真実と嘘
「どう、思う?」
「正直信じられねェ」
足立の言葉ももっともだ。俺も信じ切れない。
けれど、光葉が言っていることが全て本当であるのなら、様々な疑問が解ける。
そして、黒幕が井筒だったなんて。
だが、なんだろうな、この違和感。
何か、光葉の証言の全てが真実だとは思えない感じ。
どこかに嘘がある。そんな直感がある。
一体なぜそう思ったのか。
いや、確信している。
光葉はまだ隠していることがある。
「沢木。いろいろ気になることはあっけどよ……」
「ああ。また朝食時にな。おやすみ」
「すまねぇ。少し、一人にさせてくれや」
足立を保健室に残し、俺と光葉は保健室から出る。
廊下に出た瞬間、光葉はすまなそうに俺を見て来た。
「修一君……」
「ん?」
「……嘘ついて、ごめんなさい」
「……やっぱり、嘘なのか」
「少しだけ、事実。でも、嘘もある。ホントのことは……言えない」
何がある?
何を隠してる?
そもそも井筒が母親なら光葉と仲良くしている現状はなんなのか。
光葉に対して監禁して酷い事をしていたのが井筒だというのなら、光葉はなぜ井筒と同じ部屋で寝られるのか。
まだ、俺の知らない秘密がある。
ただ、疑惑を向けるべき相手が増えたことは確かだ。
大河内、木場、光葉、井筒。
果たして真実を暴ける日は来るのだろうか?
そして光葉の話しはどこまで真実でどこが間違っているのか。
俺たちは全員生きて戻れるのか、この先後何人の死者がでてしまうのか。
真実を暴いてしまった時、光葉、あるいは井筒が暴走したりはしないのか。
昔の資料とか、探った方がよさそうだな。
一先ず疑わしい人物は抜かして調べた方がいいだろう。
手伝ってもらえそうなのは、足立と……十勝と壱岐くらいか。
最上の件も真実かどうか分からない訳だし、大門寺に気を付けるよう促すくらいにしとくべきか。
俺と光葉は無言のまま墓場へと向かう。
既に埋葬が終わっているようで、俺達を見付けた木場が丁度終わったわと告げて来た。
とりあえず一度御墓を拝み、俺たちは図書室へと戻る。
随分と長い一日になった気がするが、実はまだ昨日から起き通してる状態なんだよな。正直眠い。
やるべきなんやかやは起きてからにして、一先ず寝るか。
シャワーすらも浴びる気にはなれず、図書室に戻るとすぐに泥のように眠る。
意識が無くなる時はそのまま二度と目覚めないんじゃないかと、この世界に来てから不安で起きることもある。でも、寝なければ精神が持たない。
しばしの就寝を経て起床する。
起きると既に八時を回っていた。
木場たちは食事の為に既に食堂に向かって用意しているようだ。
図書館に残っていたのは俺と十勝と壱岐、ついでに光葉。
光葉が残っていたのは俺の隣で今まで寝こけていたからだそうだ。
とりあえず、容疑者である光葉には悪いが先に食堂に向かって貰い、俺は残って俺を待っていた十勝と壱岐に手伝って貰うように告げる。
理由を簡単に説明すると、井筒や木場に頼れない事情を知り、快く引き受けてくれた。
正直危険はある。何しろここに俺達を連れて来た存在が相手なのだ。もしかしたら井筒が近づいて来たのも俺達の近くでどこまで情報を手に入れたか調べるためかもしれない。
だったら、彼女等の知らない場所で情報を手に入れておくのが一番いい。
食事終了後に一先ず校長室集合。あそこにまだありそうな予感がするからだ。
あと、関係なさそうでも昭和より昔の資料を調べた方がいいかもしれない。
井筒、前は忌引を名乗ってたんだっけ、この地の忌引さんの話しを調べれば何か分かるだろうか?
その辺りはここ、図書室か?
おそらく禁書指定されてるだろうから持ち出しが禁止されている場所に眠ってる可能性はある。
ただ、ずっと井筒がこの世界で生活していたとなると話が違って来る。
既に処分されてる可能性があるからだ。
でも、この井筒を指し示す写真が出てきた以上可能性は捨てきれないはずだ。
絶対に見付ける。
真相を解くんだ。
これ以上死者が増えないうちに。
俺と十勝、壱岐の三人は揃って食堂へと向かう。
なぜか途中で所沢が廊下を歩いていて、光葉が既に食堂に向かったと知るや俺達を弾き飛ばして向って行ってしまったり、一階で小川と中田が距離を置いてゾンビの如くゆっくり歩いていたりと数人のクラスメイトに遭遇する。
どうでもいいが小川と中田はそろそろ死にそう何だけど大丈夫だろうか?
負ったダメージがデカ過ぎるようだ。
俺も後を追いそうなのであまり強くは言えない。
光葉が怪しい動きをし始めているからな、俺も裏切られて背後から刺される可能性を常に意識しておかないといけないかもしれない。