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お前を信頼する

 ようやく見つけた脱出の場所。

 それはおそらく、屋上から飛び降りた時にのみ繋がる次元と次元を繋ぐ場所。

 死中に活とでも言うように、飛び下りなければ戻れない。


 そう考えると、大河内の呪いはむしろ彼からの救いのメッセージだったんじゃないかとすら思えてくる。

 人を殺すことでこの世界からの脱出が行える可能性を手に入れられると。

 別に殺す必要は無いんだけど、そこは大河内が死んでしまったので理由を知ることは不可能だ。


 ただ、彼は俺達を助けようとしたんじゃないかって、思えてしまうんだ。

 実際彼が殺したのは牧場だけだし、多分だけど俺や木場へのメッセージには協力的な事が多かった。

 率先して殺人犯を見付けさせてそいつを自殺に追い込む。そう見せかけて、運がいい殺人者を元の世界に戻そうとしていたのなら?

 けどそれはそれで問題は残る。

 なぜ皆をさっさと戻さなかったのか、そしてなぜ殺人者じゃなければ次元の穴を通ることが出来ないのか。


 別に出口が分かっているのなら、みんな揃って飛び下りればいいんじゃなかったのかと思うんだ。

 場所さえ正確なら全員が生還出来た筈だ。

 何かまだ、解明できてないピースがいくつか存在するらしい。


 もしかして人を殺す事が脱出の前提条件、とか?

 さすがにそれはないか。

 じゃあ、なんだ?


「それで、私はまだ怪しいのかしら修?」


「正直誰が信頼できるか分からなくなってる。今の所唯一信頼できるのが足立だ」


「あら、足立君だけ? 光葉さんは?」


「残念だがまだ何か隠してる。信用はしたいが今回の首謀者に近い位置に居る以上光葉を信頼するのは難しい」


「そう、いいわ。それでも私と二人きりになったということはそれなりには信頼してくれてるんだと思っておくわ」


「ああ。今の所木場はそこまで怪しくないんじゃないかと思ってる。目的についても嘘や隠し事があるようには見えなかったし」


「あら、それは嬉しいわね」


 少し考え、木場に現状の説明を行った時のメリットとデメリットを天秤に掛ける。

 彼女なら多少は信頼してもいいかもしれない。

 そう、だな。多少は信頼していかないと、誰も彼もを疑い出したらキリがない。


「わかった。コレを見てくれ」


 足立から預かっていた卒業写真を見せる。


「これは……私の父、のさらに前の卒業写真ね。名前もあるの?」


 受け取った写真を見ていく木場。徐々にその顔色が悪くなっていく。


「待って、これ……どういうこと?」


「気付いたか?」


「ええ。忌引光葉の名前なのに、写ってるのは……井筒玲菜?」


「ああ」


 そこで木場に光葉から聞いた話を教えてみる。

 これで上手く行けば何かしらの変化があると思うんだけど……


「……ちょっと、荒唐無稽ね」


 顎に手を当て真剣に考え始める木場。

 俺だってまだ光葉の言葉じゃなければ一笑に伏してる可能性だってある。

 でも、光葉が真剣な顔で告げたのだ。

 ならば一考の価値はある。


「確かに、光葉さんは信頼出来ないわね。井筒さんにも疑惑が出て来たし」


「それに壱岐の話じゃ校長室を探して貰った際に十勝が何か隠したらしい。確証は無いから確認はまだしてないけど、彼女にも疑惑があるんだ」


「そして最上さんが生贄候補、か」


「あと大河内と木場は前回生存者の娘と息子」


 随分と関係性が多いクラスメイトたちだ。

 巻き込まれた俺たちはいい迷惑だよな。


「問題は、大河内君の考えがどこにあったか、脱出方法は分かってるのにわざわざ殺人を煽ったのは……」


「そもそもお前はどうなんだ? 別に皆に脱出場所を教えてもよかっただろ?」


「言ったでしょ。私は教室に脱出路があると思ってたのよ。それに父を救ってくれた女生徒を探す目的があったからしばらくこっちに居るつもりだったし。脱出を考えていたのは大河内君の方だったと思うわ。まさか本当に脱出口を見付けていたとは思わなかったけど」


 そういえばそうか。木場は俺たちの教室に脱出口がある筈だと思ってたんだっけか。それじゃあ教室の外にある脱出口を探し当てるのは難しいだろう。

 大河内はどうやって場所を探しあてたんだ?

 もしくは、賭けだった?

 当りは着けていたが確証は無かった。

 だから自分の身体を使って実証することにした?


 別に殺人を助長するつもりはなく、自分が落下することの正当性を見せつけたかっただけ?

 そして運良く彼の思い描いた場所に脱出口が存在した、とか?

 だから、彼は生存し、自分を死んだことにしながら裏で何かしらを調べていた。光葉を助けるために?


 大河内、あいつは何か秘密を握ったのか?

 だから誰かに殺された?

 つまり、つまりだ。大河内を調べれば、俺達も殺される可能性が高くなる?


 ゴクリ、喉が鳴る。

 今まで以上に不安な気配が自分を支配する。

 所沢に刺された時以上の恐怖感に自然身体が震え始めていた。

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