表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/246

朝の運動

「んじゃー、やるかー」


 体操服というかジャージに着替え、裏庭へとやってきた俺たちは目の前に広がる更地を前に気合いを入れる。

 装備は軍手とクワである。

 園芸部部室にクワとスコップがあったので男手は全てクワ装備で畑を耕すことになったのである。


 三バカトリオがブツクサ言ってたけど、賀田が男なんだ、私よりも耕せるだろ? と挑発気味に言いながら耕し始めると、これは負けられないとクワを持って対抗する三バカトリオ。

 なんか賀田より耕した奴が賀田とイチャラブできるとか勝手に決めていた。

 でも三人よ、賀田の耕す速度、お前ら三人揃っても敵って無いぞ?


 俺も所沢と足立に左右を陣取られて耕し始める。

 うわ、これは結構面倒臭い。体力使うし腰が痛くなるな。

 というか所沢。へばるの早くないか?


「チッ。運動してないせいかこの位で腕が震えやがる」


「俺らの中で一番の功労者は賀田さんか……体力あるなぁ」


「私は剣道で素振りをよくしてる。クワの使い方も同じようなものだ」


 だいぶ違うと思うのだが、俺と足立にそう答え、さわやかな汗を拭う賀田。

 クワを地面に垂直に落とし片手を柄頭に置きながら額の汗を拭う姿は絵になるなぁ。

 凄く綺麗だ……はっ!?


「ぎるてぃ?」


 いつの間にか間横に来ていた光葉がジト目で見上げて来た。


「な、何が罪になるのか、わ、わからないなぁ。うん、光葉可愛いね」


「あぅ……」


 賀田から目を逸らして光葉の頭を撫でて嫉妬を沈める。

 顔を赤らめる光葉は普通に可愛かった。

 三バカトリオがスマホで賀田を撮影しまくってたから後で送って貰おう。


「えーと、苗は分けて植えた方がいいんだよね?」


「これとこれは隣の方がいいわ。メロンとトウガラシは交互に埋めましょ」


「メロンって接ぎ木しなくていいの?」


「さぁ? 普通に植えれば育つんじゃない?」


 井筒と高坂は適当に、及川は細かく仕分けして種を均等に分けていく。


「耕すの終わったら各自種を持ってって自分が耕した場所に植えて行って」


「なんか俺らだけ働かされてね? 女子仕分けだけじゃねぇか」


「しかも木場は何してんだよ!?」


「あら、蒔き終わった後に水を蒔くかかりよ。準備してるの」


 とホースを構える木場。楽そうな作業を選んだものである。

 男達から不満が漏れるが木場は気にした様子もなく早く蒔いてくれる? とむしろ急かして来た。そういうところが友達出来ない理由だぞ木場。


 種を蒔いて水を掛ける。

 放水中は休憩を行う男達。

 既に普段使わない筋肉を使い過ぎてパンパンだ。


 休んでいると光葉が寄って来て俺の脚を揉み始める。

 どうやら疲れをほぐしてくれているらしい。興奮してむしろ一部が硬くなってしまうのだが、悟られないように揉みほぐされるままにしておく。

 男どもから嫉妬の血涙が流された気がするが気付かなかったことにした。


「しっかし、これだけ男共がいて誰も賀田さんに勝てないとか……」


「うるっせぇぞ高坂。賀田は部活してんだろぉが。俺らはンなもんしてねぇんだよ。普段の鍛え方が違うっつーの」


「それでも二倍はないでしょ足立……」


 実質、俺や足立の二倍くらい賀田が耕した。三バカトリオは俺達より耕せてないので三人の耕地面積合わせて賀田の三分の二くらいである。所沢の耕地面積を合わせてようやく賀田の働きと釣り合う感じか。

 運動部との差が如実に出た感じだな。

 俺も運動し始めた方がいいんだろうか?

 まぁ、とりあえず今日明日は筋肉痛だろうからしばらく運動は良いかな?




 そんな俺達が種蒔きを行っている頃、保健室では地獄が始まっていた。

 両手両足を結束バンドでベッドに固定された香中の元へ、そいつは無遠慮に保健室のドアを開いてやってきた。

 わめき付かれていた香中は、その人物を見て再び叫びだす。


「田淵ッ、てめぇこれはどういうことだ! さっさと解放しろっ!」


 入って来たのは田淵美里。

 彼女はボールに消毒液を注ぎ、そこに持って来た鋏を付ける。


「お、おい? 何してんだ?」


 何かマズい。

 本能的な危機を察した香中は戦慄した顔で告げる。

 クスリ。

 田淵が笑った。壊れた笑みで嗤いだした。


「お、おい? 待て、来るなッ、来るんじゃねェ!!」


 ゆっくりと、鋏を拭った田淵が歩き出す。

 香中の側までやってくると、彼のズボンを脱がし始めた。


「お、おい、何する気だ。なぁ、待て、待ってくれ。話せば分かる!」


 慌てて身をよじる。

 悪意を乗せた笑みを浮かべ、跳ねまわる香中を観察する田淵。十分堪能したのか、抑えつけながら鋏を開く。


「や、止めろっ、止めてくれっ」


 香中はもう、抗う術などなかった。必死に泣き叫び懇願する。

 だが、それが田淵に届くはずもない。


「私が止めてって言った時、アナタは止めてくれた?」


「あ……ああ……嫌だ。止めろ、止めろぉぉぉぉ――――っ!!」


 学校内全てに響き渡るような男の悲鳴が轟いた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ