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忌引光葉の秘密?

 大門寺の言葉に、俺たちは確認の為に外へ向った。

 丁度落下地点になる筈の場所には、他の皆が既にいて、少し離れた場所には山田の遺体が置かれている。

 周囲を探っているようだが、人が落下したんだ。この周辺に無ければ落下していないということになる。

 だが、そうなると死体はどこにいったのか、という事態に陥る訳だが……


「光葉、ちょっといいか?」


「修一君。うん……足立君も?」


「ああ、この三人で話がある」


「わかった」


 大門寺に俺達三人は用事があると告げて御暇させて貰う。

 いろいろ調べることが出来たと告げると、そうか。と言葉少なに告げてこちらは任せろと言ってくれたのでそのままお任せして校内へ戻ることにした。


 どこに行くべきか話し合って、音が漏れにくい音楽室を選ぶことにした。

 山田が死んだ場所ではあるが一番密談に向いている場所はここだから仕方ない。

 窓を覗けば、墓場に向かう大門寺達が見える。

 人数を確認してみたが、全員外に出ているようだ。これなら充分密談出来るだろう。


「さて、教えてくれ光葉。これは一体、どういうことだ?」


 卒業写真を机に置いて、光葉に見せる。

 びくり、一瞬震えた光葉だが、それを見てすぐに納得したようだ。


「お母さん、だよ」


「そうか。なら、なんで井筒玲菜とそっくりなんだ?」


「……」


 光葉は答えない。

 困ったような顔で写真を見つめ、しばし口を噤む。

 しかし、黙っていても無意味だと理解しているのだろう。ふぅっと息を吐く。


「この空間に居る間、実は時が止まっている。って言ったら、信じる?」


「光葉?」


「おいおい、そりゃ冗談……じゃねェ顔だな」


「ここはね。遥か昔に神様の怒りを買った人間が幽閉された空間なの」


 なんだそれ?

 神様出てきちゃったよ。

 なんか途端に胡散臭くなったな。


「本当はどうか分からないけど、超常的な力で一人の人間が囚われたの。それが私のお母さん、今の……井筒玲菜」


「お、おいおい、つまりアレか。井筒は昭和時代からの生き残り?」


「ううん。もっと、ずっと昔。ずっと、ずっと昔から」


 そう言って言葉を区切り、光葉は俺を見る。


「この空間は一人の人柱がいつも必要。その人柱は処女の娘。忌引の名を引き継がされたその人物は100年ほどこの空間に縛られる。本当なら、井筒さんをずっと閉じ込めておくべきはずだった」


 荒唐無稽としか言えない秘密だ。

 でも……そう考えると少しづつ見えてくるものがある。

 忌引光葉をなぜ彼女が名乗っているのか。


「もしかして、お前の名前、本当は井筒玲菜……か?」


「……ん。偶然、ここと現世が昭和時代に繋がったの。そこで今の井筒玲菜は処女性を失った」


 おそらく女生徒たちと一緒にレイプされたんだろう。その時代は無法地帯だったみたいだし。


「処女性を失いこの地に縛られることが無くなった彼女は即座に現世に向かい、情報を入手した後、子供を産んで、育てたの。自分で育てた訳じゃ無く、当時の井筒家に預けて、娘が年頃になった頃、空間維持の為に迎えに来たわ」


 空間維持?

 疑問が顔に出ていたのだろう。光葉はコクリと頷く。


「この空間は処女の人柱が居て初めて成り立つ。だから彼女にとって娘は自分が自由に暮らすこの世界を維持させるための人柱でしかなかった」


 今の光葉がこの空間に連れ戻されるまでは生き残りの女生徒が居たらしいが、彼女が来る時用済みになったことでいつの間にかいなくなっていたそうだ。

 そして、昭和期での無法地帯に味をしめた彼女は、この空間にまた一クラスを誘い込んだ。

 それが木場たちの親世代。

 そこで観察者になった井筒玲菜は、しかし隙を付いて木場と大河内の親を光葉が連れ出しに成功したのに気付き、慌てて光葉を追って外へと追跡した。


 光葉はすぐに捕まりこの空間に囚われてしまったが、約束を交わしていたのだ。

 準備を整え、この空間から救い出すことを、木場の親と大河内の親が子供に伝えることで、そして、俺たちの時代、現世にやって来た光葉は、俺達をクラスごとこの世界に連れ込んだ。井筒との決着を付けるために。


 ……けどさ光葉、俺の気のせいだろうか? 井筒も光葉も普通に一学期から一緒だった気がするんだけど。

 尋ねてみれば、どうやら一日抜けて来る程度ならこの空間は崩壊しないそうで、学園生活を満喫したい井筒が率先して俺たちに干渉していたので一緒に紛れ込みたいと了承を得ることは簡単だったようだ。


 ただ、問題が発生した。

 それはこの世界に来た瞬間、光葉の処女を俺が奪ってしまったということだ。

 つまり、その瞬間光葉は人柱の役割を終えてしまった。

 幸か不幸か俺たちのクラスには処女の女性が多かったから、まだ空間が崩壊することはないが、すでに皆くっついたりしているせいで処女性を持つ人柱候補は少ない。

 井筒と光葉は言わずもがな。原や多分賀田もダメなんだそうで、残るメンバーが人柱候補。そして井筒が次の人柱として狙っているのは、光葉に似た存在。最上明奈であるらしい。


 とりあえず、ちょっと、落ち付きたい。

 荒唐無稽過ぎるせいで頭の整理が追い付いてないんだ。

 椅子に腰かけ、俺と足立は大きく息を吐く。

 互いを見れば、疲れた顔をしているのが簡単にわかった。

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