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死者は二度死ぬ

 食堂にやって来た俺、十勝、壱岐の三人は、適当な場所に座る。

 二人と隣り合って座ったせいで他のメンバーが俺の隣に座れなくなったと騒いでいたが、どうしようもないことなので諦めて貰うしかない。

 そう言えば光葉が隣に座っていないのは初めてのパターンではなかろうか? 何気に新鮮な気がするな。


 既に来ていたのは木場、光葉、賀田、井筒、壱岐、所沢、足立。

 少し遅れてのろのろと小川と中田。

 五分程して大門寺と最上。その後ろから坂東と榊がやって来た。


 どうやら貝塚と原は来てないようだ。

 仲直りはできたのだろうか。

 まぁ、本日は殺人は見付からないだろうし、二人の姿を一度でも見られれば安心はできるだろう。あとで和室を見に行ってみるか。

 お取り込み中だったら帰ればいいんだし。


 食事を終えて、足立と合流する。

 足立の奴一人で食事してたのか。

 まぁ田淵が居なくなったからそうなるのが当然になるのか。ちょっとかわいそうだな。


 食器を洗い始めた木場たちを食堂に残し、俺たちは校長室へと向かう。

 メンバーは十勝、壱岐、足立と俺の四人だ。

 校長室の資料はそこまで多くないので手分けしてしまえば楽に調べられる、筈である。


 俺は適当に資料を取ってデスクに置くと、そこで調べ始める。

 足立は取った資料をその場でヤンキー座りして調べ出した。あの体勢、辛くないのか?

 壱岐は俺の隣にやって来て調べる。身を寄せて来るのはなぜだろうな? ちょっと怪しい動きで腰くねらさないでくれないか?


 十勝に関しては早い。資料を取ってパラリと開く、そしてすぐに戻すを繰り返す。

 まるで調べるモノが分かっていて、それが載っている資料を見付けようとしているみたいだ。

 俺は纏めて資料を抜いて来たので山積みにした資料から次の資料を取って調べる。


 逆に壱岐は一つ調べ終えると本を閉じて戻しに向かい、次の本を取って持って来るのでかなり遅くなっている。

 何度目かの往復を終えた後だった。


「いいのかな……」


「ん? どうした?」


「あ。いや、その……」


 戻ってきた壱岐が小声で呟く。どうしたのかと思ったが、俺が尋ねると言葉を濁してしまう。

 意味がわからん。

 結局昼まで粘ってみたけど目的の資料は見付からなかった。


 昼食に行くために俺たちは校長室から出る。

 その直前。壱岐に裾を引っ張られて止められた。


「壱岐?」


「やっぱり、言っといた方がよさそうだから、言うね?」


 何をだ?

 すでに十勝と足立が食堂向かっちまったぞ?


「さっきね、十勝さん、何か見付けて懐に隠してた」


「十勝が?」


「うん。大したことじゃないかもだけど、やっぱり気になるし、一応伝えといた方がいいかなって」


 十勝が調べ物中に何かを隠した?

 何か重要なモノ? それとも彼女にとって必要なモノ?

 俺たちに連絡が無かったのはどういう理由からだ。


 ダメだ。十勝まで疑い出したらきりがないぞ。

 全員を疑わなきゃならなくなってしまう。

 一応思考の片隅には置いておこう。


「分かった。お前は今まで通りしていてくれ。こっちで調べてみる」


「う、うん。あ、えっとね。その時見てた本なんだけど、確かこの辺りだったよ」


 壱岐が指し示した本は大体二十年前くらいの卒業生たちの本だ。卒業文集や学生たちの名簿などが載っている。

 二十年前といえば……いや、でも、何故そこで十勝が隠す物がある?

 嫌な予感しかしない。


「誰か、誰かぁぁぁっ」


 俺が本を調べようとした時だった。

 廊下を叫ぶ野太い声に、壱岐と二人で首を傾げる。


「なんだよ、貝塚?」


 本を戻して校長室から出ると、走りまわっている貝塚が居た。

 各教室を見回っていることから誰かを探しているようだ。


「どうした貝塚?」


「お、おおっ、沢木氏。大変なんだ! し、死体が」


「死体!?」


「お、屋上だ。屋上に来てくれっ」


「お、おぅ、壱岐、他の人たちに連絡頼む。多分殆ど食堂に居る」


「うん。でも、今日は殺人、起きない筈じゃ……」


「それはただのジンクスだ。貝塚、案内頼む」


 走りだす貝塚を追って走りだす。

 不安そうにしていた壱岐は、すぐに踵を返して食堂へと駆け去っていった。

 階段を上って屋上へ。


「死体って、何処だ貝塚?」


「こっちだ。この上!」


 そこは屋上入口の屋上より一段高く作られた場所だった。

 その上部には給水塔が作られており、丸いタンクが載っている。

 大門寺がよくこの辺りで寝そべっているのだが、今日はいないようだ。


 案内されるままに給水塔を登らされる。

 丸いタンクの扉を開いた瞬間だった。

 光差した密室、波打つ水面みなもに揺らされて、そいつはぷかり、浮かんでいた。


「お、おいおい、嘘だろ……」


 大河内斈が……死んでいた。

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