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大河内の日記1

 正直、こういう日記を書くのは趣味じゃないんだ。

 でも、上手く行くか分からないから後続の為に日記を付けておくよ。

 これから僕は伊織に真実を告げに行く。上手く説得できればいいんだけど、無理だったら伊織だけでも救わないと……


「なぁ木場……」


 最初の文を読んだ俺は、思わず木場に声を掛けていた。

 ノートから視線を逸らすことなく、木場も頷く。


「ええ。この文を見る限り、牧場さんを殺すというよりは……」


「ああ、牧場を救おうとしていた? でも、ならどうして殺した?」


「読み進めましょう。何か分かるかも」


「そうだな」


 やられた。

 まさかこんなことになるなんて……

 なんとか伊織の死を使って皆が殺し合わないように告げてはおいたが、これも奴が居る状態じゃあまり意味は無い。


 運がいいのは僕がまだ生きていることだ。

 やはり出口はあった。位相がずれていたことで窓の外にあったんだ。

 最悪向こうに出た瞬間墜落死するかとも思ったが、運良く教室に出ることに成功した。

 おそらく忌引か井筒がすぐに脱出されないようずらしたのだろう。


 出来るだけ多くのクラスメイトを救える状況を作らないと。あいつらの快楽の為に皆を殺させる訳にはいかない。

 この闘いで頼れるのは木場だけなのだけど、あいつも別の目的があるようだし、忌引のこともそこまで警戒していないことからアノコトは聞いてないんだろう。

 出来るなら、伊織と、才人に真実を告げたかった。でも、ダメだ。才人がアイツの秘密に気付いたら、絶対に問い詰める。


 隠れている奴を、伊織を殺したアイツを断罪出来る状態にしないと、俺たちは皆殺される。

 もしもこれを見ている奴が奴の仲間ではないのなら、奴には気を許すな。

 君たちが警戒すべき存在は忌引だけじゃない。


 忌引の秘密はその処女性にある。

 けれど、あいつは柱であるだけじゃない。

 あいつの秘密はもう一つ。

 前回の僕らの親世代、そこで殆どを殺したのは、アイツだ。


 そして柱の役割を持った二人の女。

 井筒玲菜は次の柱にされるんだと言っていたらしい。

 だからきっと、僕らの世代では彼女が忌引を名乗っているだろう。

 つまり、忌引光葉と井筒玲菜は名を交換している。

 そしてもう一人。その女は忌引の為に動くようになった、昭和初期からの人柱。処女性を持ちこの世界を維持するために存在し、井筒を迎えに来た人物。

 結論、十勝眞果は……奴らの仲間だ。


「……でちゃったよ十勝の名前」


「昭和世代ってことは最初の生き残りってことね? あの写真に十勝さん写ってたかしら?」


「みたいだな。つまり、光葉と井筒だけじゃなかったんだ。俺たちのクラスに紛れ込んでいた敵は三人いた」


「でも、十勝さんが……?」


 十勝眞果に付いて探ろうとしていたが、それを頼もうとした矢先に伊織が殺された。

 おそらく何かを感付かれたのだと思う。

 幸い、伊織に関しては自分が犯人役を買って出たことで皆が争い合う殺伐とした地獄から、呪いに怯えながら生きる状態へと移行してくれた。


 忌引たちにとっては想定外だろう。ざまぁと笑ってやれる。

 それに僕自身が死んだ人になったことで自由行動が出来るのは良かった。

 僕が呪いだと告げたせいか殺人が起きたみたいだけど、連鎖する前に沢木と木場が学級裁判を開いてくれたおかげで断ち切れている。


 個人個人でのいざこざはこれからも起こるだろうが、それでも誰も彼もが信じれない状況になるよりはまだ救いがある。

 皆の理性が持つうちにあいつらをなんとかしなければ。

 彼らの目的は人間の絶望と生への執着を観察し笑うことだ。

 だから忌引たちを裁け。彼らの誰かが伊織を殺している。僕はまず忌引光葉を名乗る井筒玲菜から探る予定だ。


 もしもそこで僕が死んだとしたら、ビンゴだ。きっと今の忌引が実行犯になる。

 今の忌引は井筒の傀儡だ。あるいはあいつに心酔しているのかもしれない。

 だから、止めなければ。

 例え僕が殺されるのだとしても……

 けれど、僕が生きて再び脱出できたなら、その時は……才人、僕は、君に謝りたい……


「これ、牧場さんを殺したのは、別人?」


「このノートを見る限りじゃそうなんのかな?」


「しかも、忌引さんである可能性もあるわけね」


「認めたくないけどな」


 だが、このノートは間違いなく大河内が書いたものだ。

 ノートの先には一日目からの行動が書かれていた。

 彼なりの注釈も付け、自分の考察を纏めてある。


 正直な話、これだけあれば光葉と井筒、そして十勝を罪に問うことは不可能ではないだろう。

 でも、光葉が犯罪の片棒担いでいるとは思いたくないな。

 なんとか光葉が関わっていないことを証明したいが、まずはノートを最後まで読むことにしよう。


 俺と木場がさらにノートのページをめくる。

 そこに書かれていたのは……

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