じゃあこれ何の状況?」

「知らねーよ」


 皆が口々に話しだす。

 耳が拾えたのは近くに居た奴の声だけだ。

 そんな彼らの側をゆっくりと歩き、隣の光葉と共に少し離れた場所に移動して皆を見つめる。

 人間観察とでもいうべきか。やることが無いので観察者になっておいた。


 光葉への説得は思った以上に上手く行った。

 最後の方はそ、それじゃしょうがないなぁ。とか言いながら抱きしめ返されたのでレイプしたのは許されたのだと思う。そのまま二回戦に突入したのは内緒だ。

 二度目は彼女もちょっと積極的だった気がしなくもない。多分気のせいだろうけど。


 和姦ではなかったが一応彼女が出来ました。多分。その代わり浮気とかしたら恐ろしいことになりそうなので光葉にがんじがらめにされた気はするが、そこはまぁ自業自得だろう。

 俺が光葉を襲ってしまったのだからむしろアフターフォローとして一生面倒を見る位、俺としては苦ではない。むしろ嬉しい。俺の命がどれ程持つかは分からんが。


「本当に、閉じ込められてた」


「言った通りだろ。嘘は言ってないぞ」


「……ん」


 こくり、頷く光葉の耳が赤くなっている気がする。

 一つの事が真実だったせいで俺が言った事全てが真実だと思ってくれたようだ。

 つまり、自分の事が好き過ぎて誰もいなくなったことでつい襲ってしまったという、好意の暴走。一歩間違えればストーカーだが、今までモテたことのない光葉からすればそんなクソな俺でも好意を自分に抱いていてくれたということで嬉しいのだそうだ。チョロインさん過ぎて心配になる。俺が心配するのもおかしな話なのだが。


「あ……」


「どうした?」


「垂れてる」


 何が。とは聞かないことにした。

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