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捻じれ狂う絆

「そうなると、私達は常に一緒の方がいいかもしれないわね」


 木場、光葉は常に同じ場所に。出来れば俺、あるいは賀田、もしくは壱岐と三人以上の場所に常に身を置くのが妥当だそうだ。

 俺もそう思うので二人と出来るだけ一緒に居ようと思う。


「それじゃ、図書館に戻るか?」


「そうね。あまり時間を置くと色々と邪推されかねないわ」


「えっと、私はもう……暗躍しないよ。所沢君も死んじゃったし」


「ああ、光葉はもう参加しなくていいよ」


 ぽんぽんと頭を叩いて光葉と共に音楽室を出る。

 逆隣りにやって来た木場が俺の腕を絡め取って身を寄せて来た。


「なんだよ?」


「誘惑してるのよ。どうせ三人一緒に居るんだし、ほら、男としてのリビドーを押さえられなくなったら私も纏めて襲っていいのよ」


「き、木場さん?」


「ふふ、モテモテでしょ貴女の彼氏。こういう閉鎖空間だと頼りになる男はモテるのよ」


「むぅ……」


 ぷっくらと膨れる光葉。木場がにやにやしながら光葉をからかう。

 なんだかんだ言いながら木場は光葉と仲がいいのだろうか。こういう微笑ましい状況が続けばいいんだけどな。




 女子トイレにやって来たのは、十勝眞果、そして井筒玲菜の二人だった。

 互いに険しい表情で鏡の前でお色直し。隣に並びあって鏡を見ながら二人は会話を始めた。


「修一様、おそらく気付きましたね」

「ああ、やっぱり。だから早めに殺しましょうって言ったじゃない」

「私が許可する訳ないでしょう。大事な探偵役だもの、死なれると面白くありません」

「あ、っそ。まぁ、あっちの方はそれなりに上手かったから残すのは賛成だけど……」

「それより、賀田さんです。いつまで彼女を連れ歩くおつもりで?」

「そろそろウザくなってきたかな。修一君に近づかせまいと必死なのよ。まーそれはそれで可愛くあるんだけど、どうせなら壊れる姿を見たくなってる私が居るの。ちょっと、暗躍しようかしら」

「相変わらずの外道ぶりですねぇ」

「ええ。親愛する友人が、自分を売ったなんて気付いたら、どうなるのかしらね? ふふ、私の本性知った清りんは滑稽だったなぁ。自分が裏切られたと知ってなお友達だと信頼してるんだもの。最後の見た? 私を見て絶望する顔、ああ、あの顔だけで気持ちよくなっちゃう」


 壊れてるな。

 十勝は溜息を吐いて結論付ける。

 既に井筒の精神は完全に壊れている。

 昭和時代、彼女が犯され死に向かっているのを助けた。

 初めは同情心からだったのだが、今では動かしやすい右腕のような存在となっている。

 ただ、暴走し過ぎることと性欲が強くなり過ぎたことが玉に傷だろうか?


 本当は、最上だけを確保できれば良かったのだが、大河内が変な呪いを掛けたせいで下手に動けない状況となり、最上には大門寺という幼馴染が存在したせいでなかなか確保に難航している。

 忌引を使って自分が狙っていることともはや逃れようがないことは最上に伝わっているはずだが、それを確かめるすべはない。


 他のメンバーなどどうなろうと知ったこっちゃないのだが、沢木のことは気に入っている。

 あの絶望しかけていた忌引光葉を立ち直らせているのだから。

 できるならこのまま逃げ切って貰いたいモノだ。


 彼らからすれば十勝の願いなどどうでもよく、ただ逃げられれば問題はないのだから、できることなら最上を置いてさっさと逃げて貰いたいモノである。

 これ以上長居するようになると、井筒が暴走しかねない。


「んじゃ、私はちょっと嗾けてくるね」


「程々に」


 鼻歌交じりにトイレから出ていく井筒。

 溜息一つ、十勝は鏡に視線を向けた。

 十代にしか見えない綺麗な可愛らしい顔がそこにある。


「ふふ。私の美貌。これまでも、これからも、まだまだ、ずっと、維持しなきゃ」





 保健室に戻ってきた足立はベッドに腰掛ける。

 その隣に小川がどさりと座り、力無くうなだれた。

 中田はそんな二人をドア越しに見つめ、流石に男同士の話し合いに入っていく訳にはいかないと保健室前で覗くしかできなかった。


「はぁ……」


「随分とくたびれてんな」


「そりゃ、そうさ。好きな女は殺されて、縋った女は信じた女に殺された。信じた女には裏切られて自殺しちまうし、殺人犯だと思ってた親友は俺達を生かすために動いていた、なんて言われたら、もう何を信じていいのか分からなくなってくる」


「まぁ、そりゃそうか」


 足立としてはさっさと眠ってしまいたかったのだが、小川の精神は既に限界に近い、話を聞くだけで気楽になれるのならまぁ付き合ってやるか、程度の思いだった。


「なぁアニキ」


「なんだ?」


「女が分からなくなったんだ、俺、どうしたらいいんだろう」


「ンなこと俺に言われてもなぁ。まぁそう思いつめんな」


 小川の頭を乱暴に撫で、背中をバシンと叩く。気合いを入れたつもりだったのだが、小川は急に涙を流しだした。


「ンだよ? 痛かったか?」


「ち、違う、こうして元気づけられるの、嬉しくて……もう、俺は女を信じられそうにないんだ。だから、だからアニキ、俺を、抱いてくれないか」


「ア゛ァッ!?」


 爆弾発言に、足立は速攻飛び退いた。

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