朝食時間3
「私がか……?」
話を振られた賀田が困った顔をする。
どう考えても田淵が香中へ復讐する方法を皆で考えろと言っているようなものなので答えに困るのだろう。
下手なこと言えばそれを実行しかねないし、でも簡単過ぎる復讐方法だと田淵が納得しない。
とはいえそのままでは及川か井筒の案が実行しかねない。友人としてはそれで二人が傷付くのは防ぎたいはずだ。
「そうね。お、お尻ペンペン100叩き、とか?」
お子様かよ!?
「男子からはどう?」
田淵は賀田の提案を完全スルーで男達に質問する。
賀田は涙目になった。
「顔が判別不能になるまで殴る」
「ちょ、それ大門寺サン専用技っすよ!?」
大門寺の言葉に足立がツッコミ。お前でもできるだろう? と素で答えたらしい大門寺。何事も豪快である。
「そんな事をしないようにまずは話し合うべきだ。大河内とももっと話し合ってれば、きっとああはならなかっただろうし……」
小川はそんな事を言って自嘲気味に笑う。
そこに川端がしなだれかかり、彼を慰め始めた。イチャラブ空間が展開され始めたので二人を放置しておく。
「き、金的だけでも結構ダメージでかいぞ男は」
「いいんじゃない? クソな男はそのまま玉潰しちゃえば」
「なんてひどいこと言うんだ原さん!?」
「いや、だってそういうのは去勢しちゃった方が良くない? これからも襲いかかってくるかもだし、私は嫌よ。好きでもない男に襲われるとか」
「そ、それでも去勢は酷いですぞ! どれだけモテずとも玉無しでは生きていけぬですぞ!!」
「いいじゃん、ニューハーフとして生きてけば」
「壱岐は適当なこというでないぞなもしっ」
なんかこんな話題でヒートアップしてるんだが。
俺は光葉にあーんしながらサラダを食べさせて貰い続けている。蚊帳の外で聞いていると、光葉が耳元に口を寄せてきた。
なんだい光葉?
「修君も、もう無理矢理レイプは駄目なんだよ?」
ひぅっ!?
光葉さん、その球みたいなのを握り潰すジェスチャーは何!?
やばい、光葉はヤンデレだったかもしれない。
「す。する訳ないじゃないか、あ、あははは……」
「ん。信じる……」
と、プチトマトを口に放り込んで来る光葉。
噛みつぶしたプチトマトの味は、何故か全く分からなかった。
「参考になったわ」
しばし歓談を聞いていた田淵が席を立つ。
ククと暗い笑みを浮かべている彼女はどう見ても一人にすべきではない様子だ。
香中は大丈夫だろうか? まぁ、自業自得なんだが。
俺も人のこと言えないから香中を責めることはできないんだよなぁ。
食事を終えた俺たちはその場で世間話を始める。
先程までの重い空気を払拭するために、復活した小川が率先して探索しようと言いだしたのだ。
虹の先については木場が見解を告げたために率先して調べに行こうと思う奴は居なくなってしまった。
誰も繋がってるかどうかも、戻って来れるかどうかも分からない虹の先を調べに行こうとは思わないらしい。
「とりあえず、まずは食後の運動でもして一時間後に教室に集合、そこで俺達がここに来た時の事を皆で検証してみよう。それで何かいい案が浮かぶかもだし」
「一時間後だな。なら俺は先に失礼する」
大門寺が席を立ち、最上がその後をちょこちょこと着いて行く。
「まぁ、教室に行くのはわかったし、僕たちは教室でゲームでもしとくか」
「賛成だ」
「そろそろ通信するぞなもし」
「あ、いいの手に入ったのですぞ」
「円香どうする?」
「ん、まぁゲームかな」
「私達は食器洗ったら種でも植えに行きましょうか」
「あ。そうだね。木場さん達も手伝ってくれる? 沢木君が言いだしっぺだし手伝ってくれるよね」
「では私は素振りでもして食器洗い終わるのを待っておくわ。私、洗うのは得意じゃないから」
「仕方ないわね。光葉さんも食器洗い手伝って。さっさと終わらせて植えに行くわよ」
「うん」
「日上さんも植えに行く?」
「うぅ、茶室で不貞寝しておきますわ」
「同じく、立ち上がれそうにないわ」
「何で美海なのよ。私の方が可愛いのに……」
オタクチームと壱岐は教室でゲームしながら時間まで待つらしい。
小川と川端は校長室に向かうそうだ。多分イチャラブするつもりだろう。
俺たちは強制的に種植え。普通チームの三バカトリオも強制参加だと言われて賀田さんも一緒なら仕方ないかと納得していた。
ついでに高坂と足立も暇だからと参加表明。
十勝、中田、日上はあまりのショックで不貞寝するそうだ。
方針は決まった。ということで、皆の食器を洗い終わるまで、俺はなぜか足立と隣り合って待つことになったのだった。
女性陣が全員食器洗いしてるから必然的に男が固まるんだ。
素振り始めた賀田を見るために三バカトリオは外に出てしまったし、先に裏庭に行ってるんだと。
そのため、俺の左右を所沢と足立が陣取り食器洗う女性陣を見ながら待つという謎の苦行が始まったのである。