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大河内の形見

 話が済んだからだろうか? 木場が早々に立ち去ってしまった。

 ノート、持って行ってしまって良かったのか?

 つーかアイツもアイツで怪しかったんだ、処分とかされてないよな?


 俺もすぐに後を追おうと思ったのだが、ふと、手に入れた手帳を確認してないことに気付いた。

 そう言えば所沢のモノと思しきこいつについては何もしてなかったな。

 えーっと。


 ぱらり、めくった俺は戦慄する。

 そこに書かれていたのは予定表。

 これから誰をどこで殺害するか、予定が書かれたノートだった。

 いや、こんなヤバいの学生服に入れたまま捨てんなよ。


 大河内、貯水施設

 木場、シャワールーム

 賀田、道場、瞑想中

 井筒、食堂、毒殺

 大門寺、最上を盾に、屋上から落とす。邪魔者

 十勝、犯人、自殺。必ず逃げ道を塞ぐこと

 修君、最後

 最上、必ず生かす。次の人柱


 この手帳から察するに、この後は木場をシャワー浴びてる時に殺害し、賀田を瞑想中に殺害。賀田という障害が無くなった井筒を食堂で毒殺し、十勝を犯人に仕立て上げて自殺させる。

 元の世界には戻さないよう何かしらの行動を起こすつもりのようだ。

 そして俺は最後に……修君?


 所沢が修君なんて呼ぶか?

 それはあり得ない。修君なんて呼ぶ人物は……

 思い至った瞬間、俺の全身から一気に汗が噴き出る。


 嘘だ。ありえない。

 こんな筈がある訳ない。

 この考えは間違いだ。絶対にあり得ない。

 忌引光葉が俺の殺害を企ててるなんて……


 だが、これが彼女の計画だとすれば、だ。

 彼女は十勝や井筒とは敵対関係にあると見ていいだろう。

 そんな気配はおくびにも出していないが、役者か? それとも俺の思い過ごしか。

 だが、こんな手帳をわざわざ男子制服のポケットに忍ばせる意味が分からない。


 所沢の証拠を探ろうとしたのに、なんか変な状況になっている。

 手帳を読み進める。

 どうやら具体的な殺害方法を書いているようだ。


 大河内の殺害についても事細かに書かれている。

 揉み合った時にボタンがちぎれたので、もう一つを千切って音楽室に一つのボタンを捨てる。

 制服を処分し、新しい制服を着て皆と合流。この時ボタンを一つだけ千切っておく。


 これで一つしかボタンの取れていない制服が完成。

 あとは先に発見される山田の近くにあるボタンを自分のだと告げれば問題はなくなる。

 捨てた制服が見付からなければ、だけどな。

 というか所沢。この制服処分しないと意味ないだろ。なんであんなところに無造作に捨てたんだ? 馬鹿なのか?


「修、何してるの?」


 一旦外に出たが俺が付いて来ていないことに気付いた木場が戻ってくる。

 手帳を閉じて俺は慌てて木場に合流することにした。

 が、焦ったせいだろうか? 懐中電灯を配管に当てて盛大に投げ飛ばす。


 くるくる回る懐中電灯が転がって行ったので回収に向かった。

 暗いが懐中電灯の明かりを頼りに近づき、そして、発見した。

 丁度俺たちの教室の隅に当る場所。その天井裏にひっそりとそれは置かれていた。


「地図だ」


「修?」


 近づいて地図を見る。

 四階分の詳細な地図はこの学校のモノらしい。

 開かずの間への行き方も描かれたそれには、もう二つの隠し通路も書かれていた。


「おいおい、ここにこんなのがあると前提が崩れるぞ。それに、確かにこいつを使えば、最初の殺人が大河内以外にも可能になる。ただ、アイツが犯人だとして中田や川端の眼を盗んでどうやって? 脱出場所は女子トイレでもないし」


「修?」


「ああ。すぐ行く」


 木場に合流してトイレに降りる。

 二人とも埃まみれだ。


「ふふ、埃が頭に付いてるわよ」


「木場もだろ。鼻の上に埃付いてるぞ」


「あら?」


 恥ずかしそうに鼻元を払う木場。

 このまま別の場所を捜査する気にはならないので、俺たちはシャワーを浴びることにした。

 校舎を後にしてシャワールームへ。


 なぜか男子シャワールームに二人して入る。

 ちょっと木場さん、こっち男性用……


「皆食事か屋上よ、こんな時間にシャワー浴びる男子が居るとも思えないし、隣だから問題ないでしょう? なんなら、一緒に浴びる?」


 不敵に微笑む木場。

 誘われているのは冗談なのか本気なのか。あわよくば俺と肉体関係を持とうとしている以上本気なのだろう。


「さ、流石に殺人が起きてる時にそれは、な?」


「あら残念。まぁ埃だらけでっていうのはちょっと嫌だし、今は諦めるわ」


「今は、か」


「代わりに、名前呼び、してくれないかしら、ねぇ。そろそろ」


「いや、それは……」


「名前で」


「……み、実乃里?」


「よし、次からはそれで呼んでね修」


 そう告げて服を脱ぎ出す木場。俺は慌てて全部脱ぎ、籠に突っ込むとシャワールームに突っ込む。危ない、あの野郎まだ誘惑諦めてなかったらしい。

 不敵な笑みが脳内にこびり付く。シャワールームに飛び込む瞬間横眼に見てしまった肌色は、シャワーを浴びている間も脳裏から離れなかった。

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