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第二の殺人3

 放送から数分、俺たちは屋上に集まっていた。


「おいおい誰だよ屋上のドア壊したの。アレ誰が直すんだ?」

「つか何でまた集められたの?」

「食事出来たから食堂集まってたのに一番遠い屋上来いって、何この苦行?」

「はぁ、最悪。今日はいいこと一つも無さそう」

「何で美海なのよぉ……」

「しばらく何も考えずに眠っていたかったですわ。何の用なの?」


 ぞろぞろと屋上へとやってきた皆が口々に告げる。


「食事、出来たんだけど?」

「呼びに行ったのではなかったか玲菜?」

「呼びに行ったよぉ。天ちゃん。でもね、その、うぅ、どうしてまた起こっちゃうの……」


 うひーんと涙目で賀田に抱きつく井筒。


「うわっ、なんだ? どうした?」

「何か辛いことがあったのね、可哀想に」

「ゲームはまぁ、歩きながらでもできるからいいんだが……」

「階段を歩きスマホは危険ぞなもし」

「ゲームもでしょ。つかスマホ使えないからソシャゲもできないっつの」

「やった、マルモンげっと」

「それ、ほぼ初期の奴じゃない?」

「煩いわね壱岐っ。ようやく十匹目のオケモンげっと!」

「え? 少なっ」


 対象メンバー以外は皆真剣さは皆無だった。

 しかし、興味の無かった彼らも、最上を見た瞬間固まった。

 しばし、声が消え去る。

 なぜならば、香中の返り血を浴びたまま、拭きもせずに屋上に来たのだ。

 今、足立が保健室に寄って拭くモノを探してる最中。あ、来た来た。


「悪りぃ、待たせた」


 消毒用のボールだろうか? 金属の丸底器を大事そうに両手で抱えて足立がやってくる。

 中には水が入っており、そこにタオルが浸かっている。


「とりあえずこんなのでいいっすか?」


「貸せ」


 乱暴にタオルだけ引っ張る大門寺、両手で水気を絞って丁寧に最上を拭いて行く。


「後でシャワー浴びて来いよ明奈」


「う、うん……でも、私、死ぬんじゃ……」


「大丈夫だ。沢木を信じろ。お前が悪いわけじゃない」


 だろう沢木。失敗したらテメェどうなるか分かってるだろうな? そんな眼光が俺に向けられる。正直心臓が止まりそうなほどに恐い。けれど今回ばかりは大丈夫だ。その筈なんだ。


「お、おい、何があったんだ?」

「最上さんが血塗れ? もしかしてまた誰か死んだ?」

「ここに居ないメンバーって……香中?」

「ちょ、おいおい、またなのか? 嘘だろ!?」

「香中いろいろ問題児だったからな。拙者、きっと奴は殺されると思っていたぞ」

「不謹慎よ。それで、本当に死んだの足立君?」


 代表するように及川が尋ねる。なんでここでお前が出てくる。

 いや、まぁいいんだけど。

 俺は視線で木場にアイコンタクト。気付いた木場は私当事者じゃないんだけど? と困った顔をしたものの、司会役を前回やったせいか、今回も彼女が担当するようだ。


「さて、実際私が体験した訳じゃないし、部外者なんだけど、一応司会進行やるわね。異議のある方はいる?」


 木場が周囲を見回す。

 誰からも反論は無かった。

 わざわざ司会進行をしてくれるのだ、無関係だから出しゃばるななどという奴はここには居ないらしい。


「それじゃ、とりあえずことのあらましを教えてくれる? えーと……」


 今回部外者なせいで何があったか理解すらしていない木場では司会も難しかったかもしれない。

 当事者が分からず困った結果、誰に聞けばいい沢木? みたいにアイコンタクトしてきた。


「あー。それじゃ、今回起こったことを順序立てて説明するな。足立、高坂、大門寺と最上、あと田淵も、フォローと補足を頼む」


「あら、私も?」


「言える範囲でいいよ」


 田淵がふぅん。とどうでもいいように頷く。

 別に隠す気はないとでも言うような態度だ。


「俺も当事者ってわけじゃないけど、裏庭で農作業してたんだ。一緒に居た井筒さんたちは知ってるよな」


「あ。うん。裏庭で今日使った野菜の種を埋めたんだよね」


「ああ。その途中で悲鳴が上がった。保健室から男の悲鳴だ」


 正直あれは驚いた。


「ってことはそこで香中が殺されたのね? 最上さんに?」


 木場が思わず呟く。皆の視線が一斉に最上に向いた。


「誤解するようなこと呟くんじゃねぇッ、ブチ殺すぞッ!!」


 しかし、大門寺がギロリと睨みを利かせたことで皆一斉に視線を逸らす。


「その時最上は多分大門寺と屋上だった。保健室には居なかったよ。なぁ木場さん」


 木場は、ああ、あの時の悲鳴のことか、と告げて頷く。


「その場面なら私も居たわ。香中くんのアレが田淵さんに切られた所ね」

「え? アレ、切られた?」

「ちょ、まさかそれって……」

「な、なんですかな? や、やっぱり及川案実行ですぞなもし?」

「私の……あ、え? アレ本気にしたの?」

「ええ。丁度良い案だったから実行したわ。取ったのは不要だったからトイレに流したけど」

「ひぃぃぃぃっ!?」

「ひ、人でなし、鬼かっ、悪魔か君はっ!?」


 皆が察したらしい。

 田淵はどうでもいいといった様子で木場に視線を向けた。話を先に進めろってことらしい。

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