第七回学級裁判1
「遅っせーぞ沢木、木場ッ、何してやがった」
「おう、悪い悪い」
屋上に戻ると、既に皆が待っていた。
食事を最初に終えた組は大分待たされたのだろう、足立が少しイラついた様子で怒声を響かせる。
大門寺の方が落ち付いてるぞ。田淵を失って辛いのは分かるが少し落ち付け。
俺達を待っていたようで、光葉と井筒が場所を開けてくれる。
俺は何も考えず光葉の隣に。
その隣にはちゃっかりと木場が来る。
気付いた井筒が「あ、木場さん酷い」とか呟いていたけど木場は気にせず俺の横を奪い取った。
俺から光葉、所沢、小川、中田、大門寺、最上、足立、貝塚、坂東、榊、壱岐、十勝、賀田、井筒、木場の順に円陣を組む。
少し離れた所には原の遺体が寝かされており、誰かがハンカチで顔を隠したようだ。
大河内の遺体もその隣に並べられている。
「さて、なんか知らん間に一人遺体が増えてんだけどよ?」
「ああ。貝塚が足立に原を取られるかもしれないと不安になったせいで原を殺したらしい」
「ちょ、沢木!?」
「事実だろ貝塚。秘密にしていい事でもない」
「そ、そりゃそうだけど、そうだけども……」
もはやこれについては何かしらの話し合いなどする必要が無い。
既に結論は出ているんだ。短絡的に恋人になる筈だった彼女を殺した。
その罪から逃れることは不可能だ。
「ことのきっかけは早朝に起こった第六回裁判だ。田淵が犯人と判明し自殺した後、足立が心神喪失状態に陥っていた」
「あれ? でも足立の奴普通に見えるぞ?」
「いや榊、お前だって一時期心神喪失状態だっただろ」
「え? そ、そうだったか?」
「あー、俺のことはどうでもいいんだよ。沢木、続き」
「ああ。とにかく、足立が心神喪失状態に陥っていたので、同じバカップルのよしみで原が足立を気に掛けてくれたんだ。肩を貸して保健室まで連れて行った。一応貝塚に手伝うよう頼んだが貝塚は呆然としていたからな、代わりに俺が手伝った」
「そう言えば修は最後まで残ってたわね」
「私達は田淵さんと山田くんの遺体を回収に向かっちゃいましたから足立くんのことはすっかり忘れてましたよ」
「十勝が落ち込む必要はないだろ。それで、まさか足立を保健室に連れていった事が原が死ぬ原因になった、等と言わんよな沢木」
「残念だが賀田、その通りなんだ」
「うぇ!? マジか!?」
「足立に甲斐甲斐しく世話を焼いた原を見て貝塚は裏切られたと思ったみたいだ。自分以外に惚れないでくれと、激昂し、気付いたら首を絞め殺していたらしい」
「マジか!? バカじゃん!?」
「貝塚、お前、折角彼女できたのに自分で殺すとか……引くわ」
「う、うるさいっ、だって、だって円香が……こんなこと、こんなことするつもりじゃなかったのにっ、僕はっ」
「チッ、相手が居なくなってから後悔しても遅いっつーの」
足立が苦々しい顔で唾を吐き捨てる。
足立さんや、それ、誰が掃除するんだよ。屋上は掃除する奴居ないだろうから跡になるだろうが。
大門寺もその行為を見て何か言いたそうにしていたが、話が進まなくなると思ったのか黙して語らずを貫く。
「それで、だ」
手を二回叩いて注目を集める。
話が脱線しかけていたので強引に戻す。
「原を殺してしまった貝塚だが、流石に殺したままで居る訳にはいかない、だから彼は遺体を隠すことにした」
「あ? 結局和室で見付かったんだろ? 隠してないじゃねーか」
「まぁ、とにかく聞いてくれ足立。貝塚は原を殺してしまった事でパニック状態になってたんだよ。だから必死に自分が助かるために隠し場所を探したんだ。そこで……」
「ああ、そっか。そこで大河内の死体を見付けたんだな」
「坂東、台詞取らないで」
「あ、悪い沢木。って別にいいじゃねーか」
「まぁ、そういう訳で、だ。貝塚は気付いた。給水塔の中なら死体は発見されないんじゃないだろうか? そう思って確認に向かったんだ。皆は墓に向かっていたし、誰もいないからすぐに戻ってきて原を連れて来る算段を付けるつもりだった。しかし、誤算があった」
「ふ、やっぱ俺の推理通りじゃないか」
「まぁそうなんだけどさ。給水塔の中には大河内が浮かんでいた。パニック状態だった貝塚はそこでさらなるパニックに陥り、死体発見したから誰かに報告しなきゃ、という心理に陥った。そこで俺らの元へ報告に来た。この時既に原を殺したことは忘れてたみたいでな。そのまま食事に向かっちまった」
「馬鹿じゃん!?」
「う、うるさいんだよ坂東っ、そんなこと言われなくてもわかってんだよっ」
逐一合いの手を入れて来る坂東についに貝塚がキレた。
貝塚は普段大人しいオタクのリーダー格だが、キレやすいみたいだな。しかもキレると無茶な事をしてしまうようだ。
自分でも止められないんだろう。だから原を殺してしまったんだ。