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第七回学級裁判2

 一先ず、貝塚と原に関してはこんなところで良いだろう。

 貝塚はこれで全員が犯罪者であることを認識した。

 彼はもう言い逃れ出来る状態でもなくなった訳だ。


「さて、ここからが本番だ」


「本番って……いや、まぁ、もともとは大河内の死体についてだからまぁ本番なんだろうけど」


「そうですね。流石に不謹慎ですよ修一様」


「十勝に言われた!? 悪かったよ。でも、俺たちにとって問題なのはもう一人の殺人犯。大河内を殺した人物がこの中に居るかもしれないってことだ。違うか?」


 そりゃあそうなんだが、と皆が躊躇いがちに貝塚を見る。

 かといって今直ぐ貝塚に自殺しろと告げるのも間違っているだろう。

 一先ずこの裁判中はそのままで居て貰おう。


「そもそもだ、斈は最初の犯罪で犯人となって自殺した筈だ」

「そういえばそうだよな」

「小川の言う通りだが、俺たちはその後も大河内を見てただろ。アイツ生きてたんだって」

「実際に生きてたか幻覚かはわかんねぇだろ」

「で、でもほら才人君、給水塔内で見付かったんだし、落下時の外傷無かったんでしょ、だったら」

「中田には聞いてないッ」

「あ……ごめんなさい……」

「まぁ落ち付けよ。それで沢木、木場と二人でいろいろ探索してたみたいだが、何かわかったか?」


 足立が脱線しかけた会話を引きとめ、強引に話を俺に戻す。


「じゃあ、とりあえずジャブを打とうか」


「ジャブ?」


「一先ず大河内が生きてたかどうかは置いといて、何故給水塔で死んでいたか。そこから議論しよう」


「ああ、なるほど。つっても何故とかわかるのかよ?」


 坂東の疑問に俺はコクリと頷く。マジか!? と驚かれるが、分からなかったらまだ調べてるって話だぞ。


「給水塔で大河内が死んでいるのは先程言った通り貝塚が見つけたことによるものだ。もしもそれが無ければ未だに見付かりはしなかったろう。もしかしたら明日位まで放置されていたかもしれない。でも、今見付かった、それが犯人にとっての誤算だった」

「あ? 今見付かるのが誤算?」

「分かった! 今日見付かったことで今まで一日一人の殺害っていう暗黙の了解が崩れたからか!」

「榊、それは違うと思うんだが」

「というかね榊君、それ偶然そうなってただけで一日に二人死んだりは前もあったんだよ。三綴君は一日前に死んでたし」

「あ、そっか。思い込みだったか」

「井筒の言う通り、俺たちは勝手に思い込んでた一日毎に班の中で殺人が一回起こる。なんてことはない。ただただ偶然そういう順番で犯罪が見付かっていただけだ。あまり言いたくはないが、誰もが殺しを行う可能性があり、誰もが殺される可能性がある、俺たちは初めからそういう状況だったんだ。大河内が呪いという言葉で俺達を縛るまではな」

「あ? 呪いで縛る?」

「大河内は俺たちに呪いを掛けたんじゃないってことさ。むしろその言葉で俺たちは昔にここに飛ばされた先人たちみたいに殺し合わなくて済んでるんだ」


 ざわり、衝撃的な事実に皆がざわめく。


「ど、どういうことだよ?」


「まず昭和初期に起こったこの世界への転移を簡単に説明しよう。俺達と同じようにこの世界に一クラスが紛れ込んだ」

「俺たち以外にも、居たのか?」

「そりゃあ居るだろ。校庭に埋まってたの見ただろ」

「え? あ。あいつらがそうなのか!?」

「ああ。彼らは即座に合い争った。女性は問答無用で犯され、殺害が起き、互いに互いを信頼できなくなって殺し合いが始まった。食料も数が少なかったし自分たちが囲い込もうと躍起になったせいで生徒同士で戦争になったんだ」

「せ、戦争……」

「結果、同士打ちで壊滅。生存したのは戦争に参加しなかった負け犬組と呼ばれた二人だけだったらしい。そして彼らは、元の世界に戻った」

「戻れたのか!?」


 思わず身を乗りだす大門寺。彼にとっては朗報だろう。折角手に入れた最愛の人と共に生還出来る可能性が出来たのだから。


「ああ。ただし、彼らは同じクラスメイトを喰い殺すことで二週間以上食いつないだことで精神を病み、現代世界で死んだらしいけどな」


「そうか……だが、戻れる可能性はあるんだな」


 大門寺の確認に頷く。


「おい沢木、それはいいが話が脱線してないか?」


「いや、一応前提条件になるんだ、そんな事が昭和に起こってたことを覚えておいてくれ」


「うん?」


「そしてもう一回、今から二十年程前にクラス消失事件がまた起きた」


「マジか!? 今回で三度目?」


「いや、記録に残ってるのが三度だ。それ以外にあったかどうかが分からないだけさ。それで、だ。そこで生還者が出た」


「生還者?」


「ああ。大河内の母親、木場の父親。そして……忌引光葉」


 びくり、隣に居た光葉の身体が揺れる。

 ゆっくりと俺に視線を向けて来る。

 俺はそんな光葉の手を取り、ギュッと握った。

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