大河内の日記2
一日目、自殺を敢行した僕は元の世界へと戻ってきた。
どうやら警察が入っていたらしく突然現れた僕に驚いていたのだけれど、丁度良かったので刑事さんに手伝って貰うことにした。
事情を話したが半信半疑なようで、こちらの世界に戻ることで証明してみせることにした。
どうも大人ではこちらに来れないらしく、どんな奇術を使ったのかと問い詰められて時間をくってしまった。
それでも協力だけは取り付けられ、僕は向こうの世界のことを任せ、こちらの世界で皆を救うことにした。
健闘空しく香中が死んでしまい、高坂が墜落死した。
僕が何かしら伝えるより早く殺人が起こるとは予想外だった。
僕が呪いを掛けたせいなのか、それとももともと殺害する要素があったのか。とにかくこのままでは連鎖殺人が起こりかねない。
それでは結局殺伐とした状況にしかならないだろう。
定期的に姿を確認させることでこれ以上殺人する余裕を無くし、僕が現れる謎を調べてくれた方が幾分マシかもしれない。
仕方無いのでちょこちょこと生存を匂わせるヒントを散りばめておく。
上手くいけばいいが、忌引の手のモノに感付かれる可能性も高くなる。
あの秘密に気付いたことを知られれば確実に消されるだろう。
そうなる前に……アイツを殺さないと。
「……アイツを、殺す?」
「なんでその辺りの事をぼかして書いてんだよ。ゲームじゃないんだぞ、分かるように書いてくれよ」
「ブツクサ言ってないで次をめくって」
「はいはい」
また死んだ。御堂と足立が同時にだ。
まさかゲーム関連で殺人が起きるとは思わなかった。
速くアレを見付けないと。
どこにあるんだ要石は?
犯人である篠崎は惜しくも外れてそのまま墜落死してしまった。
後少し場所がずれてれば生還できたのだが、こればかりはどうにもならない。
また一人クラスメイトが減ってしまった。
「要石?」
「やっぱり、大河内君は私が知ってること以外の事を知ってたみたいね。要石と呼ばれる何かに重大な秘密があるみたい」
「探すにも形容が分からないんじゃちょっと難しいな」
「要石っていうくらいだから石なんじゃないの?」
「石っつってもいろいろあるだろ。地蔵の姿してるかもだし、そこらの小石みたいになってるかもだし。埋まってたりしたらそれこそお手上げだ」
「なるほど、だから発見も難しい状況だったのね」
要石がなんなのかはわからない、でも大河内が探していたってことは光葉達の秘密に迫れる何かである可能性は高い。
「調べてみる価値はあるだろうな」
「秘密裏に、ね」
ニヤリ、不敵に微笑む俺と木場。
何でこいつとはこう、馬が合うんだろうな?
光葉が最愛の女性であるならば、こいつは最高の悪友というべきだろうか?
「さぁ、どんどん行きましょ」
「次は第四の殺人か。確かトイレでヒントを貰ったんだよな。アレって偶然か必然か、調べたかったんだ」
また死者が出た。三綴の奴が死んだらしい。
といっても、僕自体犯人は見てしまっているんだ。だからヒントを残すことにした。
及川さん結構頭いいしアリバイ作る必要すらなく運が味方しているみたいだったから証拠も殆ど残らない。
これでは犯人が誰か分からない状態になるだろう。
だから、木場なら気付くんじゃないかとわざわざ姿を見せながら一階の女子トイレに入る。
三綴が隠されていた場所に案内しておく。
正直これでもまだ不安がある。及川の方が一枚上手な気がするんだ。
ただ、井筒はどうも及川を邪魔だと思っているようだ。彼女を意図的に避けながら行動しているように見える。
及川もうすうす感付いているようだが、それでも彼女の為に犯罪を犯してしまった。
これできっと、井筒の思い通りに及川は死ぬのだろう。
最悪、井筒によって殺される可能性すらある。
「……木場」
「ええ。井筒さんが突然自分が死ぬみたいなことを言いだしたし、何か違和感を覚えた気がしてたけど、こういうカラクリだったのね」
「及川の奴、死に際に言ってたんだ。私達、友達だよね? ってあれは賀田に告げた言葉かと思ってたけど、違ったんだ。あいつが確かめたかったのは……井筒の本心」
「けれど井筒さんは及川さんを切った。そういうことね?」
「何かしらを行うのに邪魔になったんだろう。及川の奴頭は良いみたいだったからさ。感付かれる前にトドメを刺したのかも」
クソ、こんな情報知りたくなかった。
これじゃ及川が浮かばれない。
井筒、お前は本当に、そんな思いを持っていたのか?
「もうそろそろ、ね」
「ああ。大河内が誰に殺されたのか、何かヒントでも書かれてればいいんだけど……」
しかし、コレを本当に信じていいのだろうか?
あまりにも裏の顔が多過ぎて皆信じられなくなりそうだ。