表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/246

第六回学級裁判3

「じゃあ次は忌引さんに……」


「ちょっと待て」


 木場が光葉に促そうとすると、足立が止める。


「どうしたの足立君?」


「悪いが忌引と美里は容疑者だ。一番最後に証言を回した方がいい」


「ちょ、次郎?」


「一応な、他の奴らが証言した後に証言した方がいいだろ? 矛盾した証言があればそいつが犯人になるしよ」


「……まぁ、いいけど。じゃあ私と忌引さんは最後で良いわね?」


 田淵が足立の言葉を採用したようで、小川に視線を向けた。


「じゃあ忌引さんを飛ばして壱岐君から、証言お願い」


「あ、そっか僕からになるんだ。えっと、僕は十勝さんと木場さんとで一階側から田淵さんを探してたんだ。それで二階に上がった頃くらいに三階から足立君と大門寺君、最上さんが来たよ」


 ……ん?


「足立達が先だったのか?」


「修一君? うん、そうだけど?」


「何か違和感でもあるの、修?」


「あ、いや。大門寺と会ってたなら十勝呼びに行った田淵と光葉の方が先に十勝に会ってたんじゃないかと……」


「そういえばそうね?」


「それだったら私達は一階に降りてから合流したから遅くなったのよ。行き違いになったのね」


 ああ、成る程、そういうことなら問題ないか。

 だが、木場が今度は考えだした。


「えっと、その後は気絶していた修一君を見付けて皆で起こして、僕はやることなくってその場に立ってただけで、修一君と木場さんが屋上に向かうって言うから一緒に付いて来た、かな」


「じゃあ、次は小川、頼む」


 木場が考え込んだままだったので仕方なく進行を引き継ぐ。

 何で俺が司会をせねばならんのだ。


「あ、ああ。と言っても俺はずっと墓の前に居ただけだ。正直、もう疲れたんだ……今もこうして他人の前に居ると吐きそうで……」


 相当参っている様子の小川。

 既に当初の元気さは影を潜め、まるでイジメを受けているような暗い雰囲気を纏っている。

 弱々しい表情を見せる小川は、俺達と出会った後も夕食終了と同時に墓に向かい、牧場たちの墓をただただ呆然と見つめていただけのようだ。


「私……も、小川君が自殺しないように離れた場所で見ていたわ」


 そして同じような表情の中田もまた、墓から少し離れた場所で同じく、小川だけを見つめてただひっそりと立っていたそうだ。

 彼女の証言が確かであれば、トイレすらも忘れてずっと墓の前に二人で居たそうで、小川のアリバイを証明していた。


「で、次は大門寺な訳だが」


「俺か? 俺はお前……沢木達が呼びに来るまで屋上で寝ていた。少し前に明奈がトイレに行ってだいたい一時間くらいか? そろそろ迎えに行くかと思っていた時だった」


 最上はトイレに一時間もかかってたのか。

 それはそれで凄いな。


「沢木に明奈捜索を頼む代わりに俺も田淵捜索に加わった。三階を先に探して四階を探し終わった沢木達と合流する予定だったんだが、足立と明奈が呼びに来た。そのまま二階に居た木場たちと合流し、音楽室に向かった。十勝とはその時に別れて放送室に行ったぞ」


 十勝は放送室に向かったのか。一人でか? あ、そうか、賀田と井筒は外に居た訳だし一人きりになるのか。

 まぁ問題は無かったみたいだから良いけど、一人行動は今の時期出来るだけ慎んでほしいところだ。


「その後は音楽室だな。明奈に死体が見えないように付き添っていた」


 基本今回の殺害には関係の無い大門寺。最上を探していた状況では一人きりだったので容疑者になりかねなくもないが、彼が居たのは三階。四階にある音楽室で俺を襲うのは無理があるし、おそらく山田が殺されていた時間帯は屋上で寝ていた。これはアリバイ有りとして充分だろう。


 さて、問題はその相方の最上の方なんだけど……彼女が居たのは四階の女子トイレだ。

 被害者である山田が死んだ音楽室からは直線距離にある場所だし、彼を首吊り状態にしてからトイレに籠り、俺達が降りて来た時に遭遇。なんていうアリバイ作りが無かったとは言えない。


「私は……トイレにいたよ。四階のトイレ。いろいろ考えることもあったし、その……忌引さんにいろいろ教わったから」


「光葉に?」


「う、うん。いろいろ、うん。いろいろ。考えることが出来たの」


 だからずっとトイレに籠って考えていた、らしい。

 アリバイ証明出来ない彼女は依然容疑者のままなのだが、こればかりはどうにもならない。

 とりあえず、犯行が可能な状態にあったということだけは変えようがないらしい。


 一先ず彼女に関しては容疑者1として候補に上げるに留め、次の証言を聞くべく足立に視線を向ける。


「ああ、俺か。つってもトイレ行って帰ってきたら美里が居なくなってたから捜索に向かって、捜索なら沢木たちを使うのが手っ取り早いと思ったから手伝って貰いに行ったんだ」


 まぁ、普通に一番まとまった人数が確保できるから人海戦術には丁度良いだろうな俺達。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ