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第二回学級裁判1

「沢木君、続きをお願い。そこが発端になったのはわかったわ」


「ああ。そこから皆別れたんだけど……」

「待ちたまえ沢木氏」

「おお、珍しい、熱血オタクどうしたの?」

「ちょ、篠崎氏熱血オタクって……いや、そんなことはどうでもよろし。沢木氏、折角の学級裁判。集まった者がいるなら事細かに伝えたまえ。報告に穴があれば推理に支障をきたすじゃないか」

「え? 推理って、あんたがすんの? マジで?」

「だから篠崎氏、俺を下に見過ぎじゃないか? とにかく、学級裁判だぞ、前回はさっさと犯人が見つかったが今回のあらましを聞いて推理したいではないか。学級裁判ゲームが実際に行われてるんだぞ!」

「そうですぞ! 犯人を見付けるためにも詳細なデータが欲しいですぞ」

「ゲームを現実でか。拙者も犯人や被害者ではないのでぜひとも推理に参加したいな」

「という訳でよろしくぞなもし」


 オタクチームから詳細プリーズの声が掛かった。

 俺は困った顔で木場を見るが、木場は両手を肩下まで上げて肩をすくめてみせる。お手上げだそうだ。

 仕方無いので出来るだけ詳細に伝えることにする。


「んじゃぁとりあえず出来るだけ詳しく伝えるから、疑問に思った事とかはどんどん言ってくれ。答えられる範囲で教えるよ」


「よーし、燃えて来たァ!!」

「ちょっと貝塚、これは現実で殺人が起こってるのよ、不謹慎だわ」

「ゴリ川煩いぞなもし!」

「ふっ。邪魔するってことはお前が犯人か?」

「馬鹿言わないで」

「ああもう、話が始まらないですぞ。沢木氏続きを!」


 デスゾに促され俺は溜息を吐きながら説明を再開する。


「香中の悲鳴を聞いてやって来たのは裏庭で農作業をしていた俺、光葉、所沢、木場、四班の普通チーム全員。つまり、坂東、榊、三綴、及川、賀田、井筒、二班の高坂と足立の12人だ。俺たちは悲鳴を聞いて保健室の窓から保健室に入った。あと、遅れて保健室の入り口から校長室に居た小川と川端もやってきた。窓開けてくれたのは小川な。その後血塗れの鋏を持った田淵が戻ってきた」


「ゆ、有言実行、したのよね?」


「ああ、また外れた!?」


 原が恐る恐る田淵に尋ねる。するとタイミングよく隣の篠崎が悲鳴を上げた。こんな時でもゲームしてるらしい。壱岐といい勝負である。

 俺のチームの壱岐も学級裁判には参加する気がないようで、ゲーム画面に視線を落としていた。


「……ええ。及川さんの提案を実行したわ。ちょっと血が飛び散り過ぎたし、切り取ったのが邪魔だったからトイレに流して来たの。あとで四肢を折っとこうと思ったんだけど、それより早く高坂たちが来たのよ。残念なことに」

「お、おいおい、あのまま悲鳴が上がっても様子見に行かなかったら香中どうなってたんだよ?」

「出血多量だったからまず死んでたでしょうね。運良く生き残ってもダルマ状態って奴になってたかしら。あら、でもその方が死なずにすんだのかしら?」

「そこで死んだ訳じゃないのか」

「最上が居らん場所で死んでたら最上に血が付いたりしないですぞ?」

「まだ続きがあるんだな。拙者わくわくしてきたぞ」

「不謹慎だわ」


「と、とにかく、香中を救出した俺たちは手当てを終えた香中を足立に任せて裏庭に戻ったんだ。小川と川端も校長室に戻ったんだよな?」


「ああ。香中が不安だったけど、足立も居るし、大丈夫だろうと思ってな」


「裏庭に戻った俺たちは作業道具を片づけて、及川、賀田、井筒、木場、光葉が昼食を作りに食堂に向かった。遅れて坂東、榊、三綴、所沢も食堂に向かったはずだ」


 ここまでは皆が頷く。

 

「昼食を作るのは良かったんだけど、なぜか坂東君たちも来て椅子に座ったままこっちを凝視してるのよ。手伝ってくれてよかったのに」

「別にゴリ川見てたんじゃないぞ? 賀田さんの包丁使いを見てたんだ」

「うぐっ、視線を感じたのはそのせいか」

「もー、天ちゃん緊張して指切りそうになったんだよ。あんまり見ないであげて」

「そ、それは、すまん」

「しかし賀田さんを見守るのは使命のようなもんだしな」

「馬鹿だらけじゃねぇか……」

「どうでもいいけどさぁ、さっさと核心行ってくれない? ゲームの電池残量ヤバいのよ」

「ああ、篠崎氏、それなら拙者の電池を貸そうか? 予備沢山持ってるから」

「ほんと!? ありがと山田」


 と、電池を受け取った篠崎が突然山田の頬にキスをする。


「おっほぅ!?」


 童貞男子には刺激が強過ぎたようで山田が物凄い声を上げて前かがみになった。

 とりあえず気付かなかったことにしとくか。それが大人の対応だろう。


「馬鹿な!?」

「こ、こんな奇跡が!? あ、そうですぞ、篠崎氏、電池はこっちにもありますぞ!」


「え? いいの。ありがと」


「おっほぅ!?」


 電池を貰った篠崎がお礼のキスで答える。オタク男子達が一気に色めき立つ。

 御堂も恥ずかしげに前かがみになりながら電池を渡し、受け取った篠崎はお礼に彼にもホッペにチューを行った。


「ぞなもしっ!?」


 なんか変な声上げたぞ御堂の奴。

 もはや彼らにとって推理など二の次かもしれない。

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