それぞれの夜1
そして俺たちは解散する。
皆一気に沢山の事が起こって疲れたのだろう。
食事を終え、遺体を弔った俺たちは、各自寝場所の用意をするとさっさと寝てしまうことになった。
夜になるかどうかはわからないのでとりあえず寝て起きたら一日経過したということにするらしい。
大門寺にマスターキーを預けようとしたが受け取ってくれなかったのでとりあえず木場に預けてどこかに隠して貰うことにする。コレがフラグにならないことを祈りたいが、どうなることか。
ちなみに大門寺は屋上の貯水タンクの下辺りで寝っ転がっとくらしい。
最上はその近くで寝ると言っていたので別れた。
その後皆で一度職員室に向かい、体育館のカギを坂東に、武道場のカギを賀田に、そして茶室のカギを木場に渡す。
とりあえず一度そこで解散し、俺は光葉と共に宿直室へと向かったのだ。
二人きりできゃっきゃうふふしながら彼女持ちの優越感に浸りながらギッタンバッタンするつもりだった。
そう、するつもりだったのだ。
俺と光葉もさっさと宿直室に行くことにする。寄り道する気は無かった。
途中でトイレ休憩を挟みはしたが、真っ直ぐに来たつもりだった。
部屋を開けた瞬間、よっす。と高坂と木場が俺を見て来た。
おい、何故貴様等がここに居る? さっき別れたよな? 茶室に行ったんだよな?
「おい待て、女性陣は茶室だったろ」
「場所が足らないのよ。それにそんな場所いたらトイレ休憩時に足立に襲われかねないじゃない」
「こいつがどうしてもというから護衛として付いて来たわ。まさか彼女がいるのに他の女性は襲わないでしょ」
「人の恋路を邪魔するなっつの。いや、まぁ……なんだ」
レイプ犯に恋路などあるかと言われると俺は二の句が告げない。
隣の光葉を見てみれば、気にしてないよ。といった顔をしていた。
どうやら今日はこれ以上エロさは必要ないらしい。
ちなみに茶室のカギは丁度篠崎と原に出会ったので渡しておいたらしい。
高坂は茶室にトイレがないと気付いて速攻こっちに来たとか言っていたが、どうも木場の様子を見るに別の思惑もありそうな気がする。
どうせアレだろ。俺と光葉がエロに走るのを止めるお邪魔虫キャラなんだろ。
「しっかし、宿直室いいね。お茶飲めるし」
「コンロがあるのは確かに嬉しい誤算だわ。食事時以外でもお茶が飲めるもの」
ちなみに職員たちが買いだめしているのか、カップラーメンがいくつか置かれていた。
非常食としてはありがたいが、数が少ない。多分この人数なら二食で終わ……袋麺ゲッチュー。三日か四日分あるな。
いや、それでも大してないか。非常食があってラッキー程度に思っとこう。とりあえず皆には内緒の方向で。
「パックも限りあるんだからあんま無駄遣いすんなよ。一パックが出涸らしになるまで使え」
「ケチね」
「あんたの部屋じゃないでしょ。まぁ保たせるのには賛成だけどさ」
女どもが宿直室を占拠してきます。どうしたらいいですか?
三人できゃっきゃうふふしながら宿直室を探索していらっしゃる。その間俺は蚊帳の外。ただただ部屋の中央付近で立ちつくすだけだった。
しかし、宿直室いいな。ガスコンロに個室トイレ、やかんまである。
運がいい事に四人分の布団はあった。というか二組しかなかったが、二人づつなら寝れるので、俺と光葉で一つの布団に入ることになった。
これは一応嬉しい誤算だ。潜り込むと光葉は恥ずかしがって背中を向けてしまったが。逃げられたり、向こうの布団に光葉が入ったりはしないので嫌がられてはいないと思われる。
無理矢理襲いかかったのもある意味良かったのかもしれない。
いや、バレるといろいろ面倒だし所沢に刺殺されそうではあるが。
光葉という抱きしめやすい小柄美少女が彼女になってくれるならむしろ本望かもしれない。だからと言って不用意にバラす気は無いが。
あと、この部屋にはトイレも完備されているので足立から逃げて来た高坂にとっては僥倖だったらしい。
あたしここに住むとか言ってやがった。迷惑な奴である。
木場と共に高坂が布団に入る。あんま寄んな。と告げる高坂に、貴女が外に出ればいいと譲る気が無い木場。なんやかんやで結局超密着して寝入ってしまった。
寝るのが速過ぎる。
気持ちは分かる。余程疲れてたんだろう。
木場は身体を拭くとかそういったエチケットを気にすることなく早々セーラー服のまま眠ってしまった。隣に男がいるのに不用心な奴である。
レイプされても文句は言えんぞ。一応既に犯罪者だし。いや、やらんけど。
俺も寝よう。と思ったのだが、宿直室の戸締りを確認し忘れていたのを思い出し一度布団から出て戸締りを念入りに行う。
大門寺辺りが本気で襲いに来たらドアのカギだけじゃどうにもならないけど、万一にもありえない可能性なので戸締りだけをして床に着く。
何をしているのかと俺を見つめていた光葉を抱き寄せ、二人抱き合って眠りに就くのだった。