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隠し通路

「ここに何か用事?」


 シャワーを終えた俺たちは購買倉庫へとやって来ていた。

 大河内の殺人には関係ないのだが、確認しておかないといけないことなので早めに来ることにしたのである。

 倉庫内は段ボール箱やらプラスチックの箱が散乱しているので捜索するのも大変なのだが、用事があるのはそんな段ボールたちに囲まれた一番奥の棚の裏。奥まった場所にある空いたスペースだ。


 注意深く探れば、あった。確かに隠し扉が床にある。右奥と左奥に一つづつだ。

 ここを通れば、牧場を殺害した後に誰にも見られず脱出することは可能だ。

 つまり、大河内以外が牧場を殺害した可能性が浮上する。


 大河内の奴、それを分かっていながら自分が犯人だと主張したのか。ここの事を言えばさっさと追い詰めることが出来たかもしれないんだぞ犯人を。それとも、その時点で犯人を見付けてはならない理由でもあったのか?

 いや、待て。むしろ丁度いいから自分を犯人にして脱出路を確認したかっただけか?

 大河内の行動もまだ分からないことがあるな。

 何かしらの確信を得たいところだが、あいつが何を目的にしていたかは結局分からなかった。


 皆を無事に戻したいならさっさとすればいい筈だし、井筒たちに一泡吹かせたいならそれ相応の対応をすればいい。

 しいていうならば中途半端。大河内は一体何をしたかったのか、その真意がまだ見えない。

 あいつが何を求めて動いていたかが分かればもっと話が早い筈なんだけど。


「これ、隠し扉?」


「ああ。大河内の持ってた地図に載ってたんだ。こいつがどこに繋がっていたかによって最初の殺人が覆る」


「最初って、牧場さんの?」


「ああ。大河内じゃなかったってノートに書かれてただろ。その理由が、ここにあるかもしれない」


「なるほど。つまり、ここを通った誰かが居れば……」


「ああ。大河内以外の真犯人が牧場を殺した可能性が出てくる」


 俺たちは無言で見つめ合い、隠し扉を開く。

 なんだろうなこのワクワク感。

 未知の場所を探索するからか、予想通りの新境地が見付かったからか、不思議な高揚感と共に木場と一緒に扉から地下へと向かう。


「埃っぽさは、ないわね」


「二度目のシャワーは必要なさそうだな」


「ふふ、なんなら今度は一緒にシャワー浴びる?」


「流石にギルティ案件だろ。やめとくよ」


「あら残念。それにしても……どこに続いているの?」


「それは……こっちのは校長室らしい」


「校長室? なんでまた?」


「もともと空襲などがあった場合に校長室から校長が逃げるために用意された通路らしい。そもそも旧校舎には購買倉庫が無くてあそこが安全地帯に繋がってたみたいでね。そこでしばらく過ごした後、もう一つの隠し通路から食堂近くの外に脱出出来るようになってたんだ」


「なるほどね、旧校舎時代の通路なのね。つまり、旧校舎を知っていれば場所も知ってる、と」


「ああ。この学校を根城にしていた井筒たちならまず間違いなく知ってる」


「そう、でも、父はここのこと一度も言ってくれなかったのだけど?」


 木場の父親が知らなかった場所と言うことか?

 あるいは、知っていたけど今初めて知ったと木場が嘘を付いている可能性だが、木場まで疑い始めたらもう俺が信じられる存在が一人もいなくなってしまう。


 そろそろ出口か?

 暗い通路を二人歩き通し、現れた階段を上り、上部にあった扉を開く。

 出現場所は校長室のデスクの下だ。

 丁度校長椅子が邪魔になっていたので手だけだして移動させてから扉を開く。


 椅子が邪魔だな。人が座ってたら絶対に扉が開かない仕組みになってるぞ?

 座って無かったから多少重かった位で大したものではなかったが。

 これなら女性でも多少辛いが勢いよく持ち上げればやってやれないことは無い。


「ここに出るのね」


「みたいだな。悲鳴を聞いて皆が集まったところでさらっと後ろから合流すればまるで後からやって来たみたいな状況になるわけだ」


「それで、真犯人は誰になるのかしら?」


「確証はまだ持て無いな」


「あら、秘密なのね。まぁいいわ。後の楽しみにとっときましょう。それで、ここは確かめたけど、その先は?」


「そうだな、後は……大河内の足跡探しだな。この地図によればこの×印が付いている場所はおそらく彼が要石を探して見付からなかった所だろう。何かしらの情報が残ってるかもしれない」


 もう一つの隠し通路についてはまた後に調べればいいだろう。時間も押してるしそろそろ屋上へ行くべきかもしれない。


「ええと……音楽室、墓場、和室、体育館、道場……特殊施設は大体網羅されてないかしら?」


「あはは、重労働……最後の方から調べて行こう。ほら、日付が書いてあるし」


「成る程、あ、でも最初の所は近いわよ。ほら、ここ、校長室」


「折角だし調べるか。何かしらのメッセージが残ってるかも。ええとこの印の位置からすると……」


 すっと視線を向けていくと、資料棚へと向かっていた。

 あそこに何かあったのか?

 確かあそこはつい数時間前に十勝が探してた場所だよな。


 十勝が探していた場所……か。そこ、確か十勝が何か手に入れてたんだよな。

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