表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/246

情報共有3

「ねぇ、私、今恐ろしい考えが浮かんだのだけど」


「恐ろしい考え? なんだよ?」


 俺の言葉に木場はゴクリ、喉を鳴らして息を整える。


「例えばの話よ。牧場さんを殺したのが大河内君じゃなかったとして、そして十勝さんでもなかったとして、誰なら殺人が可能か考えてみたの」


「ああ。それはわかるけど、でも可能な奴なんて誰が……」


「購買倉庫には二つの隠し通路があった。一つは校長室への直通路。これは校長先生が逃げる為の通路。そしてもう一つ。食堂近くに出られる隠し通路」


「その隠し通路から誰が購買倉庫に行けるってんだ?」


「当時、誰がどこに居たか、覚えてるかしら修?」


 いきなり質問されて焦る。

 えーと、確か小川は教室だろ。十勝、川端、中田の三人が女子トイレ。

 大河内は購買で、牧場が購買倉庫。


 大門寺と最上は確か屋上に向かっていて、香中、田淵はどこぞの教室。そこから逃げだした高坂を追って足立が廊下を走っていた。

 貝塚、御堂、足立飽戸、山田、篠崎、原の五人は視聴覚室。

 坂東と榊、三綴は道場だっけか? 確か賀田を覗いてたんだよな。

 そして及川と井筒が食堂にいた。


 俺と光葉、所沢、木場の四人が各所を歩きまわっていて、日上と壱岐が屋上に居た。

 それを木場に伝えてみる。

 木場も同じ配置で覚えていたようで、その通り、と告げて来た。


「で、可能性のあるのは?」


 大門寺が腕を組んで小首を傾げる。

 それもそのはず、単独行動出来る存在が大河内以外に誰も居ないのだ。

 小川がいると言えばいるのだが、教室で別れてからしばし教室に居た彼が犯行を行える度量があるとも思えないし、今の追い詰められた現状を見るに、彼が牧場を殺したなどとは思えない。


「例えば、犯人には協力者がいた」


「木場?」


「それも、犯人が犯行を行っても黙っている都合のいい協力者が」


「お、おい? 何言ってんだよ。協力者?」


「例えば、牧場さんが邪魔になりそうだと体育館での牧場さんと大河内君のやりとりで確信した犯人は、私達探索組が出ていった後、昔からあった隠し通路を使い、食堂近くから先に購買倉庫に侵入する。そしてやって来た牧場さんを絞殺した」


 ちょ、ちょっと待ってくれ。それは、隠し通路を知っている人物で、食堂に居た存在ってことに……


「牧場さんを殺した後、同じように隠し通路を通って証拠を隠滅、食堂に戻り何食わぬ顔で屋上の学級裁判に参加した」


「待ってくれ、でも食堂にいた二人は……」


「ええ。二人いたからどちらかが抜ければもう一人が気付く。でも、彼女達は友達だった」


「友達……」


「友人が犯罪者だと知ったとして、敏い彼女はどうするかしら、友達の犯行を暴露する? いいえ、彼女は友達の為に三綴君を殺す程、友人を大切に思っている。だから例え友達が殺しを行ったとして、きっと口を硬く閉ざしたでしょう。でも、彼女は友達と思っていても、犯人は違った。犯人にとっては自分の犯行を唯一知っている危険な人物。早々に始末したかった存在だった。だから……」


 だから、彼女は自分たちの為に犯罪を犯した友人を、罠に嵌めて屋上から落とし、殺した……

 それは、それじゃあ……及川はそんな奴の為に命を捨てたってのか!?


「牧場さんを殺した容疑者は大河内、十勝、そして……井筒玲菜」


 木場の推理に戦慄を覚える。

 井筒玲菜。十勝、光葉と共にこの世界の詳細を知っているだろう人物。そして、光葉達をこの世界に引き込んだかもしれない人物。

 もしも牧場を殺したのが彼女であるとするのなら。井筒玲菜は、その真相を知った俺達を逃しはしないだろう。知られれば、確実に殺しに来る。


「本当に、井筒なのか? あいつが?」


「分からないわ、本当にあの子がそんなことをできるのか、私も信じられない。でも、ここには彼女の詳細を知る人物がいるでしょう。ねぇ、忌引さん」


 木場の眼が鋭く光葉を捉える。

 光葉も聞かれると思っていたようでぎゅっと俺の手を握って真っ直ぐに見つめ返す。


「もう、秘密は秘密じゃないんじゃないの忌引さん。そろそろ、全てを白状したら?」


「それは……」


「貴女が隠しているのは何? 未だに何を隠しているの? 何で貴女が庇わなきゃいけないの?」


 庇う……?

 いや、確かに、庇っているように見えなくもない。

 光葉が大河内を消してでも守りたい秘密はなんだ?

 所沢を使ってでも大河内を消したかった理由は?

 いや、それだけじゃない、他のメンバーも放置すれば殺されていた筈だ。それは何故?


「忌引光葉。そろそろ幕引きの時間よ。貴女の秘密を教えなさい」


「……修君」


 不安げに、光葉は俺を見る。


「なんだ?」


「私を、信じて……?」


 光葉?

 どういう理由か尋ねようとして、少し前に自分が同じことを言った事を思い出す。その時光葉は何も教えて貰えなかった筈だ。なら、俺も何も分からずとも、信じるしかないだろう。


「ああ。信じるよ」


「ん……」


 覚悟を決めて光葉が話を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ